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当たり年? 今永、戸柱…CS初進出したDeNA、新人10選手の一年


今シーズン、セ・リーグの台風の目となったDeNA。球団創設5年目で初のクライマックスシリーズ進出を果たした中で、新たな戦力の芽も出てきた。今永と戸柱の活躍で“当たり年”の印象が強いが、それぞれがどのようなルーキーイヤーを過ごしていたのか。プロ1年目の足跡を辿る。

■ドラ1今永は12球団新人トップ8勝、名言で存在感も

 今シーズン、セ・リーグの台風の目となったDeNA。球団創設5年目で初のクライマックスシリーズ進出を果たした中で、新たな戦力の芽も出てきた。その象徴的な存在となったのが、今永と戸柱というルーキーである。

 昨年のドラフトでは育成も含め、10選手を指名した。今永と戸柱の活躍で“当たり年”の印象が強いが、それぞれがどのようなルーキーイヤーを過ごしていたのか。プロ1年目の足跡を辿る。

◯ドラフト1位 今永昇太投手(駒大)22試合、8勝9敗、防御率2.93

 ドラ1の期待に違わぬ結果を残した。大学NO1左腕の評判通り、12球団トップの8勝をマークした。本拠地開幕戦となる3月29日の巨人戦でデビュー。毎試合好投しながら打線の援護がなく、初勝利まで6試合を要した。その間に「援護がないといういいわけは防御率0点台の投手が言えること」「三振をとれるよりも勝てる投手がいい投手」など、含蓄のある言葉を残したことも話題を呼んだ。

 6月には蓄積疲労を考慮され、ラミレス監督が1か月の2軍調整を決断。これが功を奏し、シーズン終盤には再びローテを守った。チームがCS初進出を決めた9月19日の広島戦では7回途中1失点で歴史的な勝利投手となった。CSでは第1S、最終Sそれぞれで登板。広島との最終S第4戦ではストライクゾーンに苦しみ、初回に6失点。チームも敗退するという苦い経験を味わったが、1年目にして大舞台を踏んだ。

 シーズン序盤に勝ち星を重ねられずに2桁勝利を逃した影響もあり、新人王は阪神・高山に譲ったが、それでも1年目の経験は来季に生きるだろう。今年は完投勝利がなく「1試合を投げ切る能力をつけたい」と課題を挙げており、さらなる飛躍が期待される。

◯ドラフト2位 熊原健人投手(仙台大)18試合、1勝1敗、防御率4.97

 今永と同様に即戦力の期待をかけられた熊原だが、苦しい一年となった。父が神主であることからメディアに「神主投法」と名付けられた独特のフォームが2月の春季キャンプで2段モーションの指摘を受け、修正を余儀なくされた。3月には脇腹痛を発症した影響で開幕は2軍。5月に中継ぎで初登板すると、先発のコマ不足だった7月20日のヤクルト戦で先発してプロ初勝利。だが、次登板で2回KOされて再び2軍落ちを味わい、そのままシーズンを終えた。最速154キロの剛球を操るだけに、課題のフォームを安定させ、希望している先発での2年目の飛躍を目指したいところだ。

■ドラ4戸柱は正捕手に抜擢、高卒ドラ5&6は2軍で経験積む

◯ドラフト3位 柴田竜拓内野手(国学院大)19試合、打率.205、0本塁打、2打点

 大学球界屈指の遊撃手として鳴らした柴田は3月25日の広島との開幕戦に7番・二塁でスタメン。プロ初安打初タイムリーが決勝打となり鮮烈なデビューを飾ったが、以降は打撃で苦しみ、5月に2軍落ち。年間通してファームで経験を積んだ。2軍では打率.215。持ち前の守備を生かして出場機会を掴むためにも、打撃面が課題になりそうだ。

◯ドラフト4位 戸柱恭孝捕手(NTT西日本)124試合、打率.226、2本塁打、23打点

 予想以上の活躍を見せてくれたのが、戸柱だ。社会人3年目でプロ入りした25歳のオールドルーキー。4位指名ながら、正捕手不在のチームでラミレス監督の信頼を勝ち取り、開幕マスクをつかんだ。以降は指揮官の配慮で週1度の休養をもらいながら、強気に内角を突くリードでシーズンを通して正捕手として仕事を果たした。同期では唯一、2軍降格なし。ラミレス監督はすでに来シーズンも戸柱を正捕手として起用する方針を固めており、本人も全試合出場を目標に掲げている。

◯ドラフト5位 綾部翔投手(霞ケ浦高)1軍出場なし、2軍10試合1勝2敗、防御率4.26

 高卒1年目の右腕は経験を積むシーズンとなった。最速145キロを誇り、高校時代には甲子園に出場。今季はファームで10試合に登板した。DeNAはもともと高卒投手については3年程度をかけて鍛えるスタンスで、じっくりと1軍登板のチャンスを伺っていくことになる。

◯ドラフト6位 青柳昴樹外野手(大阪桐蔭高)1軍出場なし、2軍118試合、打率.183、4本塁打、28打点

 青柳も綾部と同様に実戦で経験を積んだ。ファームで118試合に出場。打率も1割台とプロのレベルに慣れることに腐心したが、現在は台湾のウィンターリーグに参加中。日本ハム・中田、西武・中村、浅村、森ら、多くの強打者を輩出している大阪桐蔭高で全国制覇している逸材で、同校の歴史でも屈指の身体能力を誇っていただけに将来に期待したい。

○ドラフト7位 野川拓斗投手(鷺宮製作所)6試合0勝0敗、防御率2.57

 即戦力として期待された社会人出身の左腕は歯がゆいシーズンとなった。4月16日のヤクルト戦でリリーフとして初登板したが、同じ中継ぎ左腕のザガースキーの獲得もあり、6試合の登板で2軍落ち。以降は故障もあり、再び1軍昇格することはなかった。オタクを自称し、アニメソングを入場曲に起用したことが話題を呼んだが、まずはシーズン通して活躍できる体を作り、来季は1軍で存在感を見せたいところだ。

■育成1位網谷をラミレス監督絶賛「筒香のようになれる」

○育成1位 網谷圭将捕手(千葉英和高)1軍出場なし、2軍19試合、打率.184、0本塁打、5打点

 育成ながらラミレス監督に大きな印象を与えたのが網谷だ。2月の春季キャンプで練習試合で安打を放つなど、持ち前の打撃力で鮮烈なアピール。直後に左手有鈎骨を骨折した影響で半年を棒に振ったが、指揮官の期待は変わらず「将来は筒香のような選手になれる」と秋季キャンプでは熱視線を送った。捕手登録だが、打撃を生かすためサードへのコンバートも検討。現在は台湾のウィンターリーグで奮闘している。来季中の支配下登録もありそうだ。

○育成2位 山本武白志内野手(九州国際大付高)1軍出場なし、2軍60試合、打率.143、0本塁打、5打点

 甲子園を沸かせたスラッガーはプロの水に慣れることに苦しんだ。九州国際大付で出場した3年夏の甲子園では3本の本塁打を放ち、一躍全国区に。だが、プロ入りした直後の4月に元ロッテ監督の父・功児さんが死去。悲しみを乗り越え、プレーした2軍では打率.143でノーアーチと課題を残した。プロで活躍する姿を楽しみにしていたという父のためにも、近い将来、2桁番号を背負ってハマスタの空にアーチを描けるか。

○育成3位 田村丈投手(関学大)1軍出場なし、2軍8試合、2勝1敗、防御率4.09

 大卒で唯一の育成右腕は2軍登板8試合にとどまった。最速149キロを投げる本格派投手。1軍ではエースの右腕・山口が巨人へ移籍し、石田、今永、砂田と若い左腕が台頭。層の薄い若手右腕として、まずは支配下契約を掴み取りたい。

 10選手が奮闘したプロ1年目。思うように活躍できた選手、できなかった選手に差はあるが、いずれにしても、将来のDeNAを担っていく可能性を持っている。10月のドラフトでは育成を含め、後輩となる10選手が加入した。「新人」の看板が外れる2年目の来季、どんな成長を見せてくれるだろうか。

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