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限られた選手しか経験できない引退セレモニー これまでのG戦士の引き際

通算228盗塁、巨人一筋20年の鈴木尚広外野手が、23日のファン感謝デーで引退セレモニーを行った。

■ファンへ最後の雄姿を披露した鈴木尚広

 通算228盗塁、巨人一筋20年の鈴木尚広外野手が、23日のファン感謝デーで引退セレモニーを行った。オーロラビジョンに20年の歩みが映し出され、場内は静寂に包まれた。スーツ姿の鈴木はマイクスタンドの前へ立って挨拶。ファンへの最後の勇姿となった。

 今回のように球団から引退セレモニーの場を用意され、最後の花道を飾れる選手は少ない。鈴木のように自ら辞めることを決断した選手、功労者にしか式典の場は与えられない。鈴木は晩年は走塁職人としてチームを勝利に導き、ファンに愛された。感動的なセレモニーで幕を閉じた。

 1年前のファンフェスタでは感動の中、高橋由伸現・現巨人監督が現役生活に幕を引いた。

 場内の照明が落とされ、オーロラビジョンに高橋由伸選手の現役時代の名シーンが映し出された。明かりが灯ると、高橋監督VS菅野―阿部のバッテリーによる1打席勝負が展開された。2球目の外角直球を由伸選手は振り抜き、左中間フェンスへ打球を放った。

■引退の翌年に東京ドームで行われた松井氏のセレモニー

 元同僚の上原浩治投手(Rソックス)、ヤンキースでプレーし、巨人時代にクリーンアップを担った松井秀喜さんからメッセージビデオが流れ、長嶋茂雄終身名誉監督から直筆メッセージを書き込んだボールを手渡された。ベテラン外野手は「野球の素晴らしさをしっかりと伝えていきます」とのコメントを残し、監督として新たな一歩を踏み出した。

 セレモニーは引退を決めた年のファン感謝デーで行うことが多いが、松井秀喜さんの時は一味違った。

 2013年5月5日、シーズン中だった。2012年を持って現役にピリオドを打った松井さん。長嶋茂雄巨人終身名誉監督とともに国民栄誉賞を授与されることになった。そのため東京ドームで安倍首相も来場し、表彰式と引退セレモニーを行った。松井さんは現役時代、巨人からFA移籍し、ヤンキースへ。当時はファンへ「裏切り者と思われるかもしれない」と罪悪感を抱き、渡米した。それでも大きな功績を残してきた松井さんに大きな歓声が巻き起こった。チケットは即完売となった。

 巨人のスター選手の引退セレモニーといえば、原辰徳前監督の現役最後のシーンも印象深い。1995年10月8日の広島戦だった。「4番・サード」で出場。広島・紀藤から通算382本目の本塁打を放ち、フィナーレを迎えた。試合後のセレモニーでは「私の夢には続きがあります」と再びユニホームを着て帰ってくることを誓った。

■2001年に現役を終えた斎藤雅樹、槙原寛己、村田真一の3選手

 王・長嶋のONも印象深い言葉が残っている。世界の本塁打王・王貞治氏は80年に引退。その年のファン感謝デーで引退セレモニーを行った。「今日をもちましてバットを置くことになりました」と、バットマンらしい別れの告げ方でファンの涙を誘った。

 長嶋氏は1974年に引退を決め、10月の後楽園球場の試合後に引退セレモニー。「私は今日引退をいたしますが、我が巨人軍は永久に不滅です」とマイクを通して、スタンドファンに告げた。巨人史の名言として今でも語り継がれている。

 他にも2001年9月にはこの年限りで監督から退くを決めていた長嶋茂雄監督の勇退セレモニーと一緒に、現役引退を表明したエース・斎藤雅樹、槙原寛己両投手、村田真一捕手がそろって並び、セレモニーに参加したこともあった。

 限られた選手にしか経験できない引退の儀式。自分で引き際を決め、ファンに見守られながら、現役を終える選手が今後も多く出てくることを期待したい。

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