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川﨑宗則、ティモンディ高岸&前田に聞く、「野球愛」と「野球がつなぐ未来」

 夏本番の8月9、10日の六本木ヒルズアリーナで、テレビ朝日主催「SUMMER STATION 2022 〜野球がつなぐ未来〜」が開催され、スペシャルトークイベントに川﨑宗則選手、お笑いコンビ・ティモンディの高岸宏行さんと前田祐太さん登壇した。イベント終了後、二組に改めて話を聞いた。

■川崎宗則「自分の物語を自分が楽しむ」

——夏休みのトークイベント。非常に充実した、面白い内容のお話をたくさん聞けました。コロナ禍が長く続くなかで会場にお客さんを入れてのリアルイベントというものも少なくなったと思いますが?

川﨑宗則(敬称略、以下川﨑) だからこそ、うれしかったですね。リモートでのイベントをしたりもしましたけど、リアルだとやっぱり表情を直接見ることができますからね。まだみなさんマスクは付けていますけど、実際に子どもたちと会って、同じ空間で野球の話をできたことはよかったと思いますし、嬉しいですね。個人的には、お父さん、お母さんの方の反応が気になったかな。僕自身、野球を始めたばかりの小学3年の息子がいるので、親の立場としていろいろ悩ましい部分はわかりますから。でもホント、今日は試合がなくて良かった(笑)。平日だったので出演できました!

——トークの中で「グラブの顔を見る」、「グラブと目と目を合わせる」と言ったように、野球道具に「まずは慣れることが大事」という話が印象的でした。

川﨑 そういうところっていうのは、案外知らないまま、重要視しないまま育っている野球少年や少女が多いと思う。指導者も、投げ方とか捕り方、打ち方を教えようとするんですけど、その前に道具に慣れることが大前提。道具がないと野球はできないですからね。そしてその道具っていうのは、親に買ってもらったものだと思うので、その感謝の心も持って欲しい。

——川﨑さんが最初に野球のグローブを買ってもらったのはいつ頃か覚えていますか?

川﨑 僕は小学3年の時でしたね。親父にスポーツショップに連れていってもらって買ってもらったのは今でも覚えていますね。SSKでした。新しいグラブっていうのはテンションが上がりますし、これから野球を始める子どもたち、もう始めている子どもたちも、まずは道具に対してしっかりと愛情を注いで欲しいですね。

——野球ではイチロー選手に憧れながら、中学入学時にバスケ部に入部しようとした話やバンド活動をしていた話など、面白いエピソードを聞くこともできました。

川﨑 そうですね(笑)。イチローとジローでね(笑)。僕はベースで、GLAYとかブルーハーツとかの曲をやってましたね。今振り返っても、中学時代は自由に過ごして、自分がやりたいことを楽しんでやっていたと思います。そういう環境を親が作ってくれたということもあると思います。強制されることはなかったですからね。中学でも部活では自分たちで考えて練習していましたから。

——そういう中学時代から鹿児島工高を経てプロ入りして、紆余曲折ありながらも41歳となった今も独立リーグで現役プレイヤーとして活躍されています。「継続できる」秘訣はどこにあるんでしょうか?

川﨑 どうでしょう。やっぱり、自分がご機嫌になれるルールを作ることですかね。周りにどう言われても自分が楽しめる、ご機嫌になれる方法を知っていればいい。これまでいろんな環境で、いろんなリーグで野球をやって来ましたけど、どこに行っても僕自身はすごく楽しいですし、常に新しい発見がありますし、自分の物語を自分が楽しんでいるという感覚ですね。

——最近は野球人口の減少も指摘されていますが、イベントの中で仰っていた「やらされる」ではなく「自分でやる」、「自分で決める」というのが、やはり大事になってくると思います。

川﨑 はい。特に野球はサインのあるスポーツですから、指示待ちになってしまいがちです。でもそれではいけない。大人になっても指示を待つだけでは仕事ができないですからね。だからではないですけど、僕自身は息子に「野球をやれ、野球をやってくれ」とは言わないんです。最初はサッカーをやっていたぐらいですし、今でも「野球じゃなくていいんじゃないの?バスケは?」って聞きますから(苦笑)。とにかく自分の好きなことをやって欲しい。「俺は野球が好きだけど、お前はどうなの?自分で決めなよ」というスタンスです。それに野球人口が減ってきたということは、他のスポーツで楽しめる子が増えたとも言えますし、それはすごくいいこと。野球だけ一人勝ちというのはいけない。いろんなスポーツをして、いろんなことを楽しむっていうことが、自分の人生を豊かにすることにつながると思います。

——なるほど。今回は「野球がつなぐ未来」というテーマがありましたけど、自分の人生を豊かにした中で生まれたものこそ「野球の未来につながる」ということですね。

川﨑 そうですね。僕も息子には野球の技術は教えない。ただ、それ以外のこと。人として大切なこと。人と人とのつながりの大切さは伝えます。将来を考えると、野球の技術よりも、そっちの方が大事。野球がうまくなることだけじゃなくて、試合に勝つということだけじゃなくて、仲間との助け合いだったり、相手へのリスペクトだったりが大事。ただ「野球がうまければいい、試合に勝てればいい、甲子園に行ければいい」というだけでは、人生がぜんぜん楽しいものにならないと思います。

——イベントにも多くの子どもたちが参加していましたが、改めて未来のある子どもたちに伝えたいことはありますか?

川﨑 やっぱり、自分で考える、自分で決断するということですね。間違ってもいいから。むしろ間違って欲しい。高岸くんは「やればできる!」って言いますけど、僕は「やればミスる!」って言いたい。どんどんミスって欲しい。そこがスタートだと思います。

■前田裕太「楽しんでやれば本職にも活きる」、高岸宏行「チャレンジャーたちを応援しています!」

——川﨑選手の興味深い話がたくさんありました。トークイベントを終えた今の感想はいかがですか?

高岸宏行(敬称略、以下高岸) 「楽しむ」ということが全部に通じていて、やっぱりそれが大事なんだな、と。プロ野球のトップを走り続けた川﨑選手があそこまで言うんだから「間違いないんだ」と再認識できましたし、「楽しむ」ことの大事さというものを改めて強く感じました。それとやっぱりライブの空間がいいですよね。聞いている方の反応がダイレクトに伝わりますし、子どもたちがキラキラした眼で川﨑選手を見ているのがすごく印象的でした。そういう子どもたちの姿を見て、僕自身も元気をもらえました。

前田裕太(敬称略、以下前田) 今日は子どもたちがメインのお客さんで親御さんがその隣におられるという形が多かったですけど、僕はどっちかというと子どもの立場で聞いていました。だから今日の川﨑さんの話を、もっと早くに聞いておきたかった。自分が小学生の頃に聞いておけばよかったなって。そういう「金言」がすごく多かったですね。

——特に印象に残っている話などはありますか?

高岸 思い込みすぎなくてもいいんだな、と。野球だけじゃないんだよっていうことは「確かにそうだな」って思いましたね。僕自身は高校時代に「プロにならなきゃダメ」って思っていたので、もっと楽に考えてやっていればって思いました。「試合に勝つ、甲子園に出る、プロになる」以外の道があって、それが大切なんだぞっていうのは、僕自身が「応援」して行くにあたって、すごく勉強になりしましたね。

前田 僕も野球をしてきた中で基礎練習はたくさんやったんですけど、川﨑さんが言っていた「グラブを見る」だとか「道具に慣れる」というのは、そこまで意識していなかった。でも言われてみると「確かに」と思いますし、理にもかなっている。そして野球以外のことにも通じることがたくさんあった。川﨑選手が野球以外の部分、勝つこと以外の部分にも楽しんで取り組んでいたということを聞いて、じゃあ僕らも「芸人の世界でお笑いをしっかりとやっていきたい」と思いながらも、別のことを楽しんでやるということは、自分たちが描いているゴールを遠ざけるものにはならない。“息抜き”とか、“趣味”も、本気で楽しんでやれば本職にも活きてくるんだろうなと思いました。

——「他人に言われてやる」のではなく「自分で決める」という言葉もありました。

高岸 そうですね。それもすごく印象的でしたね。僕自身、「応援」する上で、自分の少ない経験のすべてを伝えよう、すべてをぶつけようっていう気持ちがあったんですけど、「言わないアドバイス」というものもあるんだな、と思いましたね。いろんな舞台を経験してきた方は、やっぱり違うなって思いましたね。

前田 僕らの事務所には尊敬する先輩にサンドウィッチマンさんがいるんですけど、すごく仕事が楽しそうなんですよね。毎年、単独ライブをやられるんですけど、あれだけ忙しい毎日の中ででも新しいネタを作って、「ライブは1時間半がベストだ」って言ってるのに、自分たちが楽しくなっちゃって平気で3時間、4時間やっちゃうんですよね(笑)。それで終わった後に「腰、痛てェ〜」とか言ってるんですよね(笑)。それならやらなきゃいいのにって思うんですけど、やっぱり楽しいからやってる。川﨑さんの話を聞いても、「楽しいからできること、楽しいからできちゃうこと」を大事にしなくちゃいけないなって改めて思いました。

——もうすっかり世間に定着している高岸さんの「やればできる!」ですが、済美高校の校訓だと聞きましたが?

高岸 そうですね。校訓ですし、校歌の歌詞にも出てくるんです。「やればできるは魔法の合言葉」って。5行目ぐらい、いわばサビ。それが掃除の時間はエンドレスリピートで流れるんで(笑)、済美の生徒はみんな歌えますね。僕がいつから言い始めたかははっきりとはしていないんですけど、鼓舞のメッセージとして使っていたら、ありがたいことに「(やればできるを)言ってください!」って仰ってくれる方が増えてきたので、それに応えるために気持ちを込めて言わしてもらっています。

——野球を通じて、子どもたちに伝えたいこと、学んで欲しいことは?

前田 好きなものに一生懸命に取り組んだことっていう経験っていうのは、大人になってからでも必ず活きてくると思います。野球で例えプロになれなくても、例えば会社の中でも野球の会話をしたり、草野球をして友達ができたり、いろんな繋がりができる。いろんな形があると思いますけど、絶対に無駄にはならない。そしてどうせやるなら楽しくやった方がいいよって思います。

高岸 そうですね。やっぱり失敗を恐れないこと。「やればできる」は「やれば成長できる」という意味を込めています。チャレンジすれば必ず成長できる。失敗を恐れずに、いろんなものにどんどんチャレンジしていって欲しい。そういうチャレンジャーたちを僕は応援しています。僕はもう「応援していく人生」というのを決めているので、今日の話で自分の気持ちをさらに強く持つことができましたし、自信を持って、これからも「やればできる!」とエールを送っていきたいです!