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中日浮上のカギは“初球”?

写真提供=共同通信

■12年ぶりの防御率4点台

 5シーズン連続でBクラスに低迷している中日。就任2年目を迎えた森繁和監督は、2018年の投手陣のテーマに「四球を減らし、ストライクゾーンで勝負すること」を挙げた。昨季の防御率は4.06で、4点台を記録したのは2005年以来となる。この一因に、与四球率3.48でNPBワーストだった四球の多さがある、と森監督は考えているようだ。

 過去10年の中日の投手成績を見ると、与四球率と防御率が同じように推移していた。落合監督時代は与四球率3.00未満だったが、直近5年は3.5前後と悪化している。四球は3ボールからボール球を見送られることで成立するが、その3ボールの割合は全打席の21.2%でリーグワースト(表1参照)だった。投手コーチ、ヘッドコーチとしてチームの黄金期を支えた森監督からすると、投手陣の現状に注文をつけたくもなるだろう。

■ゾーン内に集めるリスクは小さい

 中日投手陣のデータをもう少し詳しく探ってみたい。上の散布図は奪三振、与四球、被本塁打の3つの成績で基本的な投手力を計るFIPを横軸に、本塁打を除いたインプレー打球をアウトにした割合を表すDERを縦軸に取ったものだ。右側に位置するほど投手力が高く、上側にあるほど守備力が高いことを示している。これを見ると、中日は投手力こそ低いが、守備力のあるチームということが分かる。また、ストライクゾーンでの成績も決して悪くはない(表2参照)。ゾーン内への投球増加で被打率などが悪化する可能性は大いにあるが、そのリスクを守備力で比較的小さくできるチームと考えていいかもしれない。

 ストライクゾーンへの投球の話に移る前に、四球減が成績改善につながることを念のため確認しておきたい。上記のグラフは過去10年分の12球団を対象に、当該年と前年の与四球率の差を横軸に、同様に防御率の差を縦軸に取ったものだ。四球が減っているほど右側に、防御率が良化しているほど上側にプロットされる。これを見ると相関係数は0.6143で、四球の増減は防御率の変化と一定の相関がある。一概にそうだとは言い切れないものの、四球を減らすことで、ある程度の成果を期待しても良さそうだ。

 さて、ストライクゾーンへの投球を見ていくと、チーム全体のゾーン内投球割合で中日は確かに最下位となっている(表3参照)。これをさらに詳しく探るため、ストライクゾーンへの投球割合をカウント別に算出し、傾向を見ていきたい。

■対照的な配球の巨人と中日

 表4は、セ・リーグ全体のカウントごとのストライクゾーン投球割合を示したものだ。色合いは赤色が濃いほどストライクゾーンへの投球が多く、青色が濃いほど少ないことを表している。投手は2-0などの投手不利なカウントほどストライクゾーンに投げ込むし、0-2のような投手にとって有利なカウントではボール球を使う余裕があるのでストライクを投げない、という傾向が見てとれる。

 ここからは、表4で紹介したリーグ平均に対してのプラスが大きいほど濃い赤色、マイナスが大きいほど青色を濃くし、球団の傾向を表していく。まず、表3で最もストライクゾーンへの投球が多かった巨人を見ると、0-2を除いて赤一色で染まっている(表5参照)。昨季の与四球率がリーグ唯一の2点台だったことを裏付けるデータといっても良いだろう。

 一方、最下位だった中日投手陣は巨人と対照的に、ほぼあらゆるカウントでストライクゾーンへの投球が少ない(表6参照)。カウントが浅いうちからボール球が多く、0-2に追い込んだ後のストライクゾーン投球の少なさは他球団とある意味で一線を画した数字となっていた。

■96敗チームから学べること

 昨季、ストライクゾーンへの投球が劇的に増えた投手として、18年から巨人でプレーする野上亮磨が挙げられる。表7では16年と17年のストライクゾーン投球割合の差を算出したが、その変化は歴然で与四球率も前年の3.62から1.50へと大幅な改善を見せた。ゾーン内への投球が多い巨人が獲得したのもうなずけるデータだ。

 とはいえ、この変化は野上がゾーン内に投げ込む制球力を持ち合わせていたことが考えられ、チーム全体としてこのような変化は望むのは難しい。それでも重点的にストライクゾーンへ投げるとしたら、どのカウントにすべきだろうか。その参考例を、2017年に球団史上ワーストの96敗を記録したヤクルトに求められるかもしれない。

 2016年のヤクルトは、17年の中日と同じくストライクゾーンへの投球割合が低く、リーグ平均と比較してすべてのカウントでマイナスだった(表8参照)。それが17年は全体的に増加し(表9参照)、与四球率、防御率ともに前年より改善を見せた。

 特にあらゆる打者に投げる初球で3.3ポイント増加しているが、過去10年で昨季のヤクルトのように与四球率が0.30以上良化したケースは25回あり、そのうちの17チームが初球のストライクゾーン投球割合を1ポイント以上増やしている。中日も初球でストライクを取る方法を確立できれば、四球減少につながる可能性は高いだろう。

■戦術的なカーブ習得も一策

 そのための方法として、楽天のようにカーブを増やすのも効果的だ。楽天はキャンプで「ストライクゾーンに投げること」と「カーブの習得」をテーマに掲げて練習を積んでいるようだ。中日はカーブの使い手が少なく、昨季の投球割合は12球団で最も低い3.1%だった。特に0ストライク時にスイングされにくく、初球でストライクを取りに行くにはうってつけのボールだろう。

楽天投手陣に見る、カーブの活用法

 中日では、昨季の与四球率が4.01だった小笠原慎之介が、キャンプでカーブの制球力向上に励んでいるという報道もある。昨年は初球でカーブを67球投げ、ゾーン内は19球と思うように操れていなかったが、そのうちの14球は打者の見逃しで有効なボールではある。小笠原たち中日投手陣がストライクゾーンをどう使っていくか、今シーズン注目のポイントのひとつだ。

【出典】
日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201802010000027.html
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201802210000125.html
中日スポーツ
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/dragons/news/201801/CK2018011102000101.html?ref=hourly

※データは2017年シーズン終了時点

文:データスタジアム株式会社 小林 展久