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高校野球

背番号17、最速127キロの太田が8回までノーヒットノーランの快投!札幌大谷が決勝進出【明治神宮大会 準決勝 筑陽学園高 - 札幌大谷高】

第49回明治神宮野球大会の高校の部準決勝第2試合は、札幌大谷が筑陽学園を5-2で下した。札幌大谷は先発の太田流星(2年)が、8回まで相手打線を無安打に封じる快投を見せた。

背番号は17で、172センチ・75キロと体格も平凡。速球の自己最速は127キロというから、全国大会に登場する投手の中では下から数えた方が早い。太田はそんな技巧派の右サイドハンドだ。

太田流星


今大会の太田はリリーフで2試合に登板しているが、チームには1回戦で先発した背番号1の西原健太、2回戦で好投した1年生右腕・増田太貴らがいる。船尾隆弘監督が「5回持てば御の字だと思いました」と振り返るように、試合前の期待値は決して高くなかった。

ただ本人は手応えを感じていたと言う。「こっちに来てからずっと調子が良かったので、今日もイケるだろうと」(太田)

1回表に2点の援護を得た太田は、筑陽学園の打者を翻弄し、面白いようにアウトを量産していく。速球以上に多投するシュートとスライダー、カーブを低めに集めて内野ゴロを打たせる狙い通りの内容が続いた。準決勝で稼いだ27アウトのうち「16」は、内野ゴロで稼いだものだ。

筑陽学園の江口祐司監督は太田をこう評する。
「今までああいうタイプのピッチャーとは当たったことが無かった。いざ打ちに行くと手元で変化している」

「手元の変化」に並ぶもう一つの個性が、投球のテンポだ。この試合は札幌大谷打線が16安打を放つ出塁の多い展開にも関わらず、9イニングが1時間51分で終わった。太田はこう説明する。

「テンポを早くし始めたのは今年の春です。ポンポン投げて早くベンチに帰って、守備の時間をできるだけ短くして攻撃につなげたい」

牧田和久を参考にしているというマウンドさばきに影響され、筑陽の打者は自分の間合いでバットを振れなかった。筑陽学園は9回にようやく先頭の2番・福島悠介が初安打を放ち、3連打などで2点を返したが、太田は後続を断って完投勝利を挙げている。

無安打投球が続くと、本人や周囲はノーヒットノーランを意識しない気づかいをするものだが、太田はいたってマイペース。ベンチを盛り上げる「ネタ」として、試合の序盤からノーヒットノーランを口にしていたのだという。

「2回くらいからベンチでふざけて『ノーヒットノーランがあるよ』みたいなことを言っていた。自分でふざけて『あるよあるよ』といっていました。本当に意識をし始めたのは7回8回くらいです」

太田は札幌大谷高の下部組織に相当する札幌大谷リトルシニアの出身だが、中学入学直後には一度「投手失格」を宣告されている。彼はこう振り返る。

「ピッチャーを希望して(札幌大谷リトルシニアに)入ったんですけれど、僕の代は30人ちょっといて、ピッチャーだけでも20人くらい。それで自分は外野になりました」

しかし中3を迎える直前に、チームの監督に直訴。「外野より良い自信があった」という投手を志願し、ほぼ同時にサイドスローのフォームと巡り合った。

全国4強の大舞台で、背番号17がこのような快投を見せるとは誰が想像しただろう――。この試合の最速は125キロで、奪三振もわずか「2」だが、被安打は3本。「普通の高校生」の可能性を教えてくれる、太田のノーヒットノーラン未遂だった。

★第49回明治神宮野球大会準決勝
札幌大谷 200010020=5
筑陽学園 000000002=2
【筑】●西、菅井、西舘-進藤
【札】○太田-飯田

文=大島和人
写真=馬場遼