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コロナ基金レポート~プロ野球選手会から社会に広がった支援の輪

プロ野球選手会による「コロナ基金」の支援は、先の見えないコロナ禍において社会が一歩前に踏み出すきっかけとなり、野球ファンをはじめとする多くの人々の賛同を得ることとなった。集まった寄付金は8.7億円を超え、なんと日本のクラウドファンディング史上最高額に。この記事では、その支援の経緯と成果についてレポートする。

スポーツ界の無力感を覆すアクション

新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年のプロ野球は開幕延期という思わぬ事態を迎えた。試合はおろか、緊急事態宣言下ではチームメイトとともに練習することもできず、当然ながらファンサービスもできない。

グラウンドに立てなくなった今、スポーツは無力なのか――?

医療従事者にマスクや防護服を届けたくても、情報が錯綜した状況下で、どうしたら現場のニーズに適切に応えることができるのかわからない。プロ野球選手をはじめ球界関係者の多くが「何かできることがあるはずだ」と思っても、その時点では自分たちの持つ力を発揮できずにいた。

そんな中、4月3日に「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(通称コロナ基金)がスタートする。クラウドファンディングサービスREADYFORと(公財)東京コミュニティー財団による助成基金で、1週間先が見えないコロナ禍において「必要なところへ適切な支援をいち早く届ける」ことを可能にした支援プロジェクトだった。

プロ野球選手のチャリティー活動を推進するNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションは、この基金を通じてプロ野球の力を発揮できると判断し、プロ野球選手会事務局に情報を共有。すると、炭谷銀仁朗選手会会長を中心として、すぐに支援に向けた準備が始まった。

基金に“追い風”をもたらした野球の力

4月8日、炭谷選手が自らコロナ基金に寄付したこと、12球団の会長たちと相談し、全プロ野球選手にこの基金について案内したことをSNSで発信。すると、森友哉選手や中村晃選手ら各球団の選手会長はもちろん、柳田悠岐選手や糸井嘉男選手、吉田正尚選手らも後に続いて同様のメッセージを発信し、ファンに寄付を呼び掛けた。

そして、支援の輪は、海の向こうでプレーするニューヨーク・ヤンキースの田中将大選手やシンシナティ・レッズの秋山翔吾選手にも広がった。

選手たちがSNSで発信すると、メディア各社がこの件について一斉に報道。その影響を受けて寄付件数も1500件近くまで達した。寄付者コメント欄には、コロナの終息とプロ野球の開幕を待ち望むファンからの熱いメッセージが数多く見受けられるようになった。

READYFORによれば、これはコロナ基金が実施されていた4カ月間で最も支援が集まった期間と一致するという。

プロジェクトの第一締め切りである7月2日、集まった金額は7億2646万5000円。クラウドファンディング史上国内最高を更新する記録的な寄付金額となった。支援者数は約2万人にも上った。

もちろん、これらの数字は選手会だけの手柄ではなく、野球とは関連のないところからコロナ基金に辿りついた方もたくさんいただろうし、日本中から集まった法人寄付が“国内史上最高”に導いた要素も大きい。

しかしながら、基金スタートの直後にいち早く支援を表明したこと、それがスポーツニュースだけでなく一般の報道枠で全国に拡散されたことは、少なからずこの基金に追い風をもたらしたと言っていいだろう。

成功体験を糧に、プロの使命を果たす

通常のクラウドファンディングでは、予めプロジェクトの目的や寄付金の使途が決まった上で資金を集めるが、コロナ基金ではREADYFORのプラットフォームを活用して寄付を集め、(公財)東京コミュニティー財団の助成制度を通じてコロナの感染拡大防止を行う組織に給付している。つまり、寄付を集めながら必要に応じて使途を決めていくという、緊急時に非常に適した方法だ。

すでに第1期から第5期(前期)までの5回の助成を終え、11月30日現在までの支援先は153団体。概算で、これまでに162万枚のマスクが給付され、27万点の医療物資を届けており、4.9万人の子どもの支援(ひとり親家庭の支援を含む)を行い、4.2万人に食糧支援を実施した。また、19か国語にわたる多言語対応の感染対策支援を実現し、61か所のシェルター(住居確保)も支援している。1月には第5期(後期)の助成も控えており、支援先や支援実績はさらに増える見込みだ。

このプロジェクトは7月2日以降も特設ページ(下記)で継続されており、寄付金額は日に日に増え、すでに8億7000万円に迫っている。

無観客ではあったものの、プロ野球はなんとか開幕を迎え、最終的にはファンの声援の中で日本シリーズまで終えることができた。しかし、第3波の広がりが懸念される今、プロ野球にできることもまだ残されているのではないだろうか。

一日も早く、満員のスタジアムでプロ野球を楽しめる日がやって来るように――。

コロナ基金で“国内史上最高”を打ち出した成功体験を糧として、これから選手一人一人がそれぞれのミッションをどう果たしていくのか。こんな時代だからこそ、グラウンドの外でも輝くことがさらに期待される。

◆「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」の詳しい成果についてはこちら

◆2020年12月31日まで、下記特設ページにてプロジェクトを継続中。

https://readyfor.jp/projects/covid19-relief-fund-02