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DeNAの継投についてギャオス内藤が斬る『10月29日 福岡ソフトバンク 対 横浜DeNA』

29日に行われたSMBC日本シリーズ第2戦は、第1戦とは打って変わってのシーソーゲーム。序盤は投手戦の様相で試合が進み、中盤以降はともにリリーフ陣と中軸打者との対決で波乱が起きるなど試合が動き続けた。途中、手痛いエラーやリプレー検証の末の判定変更等、レギュラーシーズン中でもなかなか見ることができないような展開盛りだくさんだった試合の勝敗のポイントを、ギャオス内藤氏に語ってもらった。


——前日のワンサイドゲームとはガラリと違うゲーム展開となりました。最終スコアは4対3。ギャオスさんは、この試合をどのように見られましたか?
「まずは両チームとも、先発が試合をきっちり作ったと思います。5回までは1対0。非常に緊迫した試合展開でしたよね。立ち上がりでDeNAの今永投手があっという間に福岡ソフトバンクに先制を許してしまい、もしかしたら初回の1点が重くのしかかってくるような展開になるかとも思いましたが、後半はまた試合が動きました。どちらに流れがいくかなと気にしながらみていましたけれど、どちらも譲らない、緊張感のあるゲーム展開だったように思います」

——2試合連続してソフトバンクが先制です。初戦と同じような流れになるかとも思いました。
「今永投手に少し固さがあったようにもみえましたね。逆球も多かったですし、何と言ってもソフトバンク打線が2球であっという間に1死2塁というチャンスを作ってしまいましたから、落ち着く前に速攻で点をとられてしまったかなという気がします。ただ、その後のピッチングはきっちり修正して投げられていたので、走者を背負うことが多かったですけれど、今永投手らしい投球ができていたのではないかなと思いますね」

——試合が動いたのは6回表のことでした。
「5回の攻防がひとつのポイントだったように思います。4回まではともに得点圏にランナーを背負うことが多かった。特にDeNAは4イニング連続でピンチとなっていましたが、初回の失点だけでしのいでいました。5回は初めて両チームともに三者凡退で終えています。リズムが生まれるならここ。5回終了のグラウンド整備が入るタイミングで一回試合は間が空きますから、ここで気を入れ直して終盤勝負というところで、得点が入りましたね」

——DeNAが梶谷選手のホームランで同点。さらには5番・宮﨑選手の勝ち越し弾で一挙に逆転しました。
「立ち上がりから素晴らしい投球をしていたソフトバンクの東浜投手が、梶谷選手に1発を食らいましたね。失投ではなかったと思います。打った梶谷選手を褒めるべきでしょうね。ソフトバンクが悔やむとしたら、宮﨑選手の本塁打のほうではないでしょうか」

——梶谷選手の本塁打のあと、ロペス選手が内野安打で出塁し、筒香選手がソフトバンク2番手・嘉弥真投手の前に三振に倒れたあと、3番手・森投手から放った本塁打でした。
「宮﨑選手はこの打席の前までノーヒット。1戦目からいいところで打順が回ってきていましたが、打てずにいて、“逆シリーズ男”になってしまうのではないかという雰囲気がありました。打たれたのはフルカウントからのインコースの真っ直ぐです。状態の悪い宮﨑選手が相手で、パワーピッチャーの森投手だからいける!という思いがあったのかもしれませんけれど、1発だけは打たれてはいけない場面でしたから、難しい選択だったように思いますね」

——この回でDeNAが一気に試合をひっくり返しました。ただ、ソフトバンクが再び襲い掛かります。試合は進んで7回裏のことでした。DeNA2番手・三上投手から、先頭の代打・明石選手が2ベースを放ってチャンスを作ります。
「明暗が分かれるイニングになってしまいましたね。まず私が気になったのはここでのDeNAの継投です。イニングは7回、ソフトバンクは8番・江川選手からの打順という場面でした。試合終盤ということも考えると、当然ここは代打攻勢となる場面です。左の代打がいることはわかっていたはず」

——他の選択肢もあった?
「結果論になりますし、ここはDeNAのベンチと、ピッチャー陣の信頼関係の上での選択だと思います。ですから、ベンチとしてはベストの選択だったのだとは思いますが、私だったら、もう1イニング今永投手に任せるということも考えたい場面でしたよね。球数は6回までで116球。間違いなく“替え時”ではありましたけれど、6回の投球でいっぱいいっぱいな感じは出ていませんでしたし、気持ちも非常に入っていた。まあここは解説者さんによっていろいろな意見があるとは思いますけれど、私だったら『もう1イニングいってくれ!』と背中を押したくなるような姿でした」

——結果的にこの回、ソフトバンクが3点を奪い逆転することになります。途中では手痛いエラーや、リプレー検証などもありました。
「そうですね。まずもったいなかったと思うのは、3番手で出てきた砂田投手が、柳田選手にあっさりタイムリーを許してしまった場面です。三上投手が明石選手に2ベースを許し、ソフトバンクは送りバントで3塁へと走者を進めてきました。ここで替わった砂田投手としては、1点はしょうがないから走者をためない、残さないことをしなければいけなかった。結果は1ストライクからの2球目をセンター前に弾き返され、1点差に迫られてなおもランナー1塁という場面での降板です。一番相手に流れをやってしまう悔やまれる投球だったように思います。その直後、ショートの倉本選手のエラーがあり、致命的なピンチを作ってしまいました」

——いろいろな要素が重なったイニングでした。
「継投もそうですし、このあとに起こるリプレー検証含めて試合が動き続けましたね。勝ち越しの場面、判定に話題が集まりがちですけれど、ここはもう打った中村選手を褒めるべきですよ。こういうワンチャンスを逃さないソフトバンクの強さをまじまじと感じるイニングだったように思います」

——最後は盤石の継投でソフトバンクが逃げ切りです。
「サファテ投手が先頭にフォアボールを出したりと、簡単にはいかなかったですけどね。DeNAにとっては勝てた試合です。ただソフトバンクの強さもあらためて感じさせた試合となりました」

——これで対戦成績はソフトバンクが2勝。この後の展開はどうなりそうですか?
「短期決戦ですし、移動日を挟みますから、なにが起こるかはわかりません。ひとりキーマンをあげるとすればDeNAの1番バッター・桑原選手。ここまで日本シリーズでは2戦、当たりがありませんけれど、本拠地の大声援の前で彼に当たりが出だすと、一気にチームが明るくなるでしょう。逆に言うと、まだまだ強力な投手陣が控えるソフトバンクが彼含め、DeNAの打線を“敵地”で封じ続けることができるか。3戦目からも、盛り上がりに大いに期待したいですね」

——ありがとうございました。

<OBプロフィール>

ギャオス内藤(ぎゃおす・ないとう)
球歴:豊川高 ヤクルト ロッテ 中日
現役時代はパワフルな投球でファンを魅了。ヤクルトでは2年連続で開幕投手を務めるなど、エースピッチャーとして活躍した。引退後は、野球解説者として活動の場を広げている。2013年から2014年はBCリーグ・新潟の監督も務めた。愛知県出身。右投げ右打ち。投手。本名は内藤尚行(ないとう・なおゆき)。