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小兵ながら最速152km/h!侍ジャパン大学代表の東克樹(立命館大)が世界の頂点目指す

★小さな本格派左腕

 街中にいてもさほど目立たなそうな小さな体に大きなパワーを蓄えられている。今年のドラフト上位候補にも名前の挙がる東克樹(立命館大)は、身長170cmの小柄な体から最速152km/hを投げる本格派左腕だ。
 第29回ユニバーシアード競技大会(台湾・台北市/野球は8月20日開幕)では、2大会連続金メダルを狙う侍ジャパン大学代表のエースとして活躍が期待されている。
 そんな東の成長や豪速球を生み出した要因を探った。

1995年11月29日生まれ。三重クラブ少年団(軟式)→四日市トップエースボーイズ(硬式)→愛工大名電→立命館大4年。170cm74kg、左投左打

★未来を見据えた進路選択

 小学1年の時に野球を始めた東。中学時代には、左腕から130km/hほどのストレートを投げるまでになり、野茂英雄氏が総監督を務める『JUNIOR ALL JAPAN』(※)に選出。米国遠征を経験した。
※中学硬式野球のボーイズリーグとヤングリーグの両連盟から精鋭が選抜されるチーム

 高校は多くの誘いの中から愛工大名電を選んだ。高校野球ファンなら誰もが知る強豪だが全体練習はさほど多くはなかった。
「寮の食事の時間があって、それは変えられないので、平日やったら絶対6時か7時には終わっていましたね。夕食後から点呼までは自主練習をする時もあれば休む時もある形でした」
 この自主性を重んじる空気が東の肌に合い、成長を続けた。2年時は登板こそなかったが、1学年上の濱田達郎(現中日)の控え投手として春夏連続で甲子園に出場し、3年夏にはエースとして甲子園に帰ってきた。

 そして大学進学時も複数誘いがあったが、「関東の強豪では埋もれてしまうかもしれない。だったら、早くから出られた方がプロや社会人のチームにも目に留まる」と関西学生リーグの立命館大を選んだ。実は愛工大名電進学の際も「少人数で試合に出やすい」と考えたからだった。周囲の意見に流され「なんとなく」進学先を選んでしまう選手も少なくない中で、自らの実力や未来を考えて進路を決めてきた。

★トレーナーも驚く体

 出場機会も考えての進学だったが、2年までに挙げた勝利はわずかに3勝のみ。2学年上の桜井俊貴(巨人)と西川大地(日本新薬)の両右腕の影に隠れ、2年夏には左ヒジの炎症を起こし、秋は登板なしに終わった。当時、既に146km/hを記録していたが、球速低下を覚悟していた。
 だが、この時期にリハビリやケアを目的としたトレーニングを積むことで球速が上がっていった。そして3年春の京都大戦でノーヒットノーランを達成すると、今年の関西大戦でもリーグ史上初となる2度目のノーヒットノーランを達成した。球速も152km/hを計測するまでになり堂々の侍ジャパン入りとなった。
 怪我の癒えた今もケアやインナーを中心としたトレーニングは欠かさないという東。
 そうして培われた筋肉が全身を大きく使った迫力のあるフォームを可能にしているのだという。また「筋肉の質が良い」ともよく言われるという。
 代表のトレーナーを務める佐々木さはら氏(日本体育大助教)も東の筋肉の質の良さに舌を巻く。
「大学代表になるような選手は総じて筋肉が柔らかいのですが、東はその中でも優れています。普段は柔らかいのですが、力を出す時にはグッと硬くなることもできる。また肩を上げた時の関節の引っかかりもない。だから、疲労の回復もすごく早いですね」
 天性のものもあるだろうが、東の地道な取り組みがそれをさらに進化させていることは間違いない。
 

★変幻自在に世界の頂点へ

 進化は肉体だけに留まらない。7月に日米大学野球では大学米国代表がカーブに弱いと見るや、国内でのストレートで押す投球からモデルチェンジ。カーブを多く使った投球で、MLB予備軍を相手に2試合に先発し計11イニングを無失点に抑え、大会最優秀投手に選出された。
 20日に開幕するユニバーシアードでも、エースとして大事な試合の先発を任されることが確実だ。
「日米大学野球で自信がついたので、ユニバーシアードでも台湾ら強い国の打者を抑えることで、さらに自信をつけたいです。4年生なので背中で示していければなと思います」と意気揚々とした表情で力強く語った。
 たくましくしなやかな肉体と柔軟な思考で、東が侍ジャパン大学代表を世界一に導きたい。

文・写真=高木遊