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高校野球

準々決勝 日本航空石川と星稜 石川の両雄が散る

‰€「選抜第10日」 三重―星稜  三重に敗れ、応援席へのあいさつを終えた星稜ナインら=甲子園【写真提供=共同通信社】

 星稜の林和也監督が9日目、3回戦の近江高校に勝った後に言った言葉が印象的だった。

 「野球は冬に上手くなる」

かつて星稜を約40年間率い小松辰雄、松井秀喜ら多くのプロ野球選手を育て、箕島と延長18回の激闘を残した元山下智茂監督(現名誉監督)が言ったそうだ。林監督は松井秀喜の1年下で、山下元監督の愛弟子。その教えを引き継いだ上で、冒頭の言葉を胸に刻んでいる。
 石川県の冬は長く、湿った雪でグランドはぬかるむ。曇天が続くのはいうまでもない。その間、グラウンドは閉ざされる。

 「限られた環境の中でバッティングや体作りを集中してやれる」

日本航空石川の中村隆監督が準々決勝後のインタビューで言った。その言葉は力強く聞こえた。我々は雪国のハンディを背負っていません、と言っているようだった。

石川県の高校がセンバツのベスト8に2校残るのは史上初だった。第1試合に航空石川、第4試合に星稜。石川県、いや、北信越を引っ張る両雄といっていい。

 それぞれの試合の詳しい戦評は割愛する。
航空石川は優勝候補の東海大相模に先制されるが、1度は追いついた。しかし6回と8回の終盤に突き放され、3対1。無失策試合の引き締まった内容だった。
 中村監督は「粘り合いに負けた感じ。我慢してどっちが先に2点目を取るか。勝負どころの執念で向こうが上回ったかな。粘りは見せることができましたが、もっとバッティングを磨いて、打ち勝たないと上にはいけない」

一方の星稜は前日に続いて連戦になった。
星稜は2014年、夏の県大会の決勝。対小松大谷戦で8点差を9回裏に9点を取って大逆転したゲームが記憶に新しいが、それに代表されるように、最近は「逆転の星稜」と呼ばれている。
 三重高校とは壮絶な打撃戦。一時、最大で5点差がついたが反撃。9回裏に3点を取って同点に追いついた。
 「5回のグラウンド整備の時に、8回までに1点差にして、9回の裏に2点を取って逆転しよう、逆転の星稜を見せよう、と選手に言いました」と林監督。ほんとに8回裏に3点を取って追いついた。しかし、9回に投手が四球を出したり守備が乱れ自滅。5点を一挙に奪われた。

 「追いついたところまでの展開としてはうちのペースかなと思いましたが、守りのミスが・・・。2年の奥川(投手)が成長して、よく頑張ってくれました。でも、まだまだ、(春の)ベスト4は甘いぞと神様に言われているようでした」
奇しくも両校ともベスト8の壁を破れずに甲子園を去ることになった。

 航空石川と星稜はまず昨夏、準決勝で当たり、星稜が7対2とリードしていたが、航空石川が8回裏に5点を奪い同点。延長で勝っている。昨秋は2度、当たった。県の決勝では8対3とリードされていた星稜が7回に7点を入れ逆転。最終的には10対9で星稜。北信越大会の決勝では航空石川が10対0で実力差を見せつけた。

  長らく石川県を代表した星稜に追いつき追い越せ、航空石川が台頭して、派遣を争う。100回目の夏はどちらか1校しか、出られない。

 星稜の河井遊撃手が決着を誓う。
 「守備面を修正して夏、帰ってきたい。航空石川は甲子園では冷静さが光っていた。打線が強いのは変わらない。サヨナラ勝ちして粘り強さもついていると思う。甲子園に戻って来るためには絶対に倒さなければいけない相手」

 林監督は相手を讃えた。
 「ライバル校として、同じ日に負けて帰ることになりましたが、こういった甲子園という場で、お互いに意識しながら、それぞれ好ゲームができたと思います」

 一方の航空石川の井岡捕手は闘志を見せる。
「星稜よりも先に負けないとチームで言っていた。春も夏も対戦すると思うけど絶対に負けたくない。星稜は打線がよくなっている。冬場、よく練習したんだと思う」

 そして最後に中村監督の言葉を。
 「星稜は執念がある。土壇場に何かをやってくる怖さがある。メンタル面の強さもある。そういう練習をしてるんでしょう。学ばせてもらってます。こちらを成長させてくれる存在。甲子園にきたら、相手が負けるまで負けられないと思ってました。最後の夏は甲子園に行きたいという執念があった方が上に行ける」
加賀の決着が楽しみだ。
(文・清水岳志)