- 高校野球
2020.10.21 17:37
リリーフに適正あり 藤川球児のような火の玉ストレートがうなる 小林樹斗(智弁和歌山高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
今年のドラフト候補、高校生投手〝ビック4〟の一人。
藤川球児(阪神)のストレートのように、伸びのある球質が魅力。自粛期間明け以降、急速に評価を上げた。
「リリーフの方が向いている」と智弁和歌山の中谷監督の意向があって、2年の秋以降はリリーフ登板が多い。そのきっかけとなったのが昨年の夏の選手権、準々決勝星稜戦にあったかもしれない。
星稜の奥川(ヤクルト)先発に対して、智弁和歌山の先発は当時の3年生・エースの池田(立大)ではなくて、2年の小林だった。だが、雰囲気に飲まれ本来のピッチングが出来ずに失点。3回途中で降板した。その後、池田がマウンドに上がり、奥川と延長14回まで壮絶な投手戦を展開した。
エースとなった小林はこの時の経験を糧に努力してきたという。まずは奥川の動画を参考にフォームの改造に取り組んだ。冬場は筋力トレーニングに励む一方でピッチング練習も続けた。体重は数キロ増えて、柔軟性も出たという。フォームは力みが抜けて滑らかになった。そしてリリースポイントが安定し、制球力がついた。スピードへの執着を捨てて全てがいい結果に繋がった。
自粛期間明けには、力を抜いて6、7割の力で投げても140キロ台後半が常に出るようになった。その脱力系ストレートこそ、藤川が投げるホップするストレートなのだ。回転軸が地面と垂直の縦回転だから、引力に逆らってボールが伸びる。バットがボールの下をくぐるのはボールに浮力がある証拠でもある。
「球質が重そうで、本塁ベース付近のボールが強いという特徴がある」というスカウトがいるが、まさに藤川のストレートに近い印象なのだろう。
独自大会で自己最速を150、151と伸ばし、決勝で152キロまで更新した。
8月の交流戦は負けている中で6回裏に登板。8回2死で迎えた最後の打者、4番バッターに全球ストレート勝負。最後は151キロのストレートで空振り三振を奪った。3イニングを無失点に抑えたがゲームは敗戦となった。でも、表情は清々しかった。
交流試合のスカウト評だ。
「交流試合で抜けていたのは小林樹斗、中京大中京・高橋、明石商・中森。小林は短いイニングを力いっぱいいける。リリーフの適性を感じる。抑えになってから腕の振りが良く、マウンドでの堂々とした姿になった」
中継ぎ、抑えタイプで即戦力の可能性もある。
「低めにコントロールされて、四球の心配がない。三振を取りにいって取り切る。直球を投げるときと変化球を投げるときのフォームの見分けがつかない。プロ入り1年目の後半か、2年目から戦力になりそうな印象がある」
2年のセンバツ、準々決勝の明石商戦で、今年のドラフト候補の来田にサヨナラホームランを浴びている。甲子園では苦い記憶が多かったが、プロの舞台でリベンジしたい。