- 高校野球
2017.03.14 13:30
【奪え!主役の座①センバツ2017】竹田祐(履正社)寺島成輝に続く「投手王国」の新エース
3月19日に阪神甲子園球場で開幕する第89回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)。大会前から話題を集めるのは清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社)、金成麗生(日大三)といった左の強打者たちだが、彼ら以外にも主役の座を狙う好選手たちは多い。
今回はその第1弾として、履正社(大阪)を昨秋の明治神宮大会優勝に導いたエース右腕・竹田祐の成長の要因や大会への意気込みを紹介する。
★投手王国で学んだあるべき姿
神宮のマウンドで歓喜を味わった昨秋から約4カ月。決勝の早稲田実戦でシーソーゲームだった流れを完全に変えたのは竹田だった。3回途中からマウンドに立ち、6回1/3を投げ無失点に抑えた。最終回にストレートは自己最速の145km/hをマーク。大きな体がマウンド上で一層大きく見えた。
履正社に入学した当時は、1学年上に寺島成輝(現ヤクルト)、さらに2学年上には14年センバツ準優勝に貢献した右腕コンビの溝田悠人(現同志社大)、永谷暢章(現JR東日本)と投手陣は“投手王国”と言ってもいい布陣だった。
その中で、竹田は“1年夏からベンチ入りする”という目標を掲げていた。だが、フォームを崩し、本来の姿からは程遠い竹田の姿があった。
「今思うと、高校に入学して一番苦しかったのは1年のあの時期でした」と振り返る。フォームがなかなか固まらず四苦八苦していた竹田は、夏になると投手を離れてショートを守るようになった。今まで守ったことのないポジションではあったが、抵抗は微塵もなかった。
「ショートを守ることで細かいステップなどに気を配るようになったんです。足の幅とか動きとか…。シートバッティングでも、とにかく周りをしっかり見て、少しでも先輩に近づこうと必死で。あの時はピッチャーを離れたからどうというより、ショートに慣れることに集中していました」
そのワンクッションが良かったのかもしれない。冬になると本格的なトレーニングに入り、体作りに励むようになると、一時は落ちた体重がみるみるアップ。球に力強さも増し、冬の終わりからブルペンにも入るようになった。春になると寺島や山口裕次郎(現JR東日本)と共に練習試合に登板する機会も増えた。
「自分はもともと投げる時の足幅が広くて、それがずっと気になっていたんです。その幅を狭くしたら、コントロールが少しずつ安定してきました」。
投げる自分の目の前には常に寺島がいた。一緒にいる時間が多かった寺島の多くの言葉に触れた。気持ちの強さ、どんな場面でも立ち向かうポジティブさ。投手としてあるべき姿も学んだ。寺島に教わった横のスライダーは、昨秋以降大きな武器となっている。
★寺島成輝にも劣らない成長度
ただ、新チーム結成時は調子が上がらず打ち込まれる試合が続き不安を残した。夏の甲子園に出場した影響で練習試合も例年の半分以下しかこなせず、そのまま秋の大会がスタート。
だが、4回戦の大体大浪商の好左腕・宮本大勢に投げ勝ったことが確かな手応えになっていた。以降、岩手国体を挟んで、再び大阪大会、近畿大会、神宮大会と公式戦が続いた中で「投げながら色んなことを身につけていくしかなかった」。イニングを重ねることが、竹田にとっての大きな“学習”だった。
1年春からトータルすると体重は10キロ増え、昨秋より太ももがさらにがっちりし、「去年履いていたジーパンが今年はもう履けなくなりました」と言う。
寺島に比べれば、エース番号を背負った期間は短い。それでも、成長度は負けていない。
最上級生となり、今度は自分が先頭に立つ番だ。「後悔だけはしたくないです。目標は、勝てる投手。投げていて周りから安心してもらえるような存在になりたいです」。
普段は「どちらかというと表に出るのは得意じゃない方です」と話す。それでも甲子園でのマウンドでは誰よりも躍動してみせると固く誓う。
この春の“投”の主役は譲らない。
文・写真=沢井史
試合写真=高木遊