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宮崎産経大が連続8強に一歩及ばずサヨナラ負けも、再び大きな爪痕を残す【6/12 第68回全日本大学野球選手権 2回戦 宮崎産業経営大vs東海大】

 昨年、春秋通じて全国大会初出場ながら創価大、福井工大を立て続けに破って8強入りする旋風を巻き起こした宮崎産業経営大(以下、宮崎産経大)。今年も初戦で昨秋の明治神宮大会準優勝の環太平洋大を破って初戦を突破。2年連続の8強を目指し、2回戦で原辰徳監督(巨人)ら多くの好選手を輩出している名門・東海大と大激戦を展開した。

今日もハツラツとしたプレーや表情が印象的だった宮崎産経大の選手たち

 試合は初回から動いた。宮崎産経大が3番・八木大輝(3年)の左中間を破る二塁打で先制に成功した。だが、東海大も3回に千野啓二郎(4年・東海大相模)がライト前に安打を放つと、一塁走者の宮地恭平(4年・東海大相模)が右翼手の中継への緩い返球を見て、到達していた三塁ベース付近から再加速して一気に本塁を陥れて同点に追いついた。

 その後は前日に完投していた宮崎産経大先発の右腕・杉尾剛史投手(4年・宮崎日大)と、3回から登板していた東海大の2番手左腕・松山仁彦(3年・東邦)の一歩も譲らない投手戦が展開され、1対1のまま9回を終了。無死一、二塁から始まるタイブレーク方式の延長戦に持ち込まれた。

 10回は両投手とも三塁まで進まれながらも踏ん張り、11回表は東海大が一塁手・千野の好守で送りバントを防ぎ、松山も外角への力強いストレートとキレの良いスライダーで連続三振を奪い、またもホームを踏ませなかった。

 すると10回裏、東海大はドラフト候補捕手の海野隆司(4年・関西)がきっちりと送りバントを決めると、続く藤井健平(4年・大阪桐蔭)が初球のストレートを弾き返して、サヨナラ勝ち。8強入りを決めた。

 一方、2日続けての好投を見せながらも最後に力尽きた杉尾は、打球を振り返ることなく両膝に手をついてうなだれた後、悔しそうな表情で整列に加わり、試合後は「日本一を4年間目指していたので悔しいです」と目を赤くして語った。

サヨナラ負け直後の杉尾

 これで4年生の多くが教職や公務員試験により引退するため、三輪正和監督は「選手を勝たせてやりたかったです。良いチームだったので悔しさより寂しさが大きいですね」と話した。

 また、主将を務める大幡正敏(4年・鵬翔)は「最高の仲間でした」と涙ながらに語った。チームのグラウンドは系列高校の鵬翔が優先的に使うため、全体練習は火曜と木曜の夕方、土曜の午前中だけと練習環境は限られているが言い訳にはしなかった。
「地方大学は考えて野球をしないと絶対に勝てない」と話すように、各自の部屋やジョイフル(九州中心に展開するファミリーレストランチェーン)で野球のことを語り合い、時には気づけば朝5時になっていたこともあったという。

 今年の開会式の主将挨拶では、昨年の優勝校である東北福祉大がそうしていたように「日本一」を目指すことを宣言した。高い目標と意識を持った選手たちは三輪監督が「私の想像以上の成長をしてくれました」と話すように、舞い戻った全国の舞台で大きく躍動した。

 結果は昨年の8強に届かなかったが、チームはさらに前へと歩みを進めたことは間違いない。そして、目標を日本一に据え本気で取り組んだからこその悔し涙は、伝統を着実に積み上げるチームにとって、今後のさらなる原動力となりそうだ。

涙を抑えきれない宮崎産経大の選手たち

■2回戦:宮崎産業経営大vs東海大
宮崎産経大 10000000000=1
東海大   00100000001x=2
(延長11回タイブレーク)
【宮】●杉尾-大幡
【海】原田、○松山-海野

◎東海大・安藤強監督
「松山が、よく投げてくれました。藤井はリーグ戦で体調を崩して思うようにいきませんでしたが、本来は5番打者。よく初球から打ってくれたと思います。杉尾くんは本当に良いピッチャーでしたね。緩急を上手く使っていました。(接戦が多いが)全国大会はそういうものだと思っているので、一戦一戦をしっかり戦っていきたいです」


◎東海大・松山仁彦投手
「先発の原田さんが良い状態ではなかったので、初回から準備をしていました。相手打者が変化球を振ってくれたのが良かったと思います。(タイブレークでは)1点も取られなければ負けることはないので、一人ひとりを抑えることを考えました。ロングリリーフになるとは思っていたので、ペース配分を考えて投げました。チーム一丸となっているので、これからも貫いていきたいです」

3回からリリーフし9イニングを被安打1、奪三振14個と完璧な投球を見せた松山


文=高木遊
東海大取材=馬場遼
写真=中西陽香