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西武がファン、選手と一緒に「かるた&ランチョンマット」を作るワケ


2014年のファン感謝イベント「LIONS THANKS FESTA」、西武プリンスドームのグラウンドでは、巨大かるた大会が行われていた。散りばめられた絵札を見つけにこどもたちが走り回る光景はよく見るが、子供たちが手にした絵札には、ライオンズ選手が大きく描かれている。「ライオンズかるた」という、球団オリジナルのかるたである。

■ファン&選手と作る「ライオンズこども基金」

 2014年のファン感謝イベント「LIONS THANKS FESTA」、西武プリンスドームのグラウンドでは、巨大かるた大会が行われていた。散りばめられた絵札を見つけにこどもたちが走り回る光景はよく見るが、子供たちが手にした絵札には、ライオンズ選手が大きく描かれている。「ライオンズかるた」という、球団オリジナルのかるたである。

 このかるた、内容は食育・いじめ撲滅・マナー教育など、「楽しく学べる」がテーマとなっていて、それぞれの絵札に選手のイラストが描かれている、いたって真面目な内容。ファン・選手会・球団が三位一体となり、明るい社会・未来を作っていく子供たちが、安心して夢を持って生活できる環境作りをサポートする「ライオンズこども基金」の取り組みの一環として製作されたものだという。

 読み札の五七五は、ライオンズファンや地域の方から募集したもので、1000通近い応募の中から、選手会・球団・埼玉県教育委員会の3者で選定、内容が決定した。完成したかるたは、埼玉県内50市町村の小学校、約1万の学級に寄付された。

 一方、こちらは埼玉県内のとある小学校の給食の風景。児童たちの机に並んでいるのは、この日、配られた「ライオンズ食育ランチョンマット」。このランチョンマットは、「埼玉県食育推進計画」の指針に則り、食育(食事のバランスや、地産地消)について、選手やマスコットを通じてより身近に学んでもらいたいというコンセプトで製作された。食事の大切さをアピールするライオンズ選手たちが描かれており、埼玉県内55市町村の公立小学校、2016年度の新1年生、約6万人に寄付された。

■発足者の栗山「三位一体の新しい形の社会貢献」思いは牧田、炭谷へ

「ライオンズこども基金」の設立は、2012年までさかのぼる。発足者の1人は当時の選手会長、栗山巧。「東日本大震災から1年を迎えたあの年、復興支援をきっかけに、プロ野球選手・プロ野球球団としてできること、そしてその存在意義とは何かを模索してきました。震災を風化させないために、さらに身近には震災に留まらず様々な事象・問題が山積みであり、野球の力で少しでも光を当てることができるのではないかと考える中、選手会と球団で話し合い、選手・球団・ファンの皆さまと三位一体となって取り組む新しい形の社会貢献活動として『ライオンズこども基金』を開始することとなりました」と語る。

 実際に2013年、埼玉県内の児童館と児童養護施設(121施設)に、ライオンズのマスコットキャラクター・レオとライナがデザインされた、ターゲットゲーム遊具を寄付する取り組みが行われた。的に目掛けて投げて遊ぶ遊具を利用することにより、多くの子供たちに野球に触れる機会、運動をするきっかけを持ってほしいという、栗山をはじめとした選手たちの思いから実現した企画だった。

 このような栗山の思いは、後任の選手会長にも脈々と受け継がれている。

「ライオンズかるた」製作時の選手会長は、牧田和久。ファンから寄せられた読み札の候補に目を通し、球団や埼玉教育委員会関係者と一緒に選定に加わった。球団担当者の話によると、出来上がったかるたを選手ロッカーに届けに行くと、牧田の「(菊池)雄星の読書の札なんてぴったり」という感想を皮切りに、「自分は入っていますか!?」「(森本)稀哲さんのイラストが最高」などと、選手の輪が出来たという。

■製作費は選手提供グッズのチャリティーオークションの収益

「食育ランチョンマット」の製作に関わったのは、現選手会長の炭谷銀仁朗。ランチョンマットの中には炭谷自身のキャラクターも登場し、エネルギー源となる主食の大切さをアピール。楽しみながら食育が出来る一品に仕上げた。

 炭谷はこどもたちへ、「僕も子供の頃は、給食を残さずしっかり食べていました。食事で健康な体をつくることは、スポーツにも勉強にも大切。しっかり健康な体をつくって、将来はライオンズのチームの一員として、またはライオンズファンの一員として、球場で皆さんと会えたら嬉しいです!」というメッセージを発信している。

「ライオンズこども基金」は、たくさんのライオンズファン・地域の方を巻き込んだ活動に発展している。

「ライオンズかるた」の製作時、1000通近い読み札への応募投稿・選手への激励と共に、「いじめを受けている友人の子供にこの言葉を届けたい」「いい取り組みなので、授業で生徒と一緒に考えました」という学校の先生のコメントまで、たくさんの思いが寄せられた。

■現在受付中のオークションは「エメラルドユニホーム&キャップ」1月16日まで

 ファンや地域の方の、取り組みへの賛同の形は、もう1つある。実はこうした寄付品の製作費は「ライオンズこども基金チャリティーオークション」の収益によって賄われている。

 趣旨に賛同する選手全員が、公式戦で実際に着用したユニホームやキャップに直筆サインを入れて提供。取り組みの趣旨に賛同した方が、任意の金額で入札を行うというもので、毎年多くの入札があり、「ライオンズこども基金」の活動資金となっている。

 今年のチャリティーオークションは、夏のイベント「ライオンズ フェスティバルズ 2016」で着用した「エメラルドユニホーム&キャップ」を出品し、現在開催中。2016年に所属した、監督・コーチ・選手(全89名)が実際に着用したユニホーム・キャップに直筆サインを入れて出品されている。

 お気に入り選手のサイン入りユニホーム・キャップを手に入れたい方、「ライオンズこども基金」の趣旨に共感される方は、オフ期間の楽しみの1つとして、参加してみてはいかがだろうか。多くの人たちの意思は野球の枠を越え、明るい社会・未来を作っていく子供たちが安心して夢を持って生活できる環境作りのサポートにつながるのではないだろうか。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」編集部●文

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