- 高校野球
2019.11.09 12:00
「効率性を考え抜かれたメニューで目指すは日本一!創部以来退部者ゼロの履正社女子硬式野球部に迫る!」【野球女子 vol.29】
今夏の甲子園で初優勝を果たした履正社。2014年に創部された女子野球部も2017年の女子硬式野球選抜大会で優勝、今年の全国高校女子野球大会でも準優勝と全国トップクラスの実力を持つ。今年の春に卒業した森淳奈と米田咲良が女子プロ野球(ともにレイア)に進むなど、着実に実績を積み上げている。
練習拠点となっている「履正社箕面スタジアム」は2016年5月に同じ学校法人の敷地内に造られた。黒土でナイター設備もあり、女子野球部では全国トップクラスの練習環境を誇っている。
創部当初からチームを率いるのは野球女子日本代表の指揮も執る橘田恵監督だ。兵庫・小野高では練習生として野球部に所属。仙台大でも硬式野球を続け、新人戦に出場した経験がある。その後、大学の野球部を退部して豪州女子野球リーグにも挑戦した異色の経歴の持ち主だ。
選手を引退後は花咲徳栄、南九州短期大、履正社医療スポーツ専門学校と指導者して渡り歩いた。「どうやったら効率よくできるかいつも考えているんです」と話しながら、橘田監督はホワイトボードにその日の練習メニューを記入していた。そこには練習内容だけでなく、時間の割り振りまでキッチリと書かれている。選手たちはそれに合わせて、テキパキと動いていた。
今夏の選手権は2年ぶりに決勝進出。作新学院との決勝でも2点のリードで最終回の守備を迎えた。しかし、二死満塁から2点適時打を浴びて、同点に追いつかれてしまう。さらに続く打者にもサヨナラ打を許して、惜しくも初優勝とはならなかった。
この時にマウンドに上がっていたのが2年生の廣瀬未夢。5回から登板して2回を無失点に抑えていたが、「緊張しすぎていました」と最終回はリードを守れず、追いつかれたところで無念の降板となった。
新チームではエースとなり、チームを牽引する立場になった。「この悔しさを生かして、来年は優勝するためにエースとしてチームを引っ張りたい」と翌年のリベンジに意気込んでいる。
今年のチームを「学年関係なく仲が良い」と話すのは主将の中阪麻優花(2年)。守備力の高さが光る二塁手で、1年夏からレギュラーを任されているチームの中心選手だ。この日の練習でもいいプレーが飛び出すと、選手、指導者問わず、ポジティブな言葉が飛んでいた。
明るい雰囲気で練習が行われているのも履正社の特徴だ。「野球が好きなままで卒業してほしい」という橘田監督の指導の成果もあり、創部してから退部した選手は誰もいない。学年を問わずに野球を楽しめる環境が履正社にはある。
男子が優勝した今夏の甲子園では準決勝と決勝の応援に駆けつけた。「レベルが高くて、細かいプレーがしっかりしていた」と、中阪は男子の全国制覇に刺激を受けた。
今年のチームの目標は「全てにおいて日本一」。実力だけでなく、練習内容、挨拶、ゴミ拾いといった普段の行動から日本一にふさわしいチーム作りを心掛けている。
男子は秋の近畿大会で4強入りし、来春のセンバツ出場を確実にした。男女アベックを飾るべく、チーム一丸となり、全国の頂点を目指す。
記事:馬場遼