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2017.11.22 17:55
【THE INSIDE】「第48回明治神宮野球大会 大学の部」で日体大が37年ぶりの日本一に…大学野球探訪(9)
今年の明治神宮野球大会 大学野球の部は、首都大学野球連盟代表の日本体育大が、37年ぶり2度目の優勝を果たした。
今季の日体大はリーグ戦を8連勝で勝ち点4を獲得。最終週を待たずにリーグ優勝を決めた。しかし、最終週の東海大戦には控え選手を多数出場させたことも影響してか連敗してしまい、少しよくないムードで明治神宮大会の出場権を争う(横浜市長杯争奪)関東選手権大会に臨むことになった。
古城隆利監督は、「リーグの終わり方がちょっと良くなかったということについては、私も反省しました。それで、関東選手権の前には、もう一度気持ちを引き締め直しました。それをベンチに入っていない上級生も意識していてくれて、いい入り方が出来たので、その勢いでこの大会にも臨むことが出来ました」と秋の戦いを振り返っていた。
そして、37年ぶりの日本一の座についたことに関しては、「全国にたくさんOBもいますし、多くの人のサポートも受けてきました。それに応えられて本当に嬉しい」と、素直に喜びを表していた。
表彰式で並ぶ日体大
今季の日体大の勝因は、何といっても安定した投手陣だった。松本航君(3年・明石商)と東妻勇輔君(3年・智辯和歌山)という同学年の2人の投手が競い合い、お互いの質を上げていった。そして、その集大成として準決勝では松本君が東洋大を、決勝では東妻君が星槎道都大を2安打に完封するという快投を見せた。
さらに、古城監督が優勝の立役者として名前を挙げたのは、マネージャーの前川洋紀君(4年・徳島商)だった。「本人は、選手にも未練があったところもあったかもしれませんが、その人間性のよさが必要だと感じたから、『優勝するためには、日本一になるためには、お前のスタッフとしてのサポートが必要なんだ』と口説いてマネージャーにしたんですが、本当によくやってくれた」と評価していた。
優勝を決めた後には、古城監督に続いてみんなから胴上げもされていた。まさに、信頼の証ともいえる胴上げだった。
準優勝した星槎道都大は、札幌学生野球連盟を3季ぶりに制して、北海道学生野球連盟の函館大に連勝して2年ぶり6度目の出場を果たした。かつては道都大という校名だったが、今年4月から頭に星槎がついた現校名となった。
星槎道都大・福田俊君(3年・横浜創学館)
チーム躍進の原動力は左腕の福田俊君(3年・横浜創学館)で、この大会でも3戦連続先発マウンドに立った。決勝戦の先発は、山本文博監督が本人に尋ねた際に「頭から行かせてください」と意気込みを見せたため、先発で行ったということだ。
「5回まで持ちこたえてくれれば、何とかなるかな」と思っていたというが、その5回に日体大の3番・船山貴大君(3年・日大三)に、少し甘く入ったところを2ランを浴びてマウンドを降りた。しかし、そこまでの粘投は大いに称えられるものであろう。山本監督も、「福田のおかげで、ここまで来られた」と感謝していた。
決勝戦に東京六大学と東都連盟のどちらの代表校もいないというのは、2005年の第36回大会以来のこととなったが、北海道の大学の決勝進出は初めてのことだった。大学野球の戦力分散化、地方リーグのレベル向上が叫ばれて久しいが、今大会もそんな現象を象徴していた。中でも、中国地区代表の環太平洋大が、慶應義塾大に快勝。六大学の雄を圧倒した環太平洋大の戦いぶりは見事だった。
慶應義塾大 対 環太平洋大
環太平洋大は今年で3年連続出場となっていたが、チームを率いる野村昭彦監督は野村謙二郎前広島東洋カープ監督の実弟だ。2回戦で対戦した慶應義塾大の大久保秀昭監督とは日本石油時代にはバッテリーを組んでいたこともある間柄である。大久保監督は、「きちんとしたいい野球をやられてしまった」と完敗を認めていた。
学校法人としては、甲子園にも出場を果たしている創志学園と同じで、2007年に開学している。経営学部のほかに、次世代教育学部としてこども発達学科と教育経営学科、体育学部として体育学科と健康科学学科を設置している。
今大会の活躍により、改めて中国地区大学野球連盟の力も認識された。かつては東亜大がこの大会で連覇を果たすなど3度優勝している。リーグでは徳山大が最多優勝を誇り、東亜大と岡山商科大が追っているが、環太平洋大が新たなリーダー格としての存在を示してきたと言っていいであろう。
試合としては、九州共立大と名城大の試合は見応えがあった。初回に名城大が先制すると、そのすぐ裏に九州共立大は4番・片山勢三君(4年・門司学園)の3ランで逆転。3回に名城大が2点を返して追いつくが、九州共立大は4回に二死走者なしから平良竜哉君(1年・前原)の三塁打と緒方壮助君(4年・樟南)のタイムリーでリード。
九州共立大・竹本凌太君(4年・浜松商)
さらに5回には、片山君のこの日2本目となる2ランで突き放した。しかし、名城大も6回に代打・工藤駿君(3年・東邦)の三塁打などで再逆転。これで決着かと思われたが、粘る九州共立大は8回に平良君の中越ソロで再び同点とした。
こうして試合はタイブレークにもつれ込むかと思われたが、九州共立大は9回、片山君の敬遠などで一死満塁としたところで、望月涼太君(4年・東大阪大柏原)が強烈な投手返しを放ち、これがサヨナラ打となった。
名城大は、栗林良吏投手(3年・愛知黎明)が打たれながらも8回まで粘っていたが、9回に2番手の坂倉誠人君(2年・津商)がつかまってしまった。日が落ちてくると、かなり冷え込んでくる神宮球場だったが、見ている人の足を引き留める熱の入った好試合だった。