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高校野球

【センバツ甲子園2018③】 剛球うなる最速145キロ右腕・定本拓真(三重)

★150キロも視野

 今回のセンバツで、三重は大会第7日の第2試合に初戦を迎える。出場校の中で最後の登場だ。その三重に、今大会のスピード王となりうる投手がいる。

 定本拓真(3年)は全国屈指の剛腕だ。最大の武器は、恵まれた体から力強く投げ下ろすストレート。「打者に狙われても打たれないような、質の良いストレートを投げたい。理想は大谷翔平さん(エンゼルス)です」と本人のこだわりは強い。

 現時点での最速は高校2年春に出した145キロ。だが今年の年明けには“150キロ”も灯している。野球用具メーカーによる専用ボールを使った測定で大台を叩き出した。「球場などのスピードガンで出た記録ではないので…」と定本は非公式を強調するが、球の回転数は2100rpmを超え、プロの投手の平均(約2200rpmとされる)に迫る数字だ。


29日の2回戦(初戦)で打線好調の日大三と対戦する。


★センバツまでに復調を

 1年秋からエース格として登板を重ねてきたが、昨年の秋は不調に陥った。「上半身が一気に大きくなって、フォームのバランスが合わなくなり、投げる際に体幹がぶれてしまった」(定本)という。東海大会準決勝では東邦(愛知)戦でリリーフしたが、打者6人を相手に1死しかとれず降板。球速も鳴りを潜めた。

 センバツに向け、フォームを微修正して臨む。左足を踏む込み歩幅をこれまでの6.5足から0.5足分、短くした。シャドーや近距離での投球を繰り返し、定着を図った。かつて三重中京大で則本昂大(楽天)らを指導した中村好治総監督は、その意義をこう解説する。
「今までは踏み込みの歩幅が長く、下半身がいっぱいになっていた。今は下半身がうまく止まる。歩幅を狭めた分、角度もつくようになった」

 11日の練習試合初戦には、西武、日本ハム、ロッテのスカウトが視察に訪れた。そのスピードガンでコンスタントに130キロ台後半をマーク。本人や小島紳監督は、投球内容に納得いかない様子だったが、今季初の実戦だったことを思えば及第点。小島監督は「体は丈夫な選手。どんどん投げていくうちによくなっていくはず」と復調を願う。

 センバツでは背番号10をつける。昨秋の不調時にチームを救ったサイド右腕・福田桃也を中心に投手陣は回りそうだが、勝ち上がるには定本の剛速球は欠かせない。定本の入学時から中村総監督(当時監督)は「ドラフト上位候補になりうる素材」と話していたが、同氏は「今もそう思っている。夏までうまくいけば楽しみ」と期待十分だ。

 大阪育ちだが、2014年夏の三重の甲子園準優勝に憧れて入学を決めた。ガタイがよく、ひときわ日焼けした風貌。「怖そうに見えますか? そうでもないですよ。新1年生は怖いと思うかもしれませんね」と定本は笑うが、聖地ではその剛速球で、打者に恐怖心を抱かせる。


定本拓真(さだもと・たくま)…大阪八尾ボーイズ→三重高3年。181cm・86kg。右投左打。三重高では1年秋からベンチ入りしエース格として登板。2年春に最速145キロをマークし、夏は三重大会準優勝。変化球の持ち球はカーブを筆頭にスライダー、フォーク。


文・写真=尾関雄一朗