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社会人野球

スター選手不在でも! 上武大の4季連続全国4強を支えているのは、粒ぞろいの個性が生み出す一体感

全選手の練習メニューを話し合う谷口英規監督(左)と佐々木優大学生コーチ(右)

全選手の練習メニューを話し合う谷口英規監督(左)と佐々木優大学生コーチ(右)

現在行われている明治神宮野球大会で4強入りした上武大。春の全日本大学野球選手権を合わせると、これで4季連続の全国大会4強入りとなる。
 その安定した高いチーム力は、隙を突いた走塁、前日まで出場機会がほとんどなかった選手が抜擢されての決勝打、スタンドに轟く大きな声での応援など様々な部分で現れている。
 日本一になった2013年春から上武大の野球を観ているが、特にこの秋はそのチーム力の高さ、一体感が際立っている。

★“野球が好き”以外で野球をする意味を見つける
「春よりも、野球する上で哲学を持つようになりました。“なぜ、応援するのか?なぜ、野球をするのか?なぜ、上武大へ来たのか?”そういうことを考えられるようになりました。大学で野球をやるなら、その答えを“野球が好き”以外で見つけないといけません。最後は“誰かのために”ですからね」
 そう語るのは、指揮を執る谷口英規監督。現役時代は浦和学院、東洋大、東芝とアマチュア球界のエリートコースを歩んできた。自身の学生時代は「そんなこと考えてもいませんでしたけどね。人は変われるんですよ」と笑う。
 特に大事しているのは224人にもなる部員全員で勝利に向かうことだ。練習環境は公式戦も行うメイングラウンドに加え、サブグラウンド、室内練習場もあり、“全員が野球を上手くなれる”環境があり、練習での状態が良ければ、谷口監督はベンチ外の選手を翌日にスタメンに起用する。

 その中で学生コーチの存在は欠かせない。チーフ格の佐々木優大学生コーチ(4年・須磨翔風)は、試合では三塁コーチを務め、全選手の練習メニューを監督とともに1日ごとに考え、調子の良い選手がいれば進言をする。
 谷口監督は「佐々木がいないと、ウチのチームは回りません」と全幅の信頼を置いている。

★野球でも応援でも日本一を目指す
 部員たちによる応援団を仕切るのは、中山龍樹学生コーチ(4年・比叡山)だ。3年秋までは選手で、新チームから学生コーチとなって2軍や3軍の責任者を務める一方、熱く盛り上げ上手な性格から応援団長の役割を担っている。
「応援で勝てた試合がたくさんある」と佐々木が話すように、グラウンド上に立つ選手たちを大きく後押ししている。
 もともと、全応援歌にオリジナルの歌詞をつけて応援するのが伝統だったが、この秋はさらに曲のバリエーションを増やした。その選曲はTHE ALFEE、モーニング娘。、Green Day、 E-Girlsなどと幅広い。
 春に自分たちしか盛り上がっていなかったという反省があった。そこで様々な年代のお客さんが思わず応援したくなるよう、ヒット曲やCMソングから曲を選んで、歌詞も覚えやすいように工夫している。
「楽しいですし、野球でも応援でも日本一になるというプライドを持ってやっています」と話す中山は、今大会でも部員たちを煽動し声を連日枯らしている。

上武大応援団長・中山龍樹

上武大応援団長・中山龍樹

 準決勝進出を決めた13日の試合後、谷口監督は「4年生たちをなんとか良い形で終わらせてあげたい。勝つということより、みんなで1つになることを目標にしてやっていきたいです」と語った。
 準決勝の相手は明治大。個々の能力では劣るが、224人が一体となり強敵に立ち向かう。

文・写真:高木遊