- 高校野球
2022.10.07 16:20
奄美大島からプロ球界へ 自然の中で培養されたダイナミック左腕 大野稼頭央(大島高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
名前から、足が速く守備範囲も広い内野手、を想像するがオーバーハンドのサウスポーだから、思い込みはしない方がいい。
父親は元西武ライオンズ等で活躍した松井稼頭央のファンだった。だが、生まれたばかりでは左利きまではわからなかったのだろう。大野は島の大エースへの道を切り拓いていって146キロのストレートを投げる九州を代表するピッチャーになった。
奄美大島で生を受けた大野は、小学校1年生でソフトボールに触れる。低学年の頃は体操教室に通ったそうだ。バック宙、バック転はお手のものらしい。柔軟性は今も生きているだろう。
島では余計な遊びはせずに、飛び跳ねるに限る。走り回って遊んだ、というから体力は自然と育まれた。昨年、センバツを確定させた秋の県大会と九州大会の準々決勝までの9試合89イニングを一人で投げぬいている。
ちなみに鹿児島を制した離島の高校は初。
九州大会出場は露出が増える好循環で、しかも興味深い試合が続いた。
初戦の大分舞鶴とは土砂降りの雨中戦で延長10回引き分け。再戦に再び先発して160球を要して完投勝ち。次の興南には技巧のピッチングで完封勝利。だが、ここで1週間500球間近の投球数となりセンターの守備位置に回る。九州国際大付属に敗れるが決勝までコマを進めた。
大会ナンバー1投手という評価もあり、上位進出を目論むセンバツ。だが初戦で7四球を出して自滅。0対8と大敗して知らなかった世の広さを知った。ここから夏に向け、新たな挑戦を始める。
夏の鹿児島大会も順調に決勝まで進む。最後の相手は鹿児島実。実は大野とキャッチャー西田は中学時代に誘われていたそうだ。
そこは西田が「一緒にバッテリーを組んで島から甲子園に行こう」と鹿実入りを希望していた大野を押しとどめたという。
でも、夢のようにいかないことだってある。甲子園に行ったのは鹿実だった。
しかし、センバツも夏も、負けたことがより大野の糧になる。離島育ちのアドバンテージをスカウトは見抜くだろう。精神的な成長もプロには不可欠だ。
最後の県大会は全6試合49イニングを一人で投げぬいた。64三振を奪っている。
スカウトの評は投手としての高い総合力を買っている。
「ストレートの質は年月を経るごとに上がっている。その真っすぐで空振りが取れるのがいい。スライダーもチェンジアップもキレているし、タイミングを外すスローカーブも使える。
全身を目いっぱい使うダイナミックなフォーム。華奢な体だが柔軟性を感じる。力がついてくれば大化けするはずです」
遠投120メートル、握力72キロとポテンシャルは万全。
父も大島高校野球部の出身だ。名前に掛けた父子の夢が叶う時が近づいている。