- 高校野球
2022.10.19 12:55
甲子園11勝と満塁ホームラン 最も名前が知られた高校球界の主役 山田陽翔(近江)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
今年の高校球児の中で、一番、名前が知られているだろう。まさしくスターだった。甲子園の最後の試合。下関国際戦で最後のバッターになるところも役者たるところか。
エースで4番でキャプテン。
琵琶湖の水の色のユニフォームを着た昔ながらの高校球児。
彼がどれだけ調子が良くて貢献できたか。近江高校でも、侍ジャパンU-18代表でも主将。最もチームの命運を背負っていた選手だ。
近江を甲子園3季連続ベスト4まで引き上げたことは、高校球界の主人公だったことの証明でもある。
投手として甲子園11勝は駒大苫小牧・田中、早実・斎藤らを抜き歴代5位タイ。奪三振数としては、ダルビッシュ有(東北)の奪三振は87個。それを大きく上回る甲子園通算115奪三振となった。
2年夏には甲子園のバックスクリーンにホームランを叩き込んでいて、打者としての評価も高い。
体操、水泳、サッカーなど様々なスポーツに親しむ保育園に通っていて体力強化に努めたとか。幼少期から運動神経も鍛えていて、今の万能系に寄与しているだろう。
中学のときに既に142キロを出した。中1でカル・リプケン少年野球世界大会でU12代表に、中3ではイタリアで行われた世界少年野球大会で日本代表に選ばれた。
高校入学まもなく、1年生夏の独自大会で公式戦デビューする。21年の夏から躍動していた。甲子園は2年生エースとしてベスト4まで進む。2回戦で大阪桐蔭を破った試合で全国区に名乗りを上げた。
だが、その直後に右ヒジを疲労骨折をしていたという。2年秋は登板なし、チームも近畿大会準々決勝で敗退。センバツを逃したかに見えたが、代替出場の幸運がめぐって決勝まで勝ちあがった。最後の3年夏の甲子園は準決勝までの5試合すべてに先発。38イニングを投げた。各試合で最速148キロをマークしている。
また、打っては20打数8安打9打点。3回戦海星戦では満塁ホームランを放って勝利を確定付けている。この一打、投手としての読みも加味されている。
「前の打席でスライダーで三振していて、同じ球で攻めてくる。それが2球、ボールになったのでストレートにヤマをはった」
そして付け加える。
「仲間が用意してくれたチャンス。僕自身の力ではあんなホームランは打てません。甲子園が力を貸してくれました」
準決勝の下関国際戦、6回2/3を投げて5失点。ここで力尽きる。
「コンディション的には問題はなかった」
優勝できず道半ばで敗退も言い訳しない潔さ悪くない。
主将として涙をこらえ「素晴らしい成績だから、胸を張ろう」と伝えたという。
マウンドでもバッターボックスでも負けん気の表情を見せる。どれほど、やんちゃなんだ、と想像するが、インタビューを聞くと謙虚で周りへの感謝を欠かさない。そんなところが周囲を引き付ける。
投手としてのスカウト評価は早い段階でのデビューを予感させる。
「ほんとプロ向き。野球をよく知っていますし、投球時はギアの入れ替えもできる器用さとタフさも兼ね備えています。ツーシーム、スライダーと三振が取れる球種が豊富。変化球は同じ軌道で来て、違う変化をする。今、ウエスタン・リーグの試合に出しても勝てる。プロでも、恐らく早い時期に1軍に出てくる投手です。」
そして、抑えに適性があるという声が多い。
「短いイニングなら、連投が可能なタイプ。気持ちの強い投手。抑えで力を出すでしょう。ピンチで抑えるのが一番の魅力。1人で投げ抜いて勝利に導くという、見る者を引きつける魅力もある」
侍ジャパンU-18代表でクローザーを任される。ここぞという場面で雰囲気をまとめられる役が似合うのだ。
「主役になる選手というか、あらためてスターだなといつも見ています」
ユニフォームの色は水色から何色になるのだろうか。