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プロ野球

第1戦:ヤクルトが山本由伸を攻略 第2戦:オリックスの継投策 <データで振り返る日本シリーズ第1戦・第2戦>

【写真提供:共同通信】

■長打で山本由伸を攻略

 ヤクルトとオリックスによる2年連続となる顔合わせとなった日本シリーズは、2度の対戦を経てヤクルトの1勝1分け。多くのメディアで予想されたように、2戦とも競った展開で見ごたえのあるシリーズとなっている。第1戦は山本由伸と小川泰弘によるエース対決となったが、5対3でヤクルトが勝利。2年連続の4冠(最多勝、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振)投手の山本がまさかの5回途中4失点で負傷降板となり、オリックスとしては計算が外れる結果となった。

 表1は山本がこの日安打を許した打席データだが、安打4本のうち3本が長打で、本塁打が2本。今季1度も複数本塁打を許していなかっただけに、そのインパクトは大きかった。3回の塩見泰隆の一発は2ストライクと追い込まれてからだったが、それ以外の3本の安打は早いカウントから打ちに行って仕留めたもので、積極性がよく表れている。

 複数の決め球を持つ山本だが、打者として最も気になるのが140キロ台の高速フォークである。表2は球種別の打数割合と被打率を表したデータで、この日も実際に5打数0安打とヒットを許していない。追い込まれてしまうとこの厄介なフォークを頭に入れながら150キロ台のストレートやカットボール、カーブなどに対処せざるを得ないだけに、追い込まれる前の勝負は対山本という観点ではセオリーに則ったものだろう。少ないチャンスで仕留め切った塩見、オスナのバッティングは見事なものだった。

■9回までは完璧なリレー

 エースでシリーズ初戦を落としたオリックスは、2戦目の先発に山﨑福也を抜てき。山本に次ぐ11勝を挙げた宮城大弥の先発も予想された中で、神宮のマウンドでの豊富な登板経験持つ中堅左腕を送り出す。その山﨑福は4回まで投げて5奪三振無失点と安定した内容でヤクルト打線を封じることに成功。バットを握っても先制タイムリーを放つなど投打にわたる活躍で、この試合の前半戦のMVPだった。球数も68球だっただけに5回のマウンドに上がることも考えられたが、オリックスベンチはあっさりと2番手の山﨑颯一郎にスイッチする。

 これは恐らく試合前からのプラン通りで、山﨑福の担当はヤクルト打線の2巡り目まで、と決めていたものと考えられる。表3を見てもらうと、今季のデータでも3巡り目以降は成績が下降傾向にあり、中盤以降も引っ張ると失点するリスクが大きい。さらにブルペンには150キロのストレートを投げられるリリーフが潤沢で、惜しみなくつぎ込んでいける環境も整っていたことから山﨑福の早期降板の決断につながった。

 オリックスベンチの思惑通りに試合は進み、山﨑颯一郎、宇田川優希、ワゲスパックと無失点でリレー。9回には新たにストッパーを務める阿部翔太をマウンドに送り出し、シリーズ初白星をほぼ手中に収めつつあった。しかし、阿部が痛恨の同点3ランを献上し、その後も両者得点を奪えず5時間を超える熱戦は引き分けで幕を閉じた。表4を見てもらうと、阿部がレギュラーシーズンで許した本塁打は柳田悠岐に許した1本だけで、9イニングあたりの被本塁打率は山本を超える0.20とチームで最も低い。チームで最も本塁打を打たれない投手が、土壇場でシーズン4本塁打の内山壮真に一発を許してしまった格好となる。

■4番対決

 このシリーズで注目されるポイントとして、両軍の4番の働きがある。令和初の三冠王である村上宗隆と侍ジャパン常連の吉田正尚はタイプこそ違えど打線の中心選手であり、バッテリーがどう封じることができるかがチームの勝敗を左右する。村上は初戦でソロ本塁打を放ったものの、走者を置いた打席などでは快音は響かず。吉田は敬遠2つを含む5四球とあまり勝負してもらえておらず、ここまで1安打に留まる状況となっている。表6を見ると、両者とも徹底的に内角を攻められる場面が多く見られ、特に村上は投球の5割以上が内角に集まっている。NPBの平均的な打者が内角に投じられる割合が20%台後半という数字なので、かなりの頻度で懐を突かれていることになる。

 「内角を突かないと強打者は抑えられない」とよく言われているが、それを実行されているのが村上と吉田で、2戦を終えた段階では目論見はある程度成功している。ただその厳しい攻めを乗り越えてきたからこそスラッガーなのであり、内角のボールを完璧に捉えるシーンがいつ出ても不思議ではない。表7を見ていただくと、特に村上はレギュラーシーズンでは内角で22本塁打を放っており、打率も3割を超える。舞台は京セラドームに変わる10/25からの3連戦、4番打者の懐をめぐる攻防に是非注目してほしい。

※データは2022年10月24日現在

文:データスタジアム株式会社