- 高校野球
2017.11.17 12:00
【THE INSIDE】シーズンオフ前、11月の高校野球の過ごし方
高校野球は12月から3月の1週目までは対外試合禁止の期間となる。つまり、試合をするということに関しては、年内は11月が最後ということになる。それ以降は、いわゆる対外試合はオフ期間となって、その間は学校によって過ごし方は異なってくる。
勉強期間としているところや、普段はあまり接する機会の少ない読書期間にしているところもある。あるいはルールや戦術の勉強などの座学に重点を置くところもある。そうした考える野球の習慣を身に付けていくのもこの時期である。また、強化合宿として、体力向上を目指した合宿を冬休みに温暖な地に出かけて行うところもある。
そんなオフシーズンを迎える前の11月をどう過ごしていくのかということも、高校野球指導者たちは、色々と工夫を凝らしているのである。既に、練習試合を入れずに体力強化を目的としたトレーニングを始めているところもあれば、どん欲に実践経験を積んでいくために、11月最終週まで練習試合を組んでいるところも少なくない。
そんな中、愛知県の場合は秋季県大会とほぼ同時進行で、全尾張大会、全三河大会、尾東大会という地域の大会が開催されている。日程によっては、10月中に終わってしまうこともあるのだが、今年は雨などで中止になっていたということもあり、11月上旬まで大会そのものがずれ込んだ。
尾東大会の優勝旗を受け取る星城・谷村君
この大会は、愛知県内では圧倒的な強さを示している名古屋市内の中京大中京(前中京商~中京)、東邦、享栄、そして愛工大名電(前名電工~名古屋電気)といった私立校に対して、「負けないでいこう」と意気込む三河地区や尾張地区の各校の関係者が、独自に地域の大会を開催しようということで、地元ブロック紙の中日新聞の共催の下で秋と春に開催されるようになった。各校が背番号をつけた実戦の場を多く経験でき、緊張感のある戦いをする機会を得られている。
「こういう戦いの場を与えられることは、やはりありがたいと思う」というのが、多くの参加校の指導者たちの意見でもある。
やがて、全尾張大会が拡大し分離した形で尾東大会という大会が誕生した。これは、名古屋市の東にある尾張地区の学校の大会で、具体的には春日井市、日進市、春日井市、長久手市、豊明市などの学校が参加して行われる。今年の夏の愛知大会で決勝進出を果たしている栄徳や、東海大会進出の実績もある中部大春日丘、中日の田嶋慎二の出身校でもある中部大一に加え、男子バレーボールでは何度も全国制覇を果たして石川裕希などの日本代表選手を輩出、近年は野球部も躍進している星城などが参加している。この中に甲子園出場校がまだないのだが、甲子園に手の届きかかっている学校もいくつかある。いずれにしても、県大会とは別にこうした大会で切磋琢磨していくことによって、地域のレベルの底上げにもつながっていくであろう。
この秋、決勝で栄徳を下して尾東大会の優勝を果たした星城の平林宏監督は、「こういう大会でも、冠が欲しかったですから、やっぱり意味はありますよ。大会である以上、負けられないという意識で戦いますから、そういう緊張感の中で延長戦を制して勝てたということは大きいです。地域に対しては、やはり名前もアピールできますから」と話す。豊田西で実績を挙げ、何年かのブランクを経て2年半前に星城監督に就任した平林監督。久しぶりの尾東大会の優勝を素直に喜んでいた。
平林監督の指示を伝える星城・小川洸君(15番)
全尾張では愛知啓成が優勝し、全三河では豊川が優勝を果たしたが、ことに全尾張大会は記念大会となる来夏は、東愛知大会として全三河+知多地区というところから甲子園出場の代表校が出せるだけに、全三河大会は、ほぼ東愛知大会の前哨戦的な位置づけにもなっていく。それだけに、来年春の全三河大会も楽しみだ。他にも、名古屋市内県立校大会や県工業高校大会など、指導者たちが工夫し協力し合って、独自の大会を設定しているのも特徴的である。
閑話休題、こうしたオフ前の大会があるのは、愛知県だけではない。東海地区では静岡県や岐阜県でも、それぞれの市内や、地域での大会を開催している。岐阜県では、工業校大会という形でも行われている。また、関東でも千葉県や埼玉県、茨城県でも市内大会や近隣地区大会などを開催している。それらの大会を通じて、県大会はメンバーから漏れてしまったけれども、こうした大会で結果を出すことで大きく成長していくという選手もいるという。そんなところも、やはり背番号をつけて試合をすることで、選手たちの意識は上がっていき、自信を得ていくということも多いのではないだろうか。
また、11月中旬にかけては1年生大会も組まれている。この大会では2年後の夏を展望できるとともに、まだ高校野球に慣れきっていない多くの1年生に、少しでも実戦の機会を与えていこうという考えのようでもある。