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ドラフト戦線に突如現れた元ハンドボール有望選手の秘密兵器。左腕・霍本拓哉の可能性【2017年ドラフト候補】

 全国大会4季連続4強の強豪・上武大に、また1人楽しみな左腕が現れた。ハンドボールややり投げでも高い能力を発揮してきた大型サイドハンド左腕の、異色の経歴と可能性を探った。

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霍本拓哉(つるもと・たくや)
出身地: 熊本県下益城郡美里町
球歴:砥用中(軟式)→九州学院高→上武大3年
身長・体重(ポジション):184cm・96kg(投手)
最高球速:143km/h
球種:ストレート、スライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップ

★元ハンドボール熊本県選抜

 2016年11月15日の明治神宮大会準決勝。明治大に3点をリードされた5回に、今秋のリーグ戦登板ゼロの無名左腕・霍本拓哉投手(3年・九州学院高)が上武大のマウンドに上がった。
 すると、巨体を大きく使ったサイドハンドから、キレの良い140km/h台前半のストレートを軸にして、佐野恵太内野手(DeNAドラフト9位指名)ら明治大上位打線を無安打に抑え、見事に流れを断ち切った。その好投は「身内にしかいない」という珍しい姓とともに、大きなインパクトを残した。

 父親は国家公務員、母親はやり投げの元国体選手、兄と妹は成績優秀という文武両道の一家で生まれた霍本が野球を始めたのは中学1年の時から。もともとはハンドボールをしており、小学校時代は熊本県選抜にも選出されていたほどの有望選手だった。
 中学2年まではハンドボールもクラブチームで並行して行っていたが、新チームでエースとなった2年冬に、野球に専念することとした。当時から138km/hのストレートを投じており、高校は県内強豪の九州学院高に入学した。
 だが2年春のセンバツ甲子園は控え投手としてベンチ入りする予定もインフルエンザにかかり、ベンチを外れた。さらに2年秋と3年春はエースを務めたが、制球難もあり夏には3番手に降格。結局、3年間で甲子園に出場はできなかった。

★サイド転向1年でMAX143km/h

 悔しい思いで終えた高校3年間だったが、野球への情熱が冷めることは無く、レベルの高い環境を求めて、同期の島田海吏外野手(2017年ドラフト候補)とともに、上武大へ入学した。
 そこで大きなきっかけとなったのが、2年秋のサイドスロー転向だ。谷口監督に「まずはワンポイント投手でもいいから」と言われ、慣れないフォームを地道に体に染み込ませた。
 そして、3年秋はリーグ戦登板こそなかったものの、横浜市長杯(関東地区大学野球選手権)決勝戦と明治神宮大会準決勝に登板。これまで少なかった経験値をグッと上げた。
 明治神宮大会後の霍本のもとには、プロ数球団のスカウトが足を運び、「まだバラツキはありますが、これから球も速くなりそうで、楽しみな選手です」(ロッテ・高橋薫スカウト)と、スカウト陣の評価も上々だ。
 本人はまだリーグ戦未勝利など実績皆無のため「まだプロがどうこうの選手ではないです」と恐縮するが、「今まで迷惑をかけた分、プレーで恩返しをしたい。ここまで野球をさせてもらえている感謝の気持ちをマウンドで堂々と投げることで示していきたいです」と発言は謙虚で心強い。
 高い身体能力と実直な姿勢が完全に噛みあった時、どんな投球をするのか楽しみだ。

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中学時代にはやり投げで全国大会に出場するなど母親ゆずりの身体能力は極めて高く、大きな体ながら50mは6秒フラットで走る。

文・写真:高木遊