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【2018年注目の男たち②】度会基輝(中央学院大)度会隆輝(横浜高)「憧れの父」を追いかけて

★野球一家の日常

 とある平日の夕方、母と息子2人乗せた車中、他人から見れば“激しい舌戦”が繰り広げられる。
「道間違えてね?」「前はここ通ってないじゃん」「マジうるさい」「知ったかすんなよ」「いや合ってるから」
 母・祥子さん、長男・基輝(もとき)、次男・隆輝(りゅうき)の3人にとっては、これは日常だという。この言い合いの後には、たわいもない話で笑い合う姿があった。
 この一家の大黒柱は、ヤクルトの黄金時代を古田敦也捕手(現野球解説者)らとともに戦った度会博文(わたらい・ひろぶみ)さんだ。代打やどこでも守れる守備固めとしてスーパーサブ的な役割を長年担い、親しみやすい人柄もファンに愛された。2008年の引退試合では、基輝と隆輝がバッテリーで始球式を行い、父の引退に花を添えた。現役引退後は球団職員として広報を務め、今年からは営業部試合運営グループに勤務。多忙な毎日を過ごす中、今は2人の息子の活躍が何よりの楽しみとなっている。


リトルシニア日本選手権決勝後の1枚。博文さんは多忙な仕事の合間を縫っては、息子たちの応援に駆けつけ、スタンドから声援を送った


★長打力の兄、走攻守三拍子揃う弟

 次男の隆輝は「スーパー中学生」として名をとどろかせた。全国優勝7回の強豪・佐倉リトルシニアで2年生からレギュラーの二塁手を務め、クリーンアップを担った。3年生となった昨年はリトルシニアの全国大会で春優勝、夏準優勝。中学硬式野球5連盟の垣根を超えて日本一を争うジャイアンツカップでも優勝を果たした。侍ジャパンU-15代表にも選出され、11月のアジアチャレンジマッチで11打数7安打(打率.636)6打点と大活躍して、最優秀選手賞を獲得した。
 走攻守三拍子が揃い、自宅の特製ケージで祥子さんとともに磨いきたバットコントロールは超中学級だ。昨年には『炎の体育会TV』(TBS系列)に出演し、100秒間で一塁線上から三塁線上まで並ぶボード15枚をトスバッティングで打ち抜く企画に挑戦。2度目の挑戦となった秋の放送回では、博文さんのトスと隆輝のバットコントロール、この2つの巧みな技術の融合で、プロ野球選手も含めて初となる完全制覇を達成した。
 今春からは甲子園で数々のドラマを作り、プロ野球界にも多くの人材を輩出してきた横浜高(神奈川)に進学する。

 長男の基輝は、船橋ボーイズから甲子園に春夏合わせて出場9回の拓大紅陵に進学。寮生活を行いながら甲子園を目指して厳しい練習に励み、高校通算30本塁打を記録した。
 最終学年では主将に就任。澤村史郎監督は「野球が心から好きでユニフォームを泥だらけにして練習する“野球小僧”。悩みだってあるんでしょうけど表に出さず。チームを引っ張ってくれている」と話していたように全幅の信頼を置かれた。
 最後の夏は千葉大会4回戦で後に準優勝する習志野に延長戦の末に2対4で敗れたが、主将として最後までチームを先頭で引っ張った。今春からは2016年春に全国準優勝を果たした中央学院大に進学する。


175cm77kgとガッチリした体格の基輝


178cm66kgとスマートな体格の隆輝


★父の願うことは

 ともに父を「憧れ」と話し将来の目標は「プロ野球選手」と即答する。
 そんな2人の息子に対して、父は自らの野球人生も踏まえてエールを送る。
「僕はヤクルトに入団してすぐに右肩を壊してしまい、それが心残り。息子と一緒に風呂に入る時があれば手術の跡を見せたりしています。だから、まずは怪我のないようにしっかりケアをして、それぞれの目標に向かってもらえればと思います」
 父の背中を追いかけ、いつの日か追いつき追い越すことを夢見て。父ゆずりの野球センスと母ゆずりの底抜けに明るい人柄を武器に、野球小僧2人が新天地で、さらなる飛躍を狙う。

父以上に明るい母・祥子さんも加え4人で食事。話が絶えず、アスリート一家だけあり食事量も多い


文・写真=高木遊