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明治神宮大会優勝を狙う来秋ドラフト候補コンビ 東妻勇輔・松本航(日体大)

 11月10日、神宮球場で第48回明治神宮野球大会が開幕する。
 楽天ドラフト2位のスラッガー・岩見雅紀(4年・比叡山)を擁する慶応義塾大、名将・高橋昭雄監督最後の指揮となる東洋大が優勝争いの中心となるが、来秋ドラフト上位候補左腕の鈴木翔天(3年・向上)擁する富士大やチーム力の高い環太平洋大ら地方大学も侮れない。

 そんな激戦必至の「秋の大学野球日本一決定戦」で、37年ぶりの優勝を狙うのが日本体育大(以下、日体大)だ。東妻勇輔(3年・智弁和歌山)と松本航(3年・明石商)の来秋ドラフト候補右腕コンビを擁して、最激戦区の関東地区代表決定戦(横浜市長杯)を連続完封で制して代表権を獲得した。

東妻勇輔と松本航

★オラオラ系の東妻、ほのぼの系の松本
 リーグ戦の1回戦と横浜市長杯の初戦で先発した東妻は、身長170cmと小柄だが「小さいからと言って負けるわけですし、小さくて球が速い方が目立てるじゃないですか」「マウンド上では性格が変わります。オラオラ系というか吠えたりしますね」と話すように、相手打者を押していく強気の投球が武器。

 昨夏に肩の故障を経験した際に、ウェイトトレーニンニングに重点を置いたことで、最速145km/hほどだった球速が152km/hにまでアップした。状況に応じて変化幅を変えるスライダーも武器で、今秋のリーグ戦では史上16人目のノーヒットノーランを達成するなど4勝1敗の成績でMVPを獲得した。横浜市長杯1回戦でも神奈川工科大を6回3安打無失点の内容で相手の反撃を許さず大勝に貢献した。

 二枚看板のもう1人は、1年春から登板を重ねて、3年秋までに積み上げた白星が20を数える経験豊富な松本。最速150km/hのストレートに、ツーシーム、スプリットなどを操り、空振りだけでなく小さな変化で相手打者の芯を外して凡打を打たせるなど巧みな投球術が光る。

 今夏には侍ジャパン大学代表に選出され、日米大学野球とユニバーシアードに出場して計5試合6イニングに登板し1失点と貴重な経験を積んだ。また、軸足となる右足がホームに対して遠回りするような癖があったが、代表の善波達也監督から「軸足を前の左足にぶつけるようなイメージにしたら?」と助言を受けたことで、リリースの感覚が良くなりストレートのキレが増したという。

 秋のリーグ戦では3勝1敗、リーグトップの防御率0.77の成績を残し、横浜市長杯準決勝の国際武道大戦で先発。春の全日本大学野球選手権準優勝校を4安打完封で抑えて、明治神宮大会出場権を獲得した。
 東妻と違って、口調はほのぼのとしたものだが、主将の濱村和人(4年・長崎海星)が「打たれても素振りに出さないようになりましたし、際どい球をボールと判定されても、もう1度そこに投げ込むようなこともある」と話すように、松本もまた強気な一面を持ち合わせる。

 指揮を執る古城隆利監督は「松本の活躍に触発されて東妻が伸びてきました」と2人の成長に目を細めており、ストッパーの森博人(1年・豊川)や西澤大(4年・春日部共栄)らも控える投手陣に期待を持っている。
 両投手ともに明治神宮大会での目標は迷わず「日本一」と口にした。性格や投球スタイルは異なるが、互いに認め合い高め合ってきた2人が、日本一の頂を虎視眈々と狙っている。

文・写真=高木遊