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高校野球

ワールドカップへ3位を死守
日置が初安打 柿木が好救援

【写真提供=共同通信社】U18野球アジア選手権  中国戦の7回を三者凡退で締めた根尾=サンマリン宮崎

 吉田輝星も根尾昂も「次世代に繋ぐため、何がなんでも勝たねばならない」と決意を持った試合。雨で二日間延びて、スーパーラウンドの最終戦が中国との対戦だったため、それがそのまま3位決定戦となった。

 初回、先発板川佳矢の立ち上がり。左バッターの外角のボールをストライクにとってもらえず、カウントを悪くしたところを、左方向に合わされる。トップバッターにレフト前にいきなり持って行かれた。そして1死一、二塁になって四番に高めに浮いたボールを前進守備のセンター藤原恭大の上を超えるツーベース。2点目は中継プレーで本塁で刺したが、1点を先制された。
板川は打者4人で降板したが、その後、リリーフした柿木蓮が5回3分1を無失点に抑えた。
「先制された後、中継した奈良間(大己)の送球と小泉(航平)がショートバウンドをよく取ってアウトにした」と流れを止めたことを永田裕治監督は評価した。

 日本はその裏、四球、犠打野選の無死一、三から併殺の間に同点に追いつく。続く二回、2死から四球とヒットで9番の日置。日置航は130キロのストレートをセンター前に運んだ。小園海斗が続いてこの回2点。三回にも内野ゴロ、失策の間に2点を追加した。
「内容のいいバッティングではなかった」と永田監督が言うように、併殺崩れ、内野ゴロの間の得点も多かったが、四球を挟んで小園、奈良間の会心の長打も出て、七回コールド、
14対1で3位を決めた。
「日置が打ってくれて活気付きました。センタオーバーはびっくりした」と永田監督は笑った。

 この日のヒーローは5試合目で初ヒットを第1打席で放った日置。勝ち越しタイムリーと、六回にはセンターオーバーのツーベースで一週間の思いを晴らした。
「大舞台でここまで打てなかったことはなかった。表に出しませんでしたが、相当、悩みました。これまで使い続けてくれた監督、コーチになんとか応えたいと思っていた。ほんとに良かった。センターオーバーでベンチのみんなが喜んでくれて」
 安堵の笑顔だった。
 ゲームを終えて、永田監督の声も一番、ハイトーンに聞こえた。
「先制されて嫌な流れでした。次世代につなぐと合言葉によく頑張ってくれた。柿木が、よう頑張ってくれました。最後の打席の藤原にはバックスクリーンに放りこんで来いと。板川は調子がすごく良くて先発させましたが、めっちゃ気負っていて。アップの段階で鼻血をだしまくりました(笑)」
 板川のズッコケ話まで爆笑で披露するほど、ホッとした様子が伝わってきた。
 柿木を継いで最後の1イニングは根尾が締めた。
「全球、真っすぐ、力でいきました。自己新の150キロが出た? この球場は出易いだけです」
 こちらの根尾はいつものように淡々と、ちょっと苦笑い。「(冷房の切れたインタビュールームで)ここ、暑くないですか」とメディアとのやりとりにもリラックスして応じていた。

 永田監督は総括する。
「東京合宿、大学選抜との壮行試合はいい感触を得ていた。宮崎に入って宮崎選抜、香港、スリランカとの試合で身構えてしまった。調子が上がっていたのに韓国、台湾と下り坂で。韓国戦は外のボール二つぐらいストライクに取られて、戸惑いが出て当てにいっていた。今日の最後の藤原ぐらい、思いっきり振ったのが。結果を出さなきゃいけないという日の丸の重圧です。それで打線は湿りがちでしたね。甲子園期間中、見てたら手応えがあって、十分やれるなと。でも、高校生はなかなか修正できない」

今大会をざっと振り返って、検証せねばならない、簡単に。
 まずは打てなかったことだ。香港、スリランカは別として、韓国には5安打、台湾には2安打と打線が湿った。相変わらず木製バットへの対応がどうだったかと言うことになる。
 根尾が言う。
「金属では先っぽでも当たれば飛んで行きますが、木製は芯に当てないと飛距離が出ない。芯に当てようとするとボールに合わせるので振り切れない。力強さが出ない。バットが先に出てしまってインパクトの力の伝わるところで捕まえきれない。大阪桐蔭ではティーや練習では使いますが、実戦ではもちろん、使わなかった。練習で意図を持って数を振るしかない」
 数年間、金属に慣れた日本選手が木製を自由に扱うことは短期間では至難の技だ。耐久性のある金属を木製に変えるには経済的な余裕が必要で、高校の課外活動としては難しい側面もある。

 それと選手選考がどうだったかという点。韓国、台湾には左投手に抑えられた。日本のスタメンは韓国戦は9人中、6人が左打者。台湾戦はその6人が1番から6番まで並んだ。「左打線でも打ってくれると思っていた」と永田監督が言うように、左投手も苦にしないはずだった。他に控えは野手では捕手の根来だけ。右の大砲は必要なかったか。候補は何人かいただろうが、落とさざる得なかったと言う。監督の意図する野球にそぐわなかったり、技術委員会で天秤にかかって、選ばれなかった選手もいるはず。そもそも18人が少ないという見方もある。

 また、時間的なことだ。甲子園が終わって一週間も経たずに合宿が始まり、大会も二週間経たずに始まる。準備期間があれば長いほうが相応の対策は立てられて、相手チームの研究もできるだろう。時期的なことは各国の立場もあり、日本だけの問題ではないが。他にも一定しないストライクゾーン、牽制など国際ルールとの相違点もある。
永田監督は検証が必要と言う。
「国際大会はいろいろあるので、このアジア大会を糧にして。課題は多々あると思います。勉強もさせてもらいまし、よく考えて反省して整理したいなと」
 3位になってしまった故にさらに問題点はあからさまになる。不十分な選手選考、木製バットへの対応などは常に言われることだ。結果論ということも心得ている。「毎年、毎年、わかってますよ」。しかし、分かり切ったことを言わねばならないのも、メディアの仕事なので記しておきたい。日本の野球の成長のために。
 
来年の韓国で行われる予定のワールドカップ。この3位という『敗戦』が生かされることを期待したい。

(文・清水岳志)