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侍ジャパン

【U18W杯戦士の今・前編】「自信を持てば結果はついてくる」上野翔太郎(中京大中京→駒澤大2年)

清宮幸太郎内野手(早実3年)が主将を務め悲願のU-18W杯初優勝を狙う侍ジャパンU-18代表。これから2回にわたって、2015年の前回日本大会で惜しくも銀メダルに終わりながらも、それを糧に大学野球で飛躍を狙っている2投手の今を取材した。前編となる今回は、W杯3試合で18イニングを無失点に抑える好投を見せた上野翔太郎(中京大中京→駒澤大2年)に話を聞いた。

上野翔太郎(うえの・しょうたろう)・・・1997年6月30日生まれ。愛知県出身。174cm76kg。右投右打。


★急成長を遂げた最後の夏

それは中京大中京OBに言わせれば「突然変異」とまで言えるものだった。最上級生となってからエースではあったが、上野本人も3年夏(2015年)の愛知大会準決勝・東邦戦から感覚を掴んだと証言する。

「もともと東邦には相性が良かったんです。その時も立ち上がりが良くて、投げているうちにだんだん体重移動というか、“こういう体の使い方をしたらこのボールが行く”という感覚が掴めてきたんです」

準決勝・決勝ともに好投し甲子園出場を決めると、聖地でその輝きはさらに増した。3試合を投げ自責点わずか3点という投球でチームを16強に導き、中学時代にバッテリーを組んでいた関東一・鈴木大智(現在は駒澤大で再び同期)との親友対決も話題を呼んだ。

当時の最速は144km/hで常時140km/h前後のストレートではあったが、伸び上がるようなキレの球で多くの高校野球ファンを魅了した。

当然のように、侍ジャパンU-18代表にも招集がかかったが、当初は気後れする部分もあったという。

「部長さんからメンバーに入ったことを教えていただいて本当にびっくりしました。ビックネームが揃っていたので、自分は場違いなんじゃないのか?そういう中に入って、最初はやっぱり緊張しました」

だが、徐々に馴染んでいくと上野は実力を発揮する。開幕戦のブラジル戦で6回無失点、韓国戦で7回無失点と先発して好投。アメリカとの決勝戦でも5回から救援登板すると1安打無失点の快投を見せて逆転を待ったが惜しくも届かずに準優勝に終わった。それでも3試合18イニングを無失点に抑え、最優秀防御率のタイトルを獲得。準優勝の立役者の1人となった。

★「あの時は上手く行き過ぎました」

周囲の熱狂をよそに上野自身は冷静だった。高橋純平(県岐阜商/ソフトバンク)やオコエ瑠偉(関東一/楽天)がプロ入りする中、東都大学野球リーグの駒澤大へ進学を決めた。

「僕は、ずっと騒がれていたわけではありませんでした。だから、夏にたまたま甲子園に出て、侍ジャパンでも全て上手く行き過ぎたんです。それでプロに入ったとしても、この先何年もあの球が投げ続けられるのか?まだ高校生の体と感覚なので、しっかり4年間で自分を磨いていけたらと思いました」

W杯時から肩を痛めていたため、駒澤大入学当初は出遅れていたが、2年生となった今春は過去最多の4試合に登板。1部復帰を目指す駒澤大にとっては、台頭が期待される選手の1人となっている。

そんな上野にW杯の経験で生きていることを聞いた。

「あの時は、力を入れていなくても、力を入れた時と同じ球が投げられましたし、キャッチャーが構えたところにピタッと投げられました。絶対的な自信の中で投げた方が結果もついてくるというのをそこで学習しました」

9月上旬から始まる秋季リーグでは「先発を任せられるような投手になりたいです」と意気込む。今はその自信を掴むため、日々の練習や試合の中で試行錯誤する日々だ。

それを掴みさえすれば、あの時の輝きを超える栄光が掴めるかもしれない。高校で世界を相手に堂々と立ち向かった上野にはその手応えが確かにある。

★上野翔太郎から現侍ジャパンU-18代表選手へのメッセージ

「日本のカラーを出して、自分たちが負けたアメリカに勝って優勝して欲しいです」

文・写真=高木遊