- 社会人野球
2018.03.21 17:02
【THE INSIDE】球春到来を告げる社会人野球『JABA東京スポニチ大会』…「さあ、春だ!」と待ちかねた野球ファン集う
毎年3月の上旬に開幕するJABA東京スポニチ大会。“春を呼ぶ大会”として、熱心なアマチュア野球ファンの間ではすっかり定着しているが、今年で70回目となる。
今年の大会は、決勝が史上初のHonda同士の対決となって、狭山市のHondaがHonda熊本を下して5年ぶり2度目の優勝を果たした。昨年就任した2年目の岡野勝俊監督にとっては初のタイトル獲得となった。
岡野監督は予選リーグを何とか通過した段階で、「監督1年目だった去年よりも、2年目の方がはるかにプレッシャーはきついですよ。無我夢中でやっていた去年とは違って、今年は結果を求められます。都市対抗は1番の目標なんですが、そこまでに何とかタイトルがほしいです」と言っていた。
いくつかあるJABAの大会で結果を残すことは、秋の社会人野球日本選手権の出場権を得るということになる。ただ、それだけではなく、ひとつの結果を示すという意味でも大きいということも言えよう。その意識が強かっただけに、勝ちに行って結果として勝てたことは、ことのほか大きかったのではないだろうか。
Hondaのシートノック
岡野監督自身は、現役時代には2009年の都市対抗優勝に主将として貢献している。社会人野球の選手にとって、都市対抗のタイトルは最もほしいところでもあるが、岡野監督としても、もちろんそこを目指していっている。その目標へ向けて、まずは一つひとつ階段を上っていきながら、チームを作り上げていきたいというところであろう。
三菱ふそうがチーム休部となり、その後に移籍してきて一緒に戦ってきた“ミスター社会人”とも言われている西郷泰之コーチと、車の両輪となりながら今のチームを引っ張ってきている。
社会人野球の場合は企業チームであれば、どのチームも社業との兼ね合いがあって、チーム状態も景気にも左右されることも少なくない。各チームには、それぞれの選手枠というものがある。限られた枠の中で新陳代謝を繰り返しながらチームを維持していくのである。
ことに、今の時代は、その条件は厳しくなっているというのも現実だ。かつて、企業チーム全盛時代には、全国で250チーム近くあったのだが、現在では社会事情もあって、企業チームは80~90チームで推移している。およそ4分の1に減少してしまっている。やはり、今の時代大企業といえども、企業スポーツとして社会人野球をチームを維持し続けていくことはなかなか厳しいところもあるというのもまた事実である。
それでも、社会人野球が日本の企業スポーツを引っ張ってきたという事実もあり、日本のスポーツ界そのものが企業スポーツによって成長してきたというのもまた確かなことでもある。それだけに、一ファンとしても、社会人野球は、高いレベルで企業チームが競い合いながら、存在し続けていってほしいという願いは強い。
Hondaの場合は、今の時代にあって狭山(Honda)と鈴鹿に熊本と、3チームを維持しているのは企業スポーツを維持していく責任としても高く評価したい。そして、今年は鈴鹿から栃谷弘貴(小山台→國學院大)が狭山に移籍してきたように、企業内の異動(野球チームとしては移籍)も時にある。
栃谷は何とか戦力になろうと、予選リーグでは2試合に投げた。そして、鈴鹿時代には東海地区としてよく対戦していた王子にサヨナラ負けを喫して、チームとしては、この大会唯一の敗戦の責任投手となってしまった。岡野監督は、「まだまだ、コースなども甘いところがあるので、そこを磨いてほしい」と、夏の都市対抗予選までには、もうひとつステージアップしていってほしいという思いも強い。
王子・若林優斗
社会人野球は、このスポニチ大会から始まっていくのだが、関東では東京都企業大会など、準公式戦ともいえる大会も組まれている。4月には、日立市長杯、静岡大会など多くの大会が予定されている。企業チームとしては、勝つことを目指していくことを宿命づけられているところもある。それだけに、結果を出せなかったら、すぐに詰め腹を切らされる。
「好きな野球をやれる幸せと、好きな野球で追いつめられていく苦悩がある」ということを言っていた社会人野球の指導者もいたけれども、企業の看板を背負って戦っていく以上、何かを残していくことは宿命づけられているというのもまた確かなことであろう。
春の一番初めとなる公式大会でもある東京スポニチ大会。ここでは、新加入の選手たちの姿を見るのもまた、楽しいことである。Hondaは今年、栃谷と金港クラブを経て入社した山本瑛大(サウストーランス高→慶應義塾大)ら10人が新戦力となった。これもまた、今の時代では画期的といっていいであろう。
東京ガス・山口太輔監督
東京ガスでは久米健夫捕手(大阪桐蔭→関西大)がすでにマスクを被って出場していたし、王子でも沖繁優一(瀬戸内→環太平洋大)がリードオフマンとして出場。新日鐵住金東海REXでは吉村渉(久居→中京大)が、東京ガスとの試合では代打本塁打を放ち強烈にアピールした。こうして、まずは都市対抗予選へ向けて、新戦力の選手たちも戦力となっていく姿勢を示していくことになるのだろう。
こうした選手たちを見つけていくのもまた、春先の大会の面白さでもある。いくつかのJABA大会を経て、各地で開催されていく都市対抗予選も楽しみである。