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高校野球

投手層の厚さで創成館高がおかやま山陽高に快勝!【明治神宮野球大会】

7回表一死2塁。3-1とリードしていた創成館ベンチは、好投の左腕・川原陸(2年・三川中)をベンチに下げる。球数はまだ83球で、被安打6、四死球1と内容も悪くなかった。高校野球は得てしてエースを「引っ張る」ことが多く、このタイミングでの降板は異例と言っていい。

しかし二番手が投げ始めて、観客は納得しただろう。背番号11の伊藤大和投手(2年・吉井中)が、川原の好投も霞むような投球を見せる。伊藤は182センチの体格とダイナミックなフォームから、最速140キロの速球とスライダー、チェンジアップを繰り出して打者を翻弄。2回3分の1を被安打0、四死球1と零封して試合を締めた。

好救援した伊藤大和(創成館)


投球内容に加えて変幻自在なフォームも驚きだった。彼はサイドハンドかと思ったらスリークォーターになり、またサイドハンドに戻る。

伊藤は説明する。「上からと横から投げられるので、そこが特徴だと思う。(持ち球は)上だったらカーブとスライダーとチェンジアップとスプリット。横はスライダー、チェンジアップがあります。相手が右打者だったら上の方が多くて、左打者ならチェンジアップがシンカーみたいな軌道なので、それをいかして横を使います」

最速は上が141キロ、横が138キロとのこと。捕手からは球種、フォームに加えて「上か横か」というサインも出ている。

創成館の投手陣は多士済々。背番号1のエース川原も最速141キロの速球と、切れのあるスライダー、チェンジアップを投げる好左腕だ。しかしそんな彼も2年の春季大会はスタンドから応援していたという「成り上がり組」で、今も競争の渦中にいる。

川原は言う。「後ろに伊藤のようなピッチャーがいっぱいいるので。最初から全力で投げられる。崩れても後ろにいいピッチャーがいるのが強みです」

伊藤はその競争の激しさを明かす。「ピッチャー陣は2年生だけで13人いて、控えでもいいピッチャーが一杯いる」

伊藤は腰に負傷もあって、長崎県大会の準々決勝からようやくメンバー入りしていた。九州地区大会も決勝戦の4イニングしか投げていない。しかし創成館はそんな投手が、全国舞台で目の覚めるような投球を見せる。

稙田龍生監督はこう胸を張る。「競争が今の投手陣を作っている一番の要因です。ベンチに入ってない子の中にも、3,4人は今の時期に135キロくらい投げるピッチャーがいます」

創成館の投手陣おそるべし……。2回戦以降に登板するかもしれない3人目、4人目が今から楽しみだ。

写真左から伊藤大和、川原陸、平松大輝(創成館)

★1回戦・おかやま山陽vs創成館
おかやま山陽高 000100000=1
創成館高    20010002×=5
【創】○川原、伊藤―平松
【お】●有本―川上

文=大島和人・写真=高木遊