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広い裾野をもつアメリカプロ野球【WORLD BASEBALL vol.4】



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 ご存知のとおり世界のプロ野球の頂点はメジャーリーグである。そしてアメリカのプロ野球は、このメジャーリーグの下に幾重にも重なったマイナーリーグをもっている。

ナショナル、アメリカンの両リーグ30球団は各々複数のファームチームを持ち、それらがプレーレベルに応じてルーキー、アドバンスルーキー、ショートシーズンA、A、アドバンスA、2A、3Aに区分されている。そして、それら197チームが16のマイナーリーグを構成しているのだ。
このうち、ショートシーズンA級以下のリーグは、その年のドラフトで獲得したての、まさにルーキーでもっぱら構成されるため、開幕は6月と遅く、最下層のルーキー級は、メジャー球団のキャンプ施設の練習用グラウンドを使用している。観客にチケットを販売するプロ興行を行うのはアドバンスルーキー級からで、全米各地にプロ野球が展開され、小さな田舎町にまでプロチームが存在する。

 球場のキャパシティと観客動員は、レベルに応じており、アドバンスルーキーやショートシーズンA級などは、1000人も入れば満員になる小さなスタンドとその奥に広がる芝生の土手があるだけの球場を使用するのがもっぱらだが、2A、3A級ともなると、台湾やメキシコのトップリーグと比べても遜色ない立派なスタンドをもつスタジアムに連日満員の観客を招きこんでいる。

1990年代以降、メジャーリーグでは新球場建設ラッシュの流れが起こっているが、マイナーリーグにもこの流れは起こっており、毎年各地で新造されているスタジアムは、フランチャイズ都市のランドマークとしてシンボル的存在になっている。

 メジャーリーグのスタジアムともなると、その規模は日本などとは比べ物にはならず、場内には観覧車(これは仙台の楽天生命パーク宮城にもあるが)やメリーゴーラウンド、子供用の野球フィールドまで備えているなど、まさに「ボールパーク」と呼ぶべきエンターテインメント空間となっている。


 アメリカプロ野球はこれだけではない。1993年にノーザン、フロンティアの2リーグが発足して以降、独立リーグが全米各地で興亡を繰り返している。
 メジャーリーグとマイナーリーグの関係は、メジャー側がマイナー球団と選手育成契約を結び、独立採算制のマイナー球団は、メジャー球団と契約した選手を預かって興行を行うというものである。このシステムは1930年代にセントルイス・カージナルスが有望株の囲い込み策として導入したもので、それまではマイナーリーグは、メジャーリーグに選手を「売る」独立リーグであった。その後、マイナーリーグはメジャーリーグのファームリーグとして包摂され、一旦は、独立リーグは消滅したのであるが、1990年代半ば以降、「生プロ野球」の需要に応える形で、マイナーリーグがカバーしきれていない中小都市を中心に独立リーグが展開されるようになった。

 現在、メジャー契約を勝ち取れなかったベテランの「一時避難先」として機能しているアトランティックリーグ、ノーザンリーグの後継リーグと言えるアメリカンアソシエーション、米加両国に展開されるカンナムリーグ、27歳という年齢制限を設け若手育成を重視するフロンティアリーグの4リーグが「四天王」として安定した運営でファンの支持を受けている。

その一方、「アペンディックス(付録)リーグ」とも呼ばれる新興リーグは、毎年のように起こっては消えている。その中でも、カリフォルニアのパシフィックアソシエーション、アリゾナを中心に展開されるペコスリーグが2010年代前半から運営を継続しており、また2016年にはエンパイアリーグ、ユナイテッドショアリーグの2リーグも発足している。ただし、これらのリーグは選手給与も邦貨にして数万円、場合によってはノーギャラということもあり、プレーベルは低い。

 これら独立リーグの球団数は約50。メジャーからアペンディックスまで実に300近いプロチームが広大な国土の至る所で展開されているがアメリカプロ野球なのである。


文・写真=阿佐智