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10年前に描いた夢が現実に 清宮の後打つ1年生4番、早実・野村が秘める思い

明治神宮大会は近畿代表の履正社(大阪)の優勝で幕を閉じた。決勝の早稲田実との序盤は打ち合いで、共に主砲の早実・清宮幸太郎、履正社・安田尚憲が本塁打をマーク。軍配は西の王者に上がったが、準優勝の早実も力があるところを存分に見せた。

■秋に清宮以上の存在感示した野村、名門の4番打者はどんな選手なのか

 明治神宮大会は近畿代表の履正社(大阪)の優勝で幕を閉じた。決勝の早稲田実との序盤は打ち合いで、共に主砲の早実・清宮幸太郎、履正社・安田尚憲が本塁打をマーク。軍配は西の王者に上がったが、準優勝の早実も力があるところを存分に見せた。

 中でも、3番の清宮以上に存在感を示したのが、後を打つ1年生の4番・野村大樹内野手。いったいどんな選手なのか。

 野村は今年、1年生ながら注目の清宮の後ろ、4番を任された。野村が入学する前は清宮が4番を打っていたが、出塁率の高かった前主将・金子が打つ1番の打順と、清宮の打順を近づけた方が得点力が上がると和泉実監督は考え、打順を変更していた。そして、4番目の打者に野村を抜擢した。しかし、清宮との勝負を避けられ、野村が凡退して無得点に終わるケースも見られ、今夏は西東京大会8強で姿を消した。

 夏の大会では変化球に手を焼いた野村。「対応できるようにしたい」と、同級生の投手に変化球ばかりを投げてもらい、目で慣れるように心がけた。

 実は、「夏の時は、何も考えられなかった」という。2学年上の先輩たちの中で野球をやり、周りを見る余裕などなかった。それでも1年生ながら本塁打を放ったこともあった。「清宮さんがアドバイスをくれたり、やりやすい環境を作ってくれたりしてくれました」と主砲に感謝している。

■2006年の甲子園決勝を生観戦していた野村

 また、野村は「今もプレッシャーはありますけど、前よりはないです。今は引っ張っていこうという感じです」と自分自身の成長も感じている。今は清宮が勝負を避けられても「安牌」の選手ではなくなった。力強いスイングで、真っ直ぐにも変化球にも強い打者になった。気がつけば、高校通算23本塁打。先輩の清宮が1年生時に放った本塁打数21を超えた。プレッシャーにも強く、悔しさを力に変えられる根性も備わっている。

 生まれは大阪。6歳まで神奈川にいたこともあったが、小学校1年からは兵庫に住んでいた。宝塚市出身で中学時代は大阪福島リトルシニアに所属。全国大会に何度も出場し、日本代表の経験もあるなど実力のある選手だった。

 大阪の学校からも誘いはあったが、選んだのは東京の名門への進学。2006年の早稲田実と駒大苫小牧の決勝戦を甲子園球場で生観戦し、優勝のシーンを目に焼きつけたという。その時、早実のユニホームがカッコイイと感じ、同じものを着て甲子園で戦いたいという夢を背負って、東京にやってきた。

 東京大会を制した早実は、センバツ出場は当確といっていい。決勝では清宮が5三振とブレーキだったが、4番の野村が打ちまくった。最後はサヨナラ本塁打で試合を決め、清宮から「男だな!」と褒められた。清宮だけのチームではないことを証明したのだ。約10年前に見た夢の舞台へ、野村はまもなく足を踏み入れる。

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