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9回2死から蛭間拓哉の逆転弾で早大が劇的V!小宮山悟監督、早川隆久ともに涙【11/8 秋季東京六大学野球 早稲田大学vs慶應義塾大学】

 2020年11月8日、東京六大学秋季リーグの最終戦となる早慶戦2回戦が行われ、3対2と早大が慶大に逆転勝ちし10季ぶり46回目の優勝を果たした。

優勝を決めて喜ぶ早川ら選手たち

 早大は1点ビハインドの8回裏2死一、二塁で小宮山悟監督は前日に完投した主将の早川隆久(4年・木更津総合)を6番手として投入。レフトフライできっちりと抑えて最後の攻撃を迎えた。
 そして1点を追う9回表。8回から7番手として登板していた慶大のヤクルトドラフト1位右腕・木澤尚文(4年・慶應)に対し2死から熊田任洋(1年・東邦)がレフト前安打で出塁。ここで慶大・堀井哲也監督は左腕・生井惇己(2年・慶應)に最後の1アウトを託した。

スライダーが得意球の生井に対し、蛭間拓哉(2年・浦和学院)は外のストレートを待っていた。だが、甘く入ったスライダーに「体が勝手に反応しました」と振り抜くと打球がグングンと伸びていくとバックスクリーンにまで届く劇的な逆転本塁打。お祭り騒ぎとなるベンチとスタンド、そして蛭間は「ベンチ外の4年生がデータなども本当によく取ってくれていたので」と目頭を押さえ、本塁を踏んでベンチに戻ると次々に選手と抱きあった。
 このリードに「今のレベルでもプロで十分に通用する」とまで高評価する小宮山監督の期待を受けた早川が1安打こそ許すものの、最後は149キロのストレートで空振り三振に抑え、歓喜の輪の中心に。小宮山監督、早川ら多くの選手・スタッフが涙を流して優勝の喜びを分かち合った。
 
 小宮山監督は「長いこと野球に携わってきましたが、人生で一番感動する試合でした」と振り返り、蛭間に対しては「勝手には絶対に反応できない。そうした準備もしていたということでしょうから、本当に素晴らしいと感心しました」と称賛した。また、新型コロナ禍の中で全校が無事に全日程を終えて「細心の注意を払ってきました。全チームが勝者だと思います」と感染者を出さずにリーグ戦をやりきれたことに胸を撫で下ろした。
 早川は「苦しいこともたくさんありましたが、同学年の仲間たちと優勝を飾ることができて良かったです」と声を震えわせ「1週間くらいはこの余韻に浸っていたいです」と満面の笑みを浮かべた。

 慶大は24選手を起用する総力戦で挑んだが、あと一歩及ばず。堀井監督は「選手たちは力いっぱいプレーしてくれました。選手たちに申し訳ないです」と悔しさを噛み締め、瀬戸西純主将(4年・慶應)は「粘りやしぶとさが早稲田の方が上でした。後輩たちにはこれを糧にリベンジして欲しいです」と思いを託した。

 未曾有の混乱が続いた1年だったが、それを忘れさせ野球の面白さを再確認するような感動的な試合で令和2年度の東京六大学野球秋季リーグは幕を閉じた。

逆転本塁打にうずくまる生井

涙を浮かべて生還する蛭間を祝福する早川

■早稲田大vs慶應義塾大2回戦
早大 001 000 002=3
慶大 001 100 000=2
【早】今西、西垣、山下、徳山、柴田、○早川-岩本
【慶】森田、小林綾、長谷川、長谷部、増居、関根、木澤、●生井-福井
本塁打:早大・蛭間(9回2ラン)

◎慶大・木澤尚文(4年・慶應)
「昨日(敗戦投手となり)責任を果たせなかったので今日は全うしようと思っていましたが申し訳ない気持ちでいっぱいです。(1死を残しての降板について)監督が決めたことですし僕も生井なら抑えてくれると思っていました。力もありますし野球に対して凄く考えている投手。お前の責任じゃないよと伝えました」

「仲間のためにという言葉が自然と出るチームでした」と小宮山監督が語るようにチームとしての一体感が掴んだ天皇杯奪還だった

文・写真=高木遊