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カナダの知られざる野球 ~後編~ 寒冷地ゆえのカナダ野球の課題とその実力【WORLD BASEBALL vol.20】

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 長い歴史をもつカナダ野球は、2004年限りでMLBモントリオール・エクスポズが、撤退するなど新世紀を迎えた後、苦難の時代を迎えるが、2010年代に入り復興の機運が高まっている。

 現在カナダには独自のプロリーグはない。国内のプロ球団はそれぞれ、メジャーリーグとその傘下のマイナーリーグ、あるいはアメリカに拠点を置く独立リーグに属している。

 1995年には、メジャー、マイナー、独立リーグ含めて12球団が活動していたのだが、現在では半分の6球団にまで落ち込んでいる。

 そのうち、4月の開幕から秋までの長いシーズンを戦うのは、メジャーリーグに属するトロント・ブルージェイズのみで、ショートシーズンA級のバンクーバー・カナディアンズや独立リーグ球団は、5月以降に開幕を迎え9月初旬までの短いシーズンを送る。

 これは、寒冷な気候ゆえのことだと、カナダ野球関係者は言う。4月の寒さはファンが野球場へ足を運ぶのを阻むのだ。

 野球環境に決して恵まれているというわけでないこの国だが、アメリカと長大な国境を接しているという地理的位置と長い歴史もあり、サマースポーツとしての野球の地位はゆるぎないものになっている。

 国際大会には、パンアメリカン大会(1967年)、IBAFワールドカップ(1970年)、インターコンチネンタル大会(1973年)と1970年前後から主要なものに参加し、徐々にその実力を高めてきた。

前回2017年のU18ワールドカップが行われたオンタリオ州サンダーベイには1993~1998年までウィスキージャックスというプロ球団が本拠を置いていた。

前回2017年のU18ワールドカップが行われたオンタリオ州サンダーベイには1993~1998年までウィスキージャックスというプロ球団が本拠を置いていた。

 その中でカナダ野球の頂点と言っていいのが、正式種目となって初めて出場した2004年のアテネオリンピックだろう。大陸予選で本戦のメダル候補と目されていたアメリカが敗れ去るという大波乱の中、出場を決めたチーム・カナダは、本戦に際してマイナーリーガーを招集し、これに臨んだ。

 そのメンバーの中には、すでに引退しマイナーのコーチをしていた元日本ハムのロブ・デューシーや、前年にヤクルトでプレーしていたトッド・ベッツ、オリンピックでの投球が認められ、翌年楽天でプレーすることになるアーロン・マイエットの名もあった。

 チーム・カナダは、強豪の日本、キューバには敗れたものの、その打力をいかんなく発揮し予選リーグを5勝2敗の3位で通過した。

 決勝トーナメントでは、日本、キューバが再び立ちはだかり結局メダルには届かなかったが、4位という成績は現在もカナダ野球史上に燦然と輝いている。

アテネ五輪代表チームの2人の投手、フィル・デヴェイ(左・マリナーズ2A・当時)とマイク・キューシーウィックス(右・ブリュワーズA・当時)

アテネ五輪代表チームの2人の投手、フィル・デヴェイ(左・マリナーズ2A・当時)とマイク・キューシーウィックス(右・ブリュワーズA・当時)

 その後2006年に始まったWBCには全大会に出場、2008年の北京オリンピック、2015年の第1回プレミア12にも出場するなど、現在では主要国際大会の常連となっている。

 カナダ野球連盟によると、2016年の競技者数は12万人。前年比14%の増加というから、現在ではもっと競技者は増えているかもしれない。

 しかし、この数字も強豪と呼ばれる他国と比べて決して多くはない。それでも、メジャーリーガーを含む多くのプロ選手を擁するトップ代表は、アメリカや日本、そしてキューバといった世界の強豪と伍する力を十分にもっている。

文・写真=阿佐智