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日米の頂上決戦を盛り上げる様々な仕掛け&イベントとは?


今回は白熱の戦いの裏で頂上決戦を盛り上げるために日米ではどのような仕掛けやイベントが行われているのかに注目し、紹介してみたいと思う。

■カブス本拠地ではチケット22万円超の高騰も

 海の向こうメジャーリーグでは1908年以来のワールドシリーズ制覇を目指すシカゴ・カブスと1948年以来の制覇を目指すクリーブランド・インディアンスによる熾烈な戦いが行われている。

 長らく優勝から遠ざかっているチーム同士の対戦ということもあり、全米だけでなく世界中が注目するカードとなっている。日本でも1984年の日本一達成から一番遠ざかっている広島と2006年以来の日本一を目指す北海道日本ハムの対戦が行われ、最後まで全く予測ができない白熱の展開を制した北海道日本ハムが10年ぶりとなる日本一のビッグタイトルを手にした。

 今回は白熱の戦いの裏で頂上決戦を盛り上げるために日米ではどのような仕掛けやイベントが行われているのかに注目し、紹介してみたいと思う。

 まず始めにチケット購入時から日米では違いがある。日本ハムの公式ページにアクセスすると、「SMBC日本シリーズ2016は日本野球機構(NPB)主催のため、北海道日本ハムファイターズでのチケット取り扱いはございません」という案内が大きく表示されている。一方でワールドシリーズ進出を果たしたクリーブランド・インディアンスは公式ページのチケット欄から購入できる仕組みとなっている。購入時から日米での差が見受けられる。

 チケットの売れ行きが良く、ほとんどの席がほぼ売り切れ状態となり、二次流通販売では第1戦のプログレッシブ・フィールドの立見席でも最低700ドル(約7万2000円)で販売されているという報道が出ていた。さらにチケット高騰が目立っていたのは、カブスのリグレー・フィールドがホームとなる第3戦であった。その日のチケットは最低でも2200ドル(約22万7000円)という価格で販売されていた。

■SNSでの盛り上げを促す様々な仕掛け

 開催地がギリギリまで分からないことから仕掛けはオンラインが多いのが一般的だろう。MLBではON-FIELD WORLD SERIES SWEEPSTAKESと題したキャンペーンを行っている。名前、電話番号、生年月日などの個人情報を入力し、抽選でワールドシリーズ優勝を遂げた選手たちへのTシャツと帽子をグラウンド上で配布する権利を勝ち取ることができる。倍率はとてつもないだろうが、非常に夢のある機会になるはずだ。

 一方の日本シリーズでは、メインスポンサーであるSMBCデビット(三井住友銀行)とのタイアップキャンペーンとしてSNSを活用したものを取り入れている。Twitterでハッシュタグ「#SMBCデビット応援団」「#私のベストナイン」の2つを付けて、行きたい国、住みたい街、コンビニおにぎりのいずれかのベストナインをツイートし、抽選で30名に公式試合球がプレゼントされる。

 SNSでの盛り上げを促す仕掛けは他にもあり、日本シリーズの特設ページでは「#カープ日本一応援」、「#ファイターズ日本一応援」というツイートでの応援を求めていた。さらに国内全体が注目するようなイベントでは、始球式など試合前の催しにもいつも以上に話題を集める。日本シリーズの第1・2戦ではスポンサーの意向もあってかオリンピック4連覇を果たした伊調馨選手とパラリンピック銅メダリストの上地結衣選手だった。北海道での第3戦以降は富良野野球チーム所属の少年、熊本出身である車いすラグビー銅メダルの乗松聖矢選手、そしてファイターズジュニアチームメンバーの一員と地元や被災地に考慮した選出となっていた。

 さらには球場内だけではなく、各地での盛り上げを促すため日本ハムは2軍施設のある鎌ヶ谷スタジアム、新千歳空港、エルフィンパーク交流広場、旭川市観光物産情報センターなどでもパブリックビューイングを開催した。

■米国ではチームOBや地元を大切にする傾向

 一方ワールドシリーズ初戦では、映画「メジャーリーグ」で主演を務めたチャーリー・シーンを求める声が多く、シカゴでの試合ではスティーブ・バートマン(注:2003年マーリンズとのナショナルシリーズチャンピオンシリーズ第6戦で勝ち越しまであと4アウトだったが、ファウルボールを捕球してしまいそのあとチームは逆転負けを喫したため戦犯として扱われた)を推す声もあった。実際にはクリーブランドの始球式を務めたのはOBであり、1995年ワールドシリーズ進出メンバーの二人であるケニー・ロフトンとカルロス・バイエガだった。米国は日頃からチームのOBや地元というのをとても大切にする傾向がある。

 それは彼らが引退をしてからも地域や球団との関わりを大切にしているからかもしれない。ワールドシリーズのようなビッグイベントの前にはOB、そしてコミッショナーが地域の慈善団体を訪れ、次世代への野球普及の活動を行うことが多い。今回もインディアンスのホームグラウンドのプログレッシブ・フィールドから10分ほど離れた会場でイベントを開催した。

 そして夜にはGALAと呼ばれる前夜祭のようなイベントが行われ、両球団のOBやリーグ関係者、そして招待されたVIPなどが一同に集う。このようなビッグイベント前は、関係者にとって一種の同窓会になるようだ。

 ワールドシリーズ、そして日本シリーズでは試合が進むにつれて、さまざまな仕掛けなどが行われているが、日米それぞれで多くの人々を巻き込む一大イベントであることがうかがえる。毎年二つの土地しか開催することが許されない戦いをどう盛り上げるのか、グラウンド外の仕掛けにも注目していきたい。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」新川諒●文

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