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高校球界屈指の“いだてん”が甲子園を駆け回る 大久保翔太(関東一高3年)【Future Heroes vol.23】

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 8月6日に開幕する第101回全国高等学校野球選手権大会。夏の甲子園球場を舞台に熱戦が期待されるが、今回はその出場選手たちの中でも屈指の走力を誇る1番打者を紹介する。

大久保翔太(おおくぼ・しょうた)・・・2001年6月27日生まれ、茨城県龍ケ崎市出身。馴馬少年野球クラブ(軟式)→取手リトルシニア(硬式)→関東一高3年。173cm63kg。右投左打。

「実感はまだ湧きません」
 東東京大会を制し3年ぶりの夏の甲子園出場を決めた関東一高の一番打者・大久保翔太は初々しい笑顔が印象的だ。だが、ひとたびグラウンドに出ると風を切り裂くような俊足でグラウンドを駆け回る。準決勝の日大豊山戦ではセンターの頭上を越える打球を放つと、ダイヤモンドを14秒台中盤で一周する先頭打者ランニング本塁打を記録し、チームを勢いに乗せた。

 3兄弟の末っ子として兄2人がしていた野球を自然と始め、中学時代は強豪・取手リトルシニアでプレー。「家系として、みんな足が速いんです」と語る俊足や中学3年で立ち幅跳び3メートルを計測した身体能力は当時から相手の脅威だった。

「彼が先頭打者として打席に立つと、相手内野手はバックホーム態勢を取るかのような前進守備。それでいてパンチ力もあったので、外野は後ろ寄りに守る。内外野の間がすごく空いた独特の守備体系になっていました」
 そう笑って振り返るのは取手リトルシニアの監督で、関東一高などでトレーナーを務める石崎学氏。スプリントコーチとして招聘した走り幅跳び選手の猿山力也氏から「陸上選手になったら面白い」と言われたこともあるという。

 中学時代はその中で「しっかりとパワーポジションを取って(骨盤を前傾にして)走るように」と正しい走り方を教え込まれた。一方で走り打ちはさせず、打球を遠くに飛ばすように打撃指導も受けた。また高校に入ってからも週1回機器を用いて行う30m走の測定で、自らの成長を数字でも把握し、その長所を伸ばしてきた。そうした積み重ねが最後の夏の甲子園をかけた舞台で存分に発揮されたのだった。
 甲子園に向けて「足を生かして攻撃に勢いをつけたい。中堅手としても守備の要として一つひとつの技術を磨いていきたいです」と、ハツラツと抱負を語った大久保。

 大観衆が詰めかける檜舞台で大歓声を浴びるような鮮烈な躍動を期待したい。

文・写真=高木遊