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2017.09.07 12:00
【THE INSIDE】今秋も混戦必至、早くも下克上スタートの首都大学リーグ…大学野球探訪(6)
今春のリーグ戦は第1週から混戦となり、最終的には帝京大の39シーズンぶりの優勝となった首都大学リーグ。
前シーズンは4位からの躍進という形だったが、キャンプからの仕上がりもよく、前評判は低くなかった。だから、「混戦になったら、帝京大の久々の優勝もありだぞ」という声は挙がっていた。そんな期待にも応えた形の優勝だった。唐澤良一監督も、シーズン前からある程度は手ごたえを感じていたので、「狙えるチャンスを生かした優勝」だったとも言えよう。
その一方、昨年秋に悲願の初優勝を果たし、明治神宮大会も決勝進出を果たしていた桜美林大は、大黒柱だった佐々木千隼投手(日野出身=現千葉ロッテ)が抜けたということもあったであろうが、スタートでつまづいたのが効いて結局調子を上げきれず、2勝10敗で勝ち点ゼロのまま最下位に沈んだ。さらには入替戦でも武蔵大に屈し、結局二部落ちとなってしまった。
優勝チームが翌シーズンに最下位に沈み、そのまま二部に降格という構図は、“戦国”をキャッチフレーズとしている東都連盟のリーグではしばし起こっていることではある。首都では過去、1996(平成8)年秋に筑波大が優勝し、翌春最下位になったという例があったが、それでも入替戦では何とか残留している。
前季優勝校が、翌シーズンに最下位となりそのまま二部降格というのは初めてのケースだった。つまり、それだけ首都リーグも群雄割拠、混戦になってきたということだ。
武蔵大・島崎貴也君(4年・日大二)
この秋も、そんな現象を示しながらのスタートとなった。春の優勝校、帝京大が今季12シーズンぶりに一部に昇格してきた武蔵大に連敗してしまった。武蔵大は、エース本田健一郎君(4年・日大鶴ヶ丘)と島崎貴也君(4年・日大二)を中心とした投手陣が、しっかり試合を作ることが出来れば面白い存在になれると言われていたが、その通りの形でのシーズンインだった。
帝京大は、春も必ずしも打ち勝ってきたというわけではないので、小倉大生君(4年・岡山学芸館)と本野一哉君(4年・金光大阪)という投手陣が抑えきれない場合は、苦しい展開は否めなくなると言われていたが、そんな感じのスタートとなってしまった。
今春は9季ぶりの一部昇格を果たした明星大は、社会人野球のローソンなどで指導実績のある浜井監督の指導が徐々に浸透し、粘り強さを示している。「まだまだ、全然整備されていない」とは言うものの、春は優勝した帝京大や2位の筑波大からも勝利を挙げるなどし、4勝8敗の勝ち点1で5位に残ったのは、今季に繋がっているはずだ。角度のある左腕・野村秀一君(2年・市呉)の投球などが注目される。
第1週では東海大に連敗となったが、2回戦は勝利へアウトあとひとつまで迫っていた。結局そこからミスが出て追いつかれ、延長の末に逆転されたのは今後への課題とも言えよう。
リーグの盟主ともいえる東海大は、この春にHondaで都市対抗優勝実績もある安藤強監督が就任したが、2月に発表されて4月に就任という慌ただしさもあり、春はチームを把握しきれなかったということもあったであろう。
東海大・安藤強監督
しかし、夏の強化合宿を経て、「誰が、どんな場面で何ができるのかが、オープン戦などを通してわかってきました。春とは全然違います」と言うように、安藤監督としても取れる試合は確実に取っていきながら、“リーグの盟主”としても、常勝軍団復活を目指している。
また、それだけではなく、「今は、受け皿が少なくなってきていますけれども、それだけに、上(社会人野球)で通用する選手を送り出していくこと、人間的にもきちんとした選手を送り込んでいくことも大事な仕事だと思っています」という意識も強い。
首都連盟の顔としても、東海大の担う役割は大きいということであろう。また、東海大にはそれだけの期待が寄せられているということだ。
もう一方のリーグの雄ともいえる日体大は、春は最終週まで優勝の可能性を残しながらも、帝京大に連敗したことで最終的には4位となった。それでも、ユニバシアード代表にもなった松本航君(3年・明石商)や安定感のある東妻勇輔君(3年・智辯和歌山)に加えて、1年生の森博人君(豊川)に、やや変則左腕の石川勇二君(4年・糸魚川)が台頭してきそうなのも大きい。
ことに、石川君に関しては、これまであまり投げていなかったのが、ここへきて一気に開花。中日の石井昭男スカウトは「腕も長いし、球持ちがいいので、タイミングもとりにくそうで、ワンポイントや短いイニングだったら面白いね」と、大いに興味を示していた。この投手陣がはじけたら、日体大はこの秋一気に行く可能性もありそうだ。
筑波大ナイン
春2位の筑波大は、絶対エースの大場連太郎君(4年・日大三)に、故障が癒えた大道寺拓君(3年・弘前)が戻ってきたことが大きい。そろそろ、2006年秋以来の優勝を狙いたいところである。打線も、一発のある種子島大輝君(3年・膳所)を中心に、川端将広君(彦根東)ら中軸は爆発力があり面白い。全国レベルで戦える国立大という位置付けとしても、筑波大の存在と役割は大きい。
いずれにしても、今季も最後まで順位がわからないという展開になりそうだ。ことに、首都リーグは、1勝1敗となった場合に、連戦ではなく3回戦が予備週に回っていくという日程で、このあたりの日程の妙も、見る側にとっては興味深いことになる。
さらに、秋はリーグ優勝と2位チームが明治神宮大会出場を賭けての横浜市長杯(関東選手権)を争う戦いもあり、チーム力をどこにピークへもっていくのかということも含めて、この秋も首都大学野球リーグは見どころ満載である。