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「ジャクソンを“壊した”のは西川」 日ハム栗山監督は「用兵が素晴らしかった」


日本ハムが29日の日本シリーズ第6戦で広島に10-4で勝利し、4勝2敗で10年ぶりの日本一に輝いた。第1、2戦と敵地で2連敗しながら、第3戦から本拠地で3連勝を飾ると、そのままの勢いで第6戦も勝利。栗山英樹監督は2012年に就任してから初の日本シリーズ制覇となった。

■8回に4点をもぎ取った日ハム、「実際には西川がジャクソンを牽制していた」

 日本ハムが29日の日本シリーズ第6戦で広島に10-4で勝利し、4勝2敗で10年ぶりの日本一に輝いた。第1、2戦と敵地で2連敗しながら、第3戦から本拠地で3連勝を飾ると、そのままの勢いで第6戦も勝利。栗山英樹監督は2012年に就任してから初の日本シリーズ制覇となった。

 最後の一戦で大きなポイントとなったのは8回の攻防。広島は6戦連続登板となるジャクソンをマウンドに送り込んだが、日本ハムは2死から西川が右前打で出塁した。中島卓、岡も連打で満塁のチャンスを作ると、中田はストレートの押し出し四球で勝ち越し。続くピッチャーのバースがセンター前に値千金のタイムリーを放ち、レアードが左中間へ満塁本塁打。ジャクソンは6失点で失意の降板となった。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「ジャクソンを“壊した”のは西川でしたね」と指摘。2死からヒットで出塁し、一塁上からジャクソンにプレッシャーをかけ続けたリードオフマンの働きを絶賛した。

「2アウトから西川がヒットで出て、ジャクソンは執拗に一塁に牽制していました。ホーム(打者)に集中させなかった。ジャクソンが西川を牽制しているように見えて、実際には西川がジャクソンを牽制していた。『行くぞ、行くぞ』と見せかけて行かない。逆を取られたようなモーションを見せて、結局はスタートしない。あれでジャクソンは『行くかもしれない』と思うけど、実際には行かなかった。結果として、中島にヒットを打たせるようなボール、いわゆる『棒球』を投げさせる形になりました」

■バースは3勝の活躍、「日本ハムは外国人ピッチャーが良いスパイスに」

 この試合、西川と中島の1、2番コンビは計11打席で9出塁。広島の投手陣を揺さぶり続けた。「そうなったら日ハムのペース。西川と中島、1、2番が広島を狂わせた。これだけ結果(9出塁)が出てしまうと、日本ハムが先手を取れるのは当たり前ですね」。スピードあふれる2人の存在は、広島撃破の大きな鍵となった。

 レギュラーシーズンに続いて、このシリーズで冴え渡ったのは、栗山監督の采配だ。野口氏は「栗山監督の用兵がすべて決まった。作戦はオーソドックスだけど、選手が出たら必ずと言っていいほど活躍する。用兵という部分が素晴らしかった」と脱帽する。

 中でも、最も期待に応えたのはバースだろう。中継ぎとして6試合中5試合に登板。第3、5、6戦で勝利投手となり、合計6回2/3を投げて無失点だった。投手として3勝0敗、防御率0.00。さらに、第6戦では8回の中田の決勝押し出し四球の後に打席に入り、センター前にタイムリーを放った。ジャクソンに重圧をかけるため、大谷をネクストバッターズサークルに送りながら、結局はバースをそのまま打席に立たせた栗山監督。タイムリーという最高の結果が生まれたが、バースの投球に対する信頼感があったからこそ、打席に立たせて8回裏も続投という決断を下せた。

「バースの存在は大きかったですね。本当にいいピッチングでした。先発ではあれほど球速は出ませんが、中継ぎだと素晴らしいキレがある。あれだけ腕を振って投げてくるツーシームは打ちにくい。リリーフのポジションの方が合っているのだと思います。ショートイニングを全力で投げる、という形の方が合っている。それでいて、先発もできるからイニング跨ぎでもいける。第5戦で好投したメンドーサも含めて、日本ハムは外国人ピッチャーが良いスパイスになりました」

■広島は「『打ちたい、打ちたい』と気持ちが先走っていた」

 野口氏は日本ハムの強みとなった部分についてこう評価した上で、広島の継投についても、「しょうがない部分はあります」と理解を示す。

「広島は先発の野村を引っ張りすぎていませんし、ピッチャーの起用に関してはああいう形になるだろうという印象でした。第3戦以降の結果を見ても、後ろの3枚(今村、ジャクソン、中崎)は信用して送り出した結果。勝ちパターンのセットアッパーがやられてしまったのは、しょうがない部分はあります」

 それよりも大きな問題は、打線にあったと指摘。「3戦目以降に打線を封じ込まれたのが一番の要因だった」という。

「第6戦も、4点のうち2点は相手の暴投とエラーでした。丸は良かったですし、田中と菊池がシリーズを通じて元気がなかった。エルドレッド、新井、松山の3人も機能しなかった。レギュラーシーズンではあれだけ粘って逆転勝ちしてきた広島でしたけど、打線が機能しなければ厳しい。みんなが『打ちたい、打ちたい』と気持ちが先走ってしまっていた。第6戦は特にそんな感じでした」

 日本シリーズでは日本ハムの野球に屈したとは言え、2位巨人に17.5ゲーム差をつけてセ・リーグを制した広島の実力は本物。33年ぶりの日本一へ、課題を手にして、来シーズンに挑むことになる。

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