- 高校野球
2018.07.04 11:44
140km/h右腕2枚で上昇期す高砂南(西兵庫)【100回目の甲子園狙うダークホースVol.1】
今年の夏の甲子園は100回目の記念大会。激戦区・兵庫は東兵庫と西兵庫に二分され、1枠ずつを争う。この区分けで得をするのは、どちらかといえば西兵庫だろう。
東兵庫には、報徳学園、神戸国際大付、市尼崎、関西学院など、並み居る強豪校が控えるが、西兵庫は3年連続準優勝の明石商の1強という声が多数だ。10年前の記念大会で加古川北が初の甲子園出場を決めたようにダークホースが飛び出してくる雰囲気がある。そんな西兵庫で旋風を期待したいのは高砂南だ。
これまでに甲子園出場は1回(1983年春)。OBに藤井亮太(ヤクルト内野手)。ときおり兵庫大会で上位進出を果たすが、全国的には無名といえるだろう。そんな高砂南を推したいのは、二枚看板の存在があるからだ。
1人目は足立拓海(3年/右投左打)。最速141km/hのストレートに縦横のスライダー、チェンジアップを抜群のコントロールで操る。3年前の全中(全国中学校軟式野球大会)では、高砂市立荒井中のエースとして全国ベスト8に入った実績を持つ。中学時代からその投球術には定評があり、強豪校からの誘いもあったというが、「当時は私立でやるのが少し怖かった」と地元・高砂南を選んだ。高校に入ってからも順調に10km/hほど球速を伸ばし、西兵庫屈指の好投手に成長している。
2人目は川合慎磨(2年/右投右打)だ。168cm60kgと小柄だが、球速は140 km/h台に到達。6種類の変化球を実戦レベルで投げる。輝かしい実績を持つ足立に対し、川合は叩き上げだ。
「中学時代は硬式チームでプレーしていましたが、当時は150センチぐらいのチビでセカンドの控えでした」
それでも自信はあった。試合に出たい、俺だってできる。強い気持ちが高校に入ってからの爆発を生んだ。川合はプロ志望を明言する。目標として挙げたのは、市西宮から昨年ドラフト指名された山本拓実(中日)だ。
「山本選手も中学時代は体が小さくセカンドの控えだったと聞きました」
川合も山本と同様に体の小ささを生かした“低く前で放すストレート”が持ち味だ。この夏も楽しみだが、来年の春にどこまで伸びているか、目標の150km/hにどこまで近付けるか。そんな夢も膨らむ。
指揮官を務めるのは礒野仁志監督。1957年生まれ、もうすぐ監督生活40年を迎える大ベテランだ。高砂南で指揮を執るのはこれが2回目。以前、監督を務めていた1998年夏には西兵庫大会ベスト4、1999年夏には兵庫大会ベスト8に導いている。投手育成でこだわっているのは、ランニングだ。高砂南は浜手にあるため、周辺は平坦な地形だが、神社や橋などの坂に“同伴”し、投手陣を走らせている。
「自転車で後ろについて行きます。同僚の先生からは『30〜40年前の学園ドラマの光景ですね』なんて言われます(笑)」
ランメニューの話になると二枚看板はやや苦笑いだが、それでも愛情をしっかりと受け取っている。
「マウンドに立たせてもらっている以上、チームで一番しんどいことをやってナンボだと思います」(足立)
この春は“完投”にこだわった。練習試合では二枚看板のどちらかがダブルヘッダーのうちの1試合を投げきってきた。忍耐に加え、力配分、ギアチェンジなどを学び、自信をつけている。
秋はチーム内で胃腸炎が流行し、地区大会敗退。春も地区大会初戦であっさり敗れたが、礒野監督は「秋と春は“勝てたらいいな”ぐらい。夏に焦点を絞り、今はまったく違うチームです」と断言する。
抽選の結果、夏は三田松聖がシードのブロックに入った。昨夏の4回戦、高砂南は1対2の大接戦を演じている。1回戦を勝ち抜けば、2戦目で当たることになるが、二枚看板が真価を発揮すれば、シード校食いも十二分にあり得るだろう。
文・写真=落合初春