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2016.11.05 18:29
岐路に直面する選手たち、それぞれの決断 過去5年のFA宣言に見る明暗
日本プロ野球も日本シリーズが終わり、ストーブリーグが本格化してきた。今月1日にオリックスの糸井嘉男外野手が国内フリーエージェント(FA)権を行使する意向を球団に伝えた。
■ここまで糸井、岸、森福らがFA権行使を表明
日本プロ野球も日本シリーズが終わり、ストーブリーグが本格化してきた。今月1日にオリックスの糸井嘉男外野手が国内フリーエージェント(FA)権を行使する意向を球団に伝えた。2日には海外FA権を保持する西武の岸孝之投手が権利の行使を表明。他球団の評価を聞く意向を示した。また、4日にはソフトバンクの森福允彦投手も国内FA権の行使を表明。ヤフオクドーム内の球団事務所を訪れ、FA権の申請書類を提出した。
一方、同じく海外FA権を保持していた嶋基宏捕手は権利を行使せずに楽天への残留を表明。「『生涯楽天』でいきたいなと今のところは考えています」と球団への愛着を口にした。また中日の大島洋平外野手も国内FA権を行使せずに残留を宣言。日本ハムの矢野謙次外野手も球団と話し合いを持ち、FA宣言せずに残留することを選択した。さらに5日は中日の平田良介外野手がFA権を行使せずに残留することを表明している。今後も陽岱鋼外野手(日本ハム)、山口俊投手(DeNA)ら権利の行使が注目されている選手が控えおり、権利を行使できる期間(日本シリーズ終了後から土日除く7日間)はファンからも大きな関心が寄せられている。
FA権を取得するタイミングで自身の価値を再確認しようとする者、新天地への移籍を模索する者、所属球団への忠誠を誓う者など、その選択は様々。他球団にとっては貴重な戦力を獲得するチャンスでもある。来季の去就が定まっていない選手たちは今後どのような決断を下していくのか。それぞれの動向に注目が集まる中、ここでは過去5年でFAを宣言した選手たちのその後を振り返ってみたい。
■2011年度のFAでは杉内&村田が巨人へ、メジャーでも輝きを放った岩隈
【2011年】※国内、海外FAを含む
杉内俊哉投手(ソフトバンク)→巨人
許銘傑投手(西武)→オリックス
帆足和幸投手(西武)→ソフトバンク
小池正晃外野手(中日)→DeNA
鶴岡一成捕手(巨人)→DeNA
篠原貴行投手(横浜)→残留
和田毅投手(ソフトバンク)→オリオールズ
川崎宗則内野手(ソフトバンク)→マリナーズ
岩隈久志投手(楽天)→マリナーズ
大村三郎外野手(巨人)→ロッテ
新井貴浩内野手(阪神)→残留
村田修一内野手(横浜)→巨人
11年度は国内FA、海外FA合わせて12選手が権利を行使。海外FA権では当時ソフトバンクの和田毅がオリオールズ、同じくホークスの川崎宗則と楽天の岩隈久志がマリナーズへと移籍した。和田は渡米後にトミー・ジョン手術を受けるなど逆風に直面したが、14年に移籍したカブスでマイナーから這い上がり、メジャー初勝利を含む4勝をマーク。今季ホークスに5年ぶりに復帰し、最多勝、最高勝率の2冠を達成した。川崎は渡米後、5年連続でマイナーからメジャー昇格を勝ち取るなど奮闘。岩隈はマリナーズの先発ローテの一角として活躍し続け、今季はメジャー自己最多の16勝をマーク。通算でも63勝37敗、防御率3.39とチームを代表する先発投手として輝きを放っている。
同年度はソフトバンクの杉内俊哉、ベイスターズの村田修一がFAで巨人に移籍。巨人は翌12年からリーグ3連覇を成し遂げた。杉内は移籍以降、3年連続で2桁勝利をマーク。村田は移籍1年目で打率.252、12本塁打、58打点と伸び悩んだものの、移籍から2年連続でベストナインに輝き、2年目は打率.316、25本塁打、87打点と復調した。また、13年、14年とゴールデングラブ賞にも輝いている。
またこの年は当時阪神の新井貴浩がFA権を行使した上で残留。一方、その年の途中で巨人にトレードで移籍していた大村三郎はFAでロッテに復帰し、サブローの登録名に戻った。巨人所属はわずか154日間で、復帰翌年は77試合で4番を任され、打率.239ながらリーグ最多の78四球で出塁率.346をマークした。
そのほかFA権を行使したのは許銘傑、帆足和幸、小池正晃、鶴岡一成、篠原貴行の5選手。許銘傑は西武からオリックスに移籍し、初年度は37試合に登板したが、0勝3敗10ホールド1セーブ、防御率5.29に終わり、2年目で戦力外に。同じく西武からソフトバンクに移籍した帆足は1年目にわずか1試合の登板にとどまったものの、移籍2年目に8勝、3年目に6勝をマーク。15年シーズン限りで現役を退いた。
また、小池は中日からベイスターズに復帰し、12年は前年を上回る88試合に出場。翌13年に引退した。鶴岡も巨人からベイスターズに復帰。12年はキャリア最多の102試合、13年はキャリア最多の108試合に出場。オフに久保康友の人的補償で阪神に移籍し、今季限りで引退となった。一方、篠原は権利を行使したものの残留し、12年は50試合に登板。13年にユニフォームを脱いだ。
■12年度は藤川、田中賢、中島が海外FA権を行使
【2012年】※国内、海外FAを含む
平野恵一内野手(阪神)→オリックス
寺原隼人投手(オリックス)→ソフトバンク
藤川球児投手(阪神)→カブス
田中賢介内野手(日本ハム)→ジャイアンツ
中島裕之内野手(西武)→アスレチックス
日高剛捕手(オリックス)→阪神
この年は平野恵一がFA権を行使して阪神から古巣オリックスに6年ぶりに復帰。しかし負傷に苦しんで復帰1年目は56試合の出場にとどまった。チームが優勝争いを繰り広げた翌14年は120試合に出場したが、15年は29試合の出場に終わり、この年で現役を退いた。当時オリックスの寺原隼人も同じく国内FA権を行使して古巣ソフトバンクに復帰。負傷もあって最初の2年は計5勝にとどまったが、15年は先発、中継ぎで貢献し、8勝3敗2ホールド、防御率3.44の成績を収めた。
藤川球児、田中賢介、中島裕之の3選手は海外FA権を行使してメジャー移籍を決断。藤川はカブス、レンジャーズの2球団に所属したが、トミー・ジョン手術を受けるなどし、2年半で29登板にとどまった。メジャー通算1勝1敗1ホールド2セーブ、防御率5.74で帰国。阪神に復帰した今季は5勝6敗14ホールド3セーブ、防御率4.60だった。
田中賢はジャイアンツのマイナー契約を結び、シーズン途中でメジャー昇格を果たしたが15試合の出場にとどまった。その後、レンジャーズとのマイナー契約を経て15年に日本ハムに復帰。今季は143試合に出場し、日本一達成に貢献した。中島はアスレチックスに入団したものの2年間でメジャー出場を果たせず、15年にオリックスに移籍。今季は96試合の出場で打率.290、8本塁打、47打点だった。
また日高剛はFA権を行使してオリックスから阪神へ移籍。移籍1年目は44試合に出場したが、14年は出番が減少し、その年で引退を決断した。
■ロッテ移籍後に最多勝に輝いた涌井
【2013年】※国内、海外FAを含む
涌井秀章投手(西武)→ロッテ
片岡治大内野手(西武)→巨人
山崎勝己捕手(ソフトバンク)→オリックス
鶴岡慎也捕手(日本ハム)→ソフトバンク
久保康友投手(阪神)→DeNA
大竹寛投手(広島)→巨人
中田賢一投手(中日)→ソフトバンク
小笠原道大内野手(巨人)→中日
13年度は西武の人気選手だった涌井秀章が国内FA権を行使してロッテへ。移籍1年目は8勝(12敗)も2年目は15勝(9敗)を挙げ、自身3度目の最多勝に輝いた。今季も10勝(7敗)をマーク。オフには結婚を公表するなど公私ともに充実ぶりをうかがわせている。同じく西武で人気を誇った片岡治大はFAで巨人へ。2年連続で100試合、20盗塁以上と成績を回復させたが、今季は負傷やクルーズの加入もあり、32試合の出場にとどまった。
山崎勝己、鶴岡慎也の2捕手もFA宣言。山崎はソフトバンクからオリックスに移籍したが、移籍1年目は60試合の出場でキャリアワーストの打率.108に終わった。今季は移籍後最少の43試合の出場にとどまっている。鶴岡は日本ハムからソフトバンクに移籍。加入2年目は56試合と出番を減らしたが、今季は103試合に出場した。
13年シーズンに阪神のチーム事情から救援を任されていた久保康友はFAでDeNAに移籍。1年目に12勝を挙げ、投手陣の柱となった。しかし、2年目以降は8勝、5勝と勝ち星を減らしている。中日からソフトバンクに移籍した中田賢一も1年目で11勝をマーク。2年目の15年も9勝を挙げ、日本シリーズの先発マウンドも任された。また大竹寛は広島から巨人に移籍し、1年目で9勝を挙げるも2年目は3勝止まり。今季は6勝6敗で防御率3.55だった。11年に2000本安打を達成した好打者・小笠原道大はFAで巨人から中日に移籍。代打の切り札として存在感を見せ、15年シーズン限りで引退を表明した。
■14年度は金子&鳥谷にメジャー移籍浮上も残留
金子千尋投手(オリックス)→残留
大引啓次内野手(日本ハム)→ヤクルト
成瀬善久投手(ロッテ)→ヤクルト
能見篤史投手(阪神)→残留
小谷野栄一内野手(日本ハム)→オリックス
鳥谷敬内野手(阪神)→残留
金城龍彦外野手(DeNA)→巨人
相川亮二捕手(ヤクルト)→巨人
14年度はヤクルトが2人のFA選手を獲得。日本ハムから移籍した大引啓次は序盤は打撃不振で出遅れたが、96試合に出場し日本シリーズでもショートでスタメンの機会を得た。ロッテから加入した成瀬善久は3勝(8敗)と期待通りの成績を残せず、今季も3勝2敗、防御率5.60に終わった。巨人もFAで2選手を獲得。DeNAから加わった金城龍彦は4月15日のDeNA戦で3ランを放つなどしたがシーズンでは43試合の出場にとどまり、この年で引退。ヤクルトから加入した相川亮二も負傷の影響もあり40試合の出場にとどまった。2年目の今季は37試合の出場とさらに出番を減らす結果となった。
小谷野栄一はFA権を行使して日本ハムからオリックスに移籍。しかし負傷にも見舞われ、打率.295ながら56試合の出場にとどまった。今季はさらに50試合と出場を減らし、打率.249に終わっている。
またこの年は金子千尋、能見篤史、鳥谷敬の3選手がFAを宣言した末に残留となっている。メジャー移籍の可能性も取りざたされた金子は右肘の手術を経て残留を選択。その後の2シーズンは防御率3点台と成績を落としている。能見は翌15年に2桁勝利(11勝)を挙げたものの13敗。今季も8勝12敗と黒星が先行する結果となった。鳥谷は海外FA権を行使して一時メジャー移籍を目指したものの残留を決意。15年は4年連続でオールスターゲームに出場したが、今季は打撃不振もあり、7月には連続フルイニング出場が667試合で途切れた。終盤は三塁手として出場する機会も増加。打率.236とキャリアワーストに終わった。
■今季は木村がFA移籍1年で戦力外に
【2015年】※国内、海外FAを含む
脇谷亮太内野手(西武)→巨人
高橋聡文投手(中日)→阪神
松田宣浩内野手(ソフトバンク)→残留
今江敏晃内野手(ロッテ)→楽天
田中浩康内野手(ヤクルト)→残留
木村昇吾内野手(広島)→西武
昨年度はFA宣言した6選手のうち、4選手が移籍を決断。2選手が残留となった。
脇谷亮太は西武から古巣・巨人に3年ぶりに復帰となったが前年の118試合から54試合に出場を減らし、打率も.157に終わった。一方、中日から阪神へ移籍した高橋聡文はシーズンを通して救援陣を支え、54登板で3勝1敗20ホールド、防御率3.76の成績を収めた。ロッテから楽天への移籍を決断した今江敏晃は89試合の出場で打率.281、3本塁打、23打点で移籍1年目を終えている。また、広島から西武に移籍した木村昇吾は負傷により38試合の出場にとどまり、オフに戦力外通告を受けた。
海外FA権の行使でメジャー移籍も見据えた松田宣浩はソフトバンク残留を決断。V3を目指したチームで今季143試合に出場したものの、打率.259、27本塁打、85打点といずれも昨季の成績を下回った。田中浩康もFA宣言後に残留を表明。しかし31試合の出場にとどまり、オフに戦力外通告を受けている。