- プロ野球
2016.10.18 09:23
巨人に入団も1年で引退 元プロ選手が始めた再就職支援、その思いとは

22日に日本シリーズの開幕を控える中、今年も各球団から続々と戦力外選手が発表されている。所属チームを構想外となり、新天地を模索する者、そのまま現役を終える者などその決断は様々だが、セカンドキャリアに踏み出す選手が新たな環境に苦しむケースも少なくない。そんな選手たちの再就職をサポートしている元プロ野球選手がいる。2011年にプロ入りしながら1年で引退した川口寛人さん(31)だ。
■引退選手の再就職をサポートする元巨人の川口寛人さん
22日に日本シリーズの開幕を控える中、今年も各球団から続々と戦力外選手が発表されている。所属チームを構想外となり、新天地を模索する者、そのまま現役を終える者などその決断は様々だが、セカンドキャリアに踏み出す選手が新たな環境に苦しむケースも少なくない。そんな選手たちの再就職をサポートしている元プロ野球選手がいる。2011年にプロ入りしながら1年で引退した川口寛人さん(31)だ。
現役時代、内野手としてプレーした川口さんは山梨学院大を卒業後、クラブチーム西多摩倶楽部を経て2010年のドラフトで巨人から育成7位で指名された。しかし支配下登録にたどり着けずにわずか1年で戦力外に。そのまま現役を退き、現在は不動産会社「日本リアライズ」のPSS(プロフェッショナル・セカンドキャリア・サポート)事業部に所属し、元プロ野球選手のセカンドキャリアをサポートしている。
プロ野球選手は個人事業主のため、住宅を購入する際にローンを組みにくい。「引退後に正社員として企業に就職し、ローンを組んで家を買うという人生設計を手助けしたい」という同社社長の考えが、不動産会社で元選手のセカンドキャリアをサポートするきっかけとなったという。
川口さんはトライアウトの会場に出向き、なるべく多くの選手に会うようにしている。「野球を諦められない選手が圧倒的に多いので『まずは球団から声がかかるように頑張って下さい』と言いますが、我々の存在もアピールします」。
■就職先が決まっても1年以内に離職するケースも
毎年15人ほどがPSSを通じて再就職活動をするが、実際に決まるのは3人ほど。元選手は「体力と精神力はあるだろう」と思われているために企業からは引く手あまただが、入社してもほとんどが1年以内に辞めてしまうのが実情のようだ。
「ある程度の年齢になっているのに会社で働くのが初めてで、会社や社会に溶け込めない、自分の考えもうまく伝えらないという理由で辞めてしまうケースが多い。そのため、入社後も週に2~3回ほど会って話をし、続けられるようにフォローしています」
NPBの調査によると、12球団でプレーの場を失った選手の約7割が球団職員として働いたり、独立リーグでプレーを続けるなど、野球関係の仕事に就いているという。川口さんはこの数を減らしていきたいと話す。
「バッティングピッチャーを務めていてチームが優勝しても、年俸は上がりません。しかし、会社で成果を出せば、収入は上がります。球団の裏方の仕事はほとんどが1年契約。来年あるかもわからない不安定な状態を選び、年齢が上がってから企業に再就職するより、若いうちの方がいいと思います」
■再就職に向けて大学で無料のパソコン講習も
川口さんが手掛けた再就職先は不動産、アパレル、コンサルティング会社、製菓工場、フィットネスなど多岐にわたり、着付けの学校で着物のバイヤーを務めるなどのユニークな仕事もある。その中でも多いのはシステムエンジニアだという。
「我々が提携している大学で、パソコンの講習を無料で受けられます。引退後、再就職までの数か月間で勉強してもらっています」
NPBでもセカンドキャリアをサポートしているが、選手が自ら相談に行くケースは少ないと話す川口さん。事業を始めて今年で5年。元選手たちにどのような企業が適しているのか分かってきたことも多く、「1年ほどで辞めてしまう元選手が多い中、仕事に夢中になり1年目からバリバリ働ける環境、2年後、3年後をイメージさせて、夢を見させてくれるような環境がある会社を選んでいます」と語る。
引退を決断した選手が第2の人生でも輝けるように――。川口さんはできる限りのサポートを続けている。
篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki