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プロ野球

【下位指名からの下克上目指すルーキーたち③】
細川成也(明秀学園日立高→横浜DeNAベイスターズ)
ケタ違いのパワーと一途な思いで日本の4番へ


細川成也(ほそかわ・せいや)・・・1998年8月4日生まれ。茨城県北茨城市出身。北茨城リトル→いわきリトルシニア→明秀学園日立高→DeNA。181cm85kg。右投右打。外野手。

★何が何でも、豪快エピソード

「パワーはケタ違い。練習に取り組む姿勢も今まで教えてきた選手の中でもナンバーワンです」
 そう細川を評価するのは明秀学園日立高の金沢成奉監督。光星学院高(現八戸学院光星高)で坂本勇人内野手(巨人)、田村龍弘捕手(ロッテ)、北條史也内野手(阪神)ら数多くの強打者を育てきたが、彼らをも上回るパワーと姿勢だと言う。

 中学時時代はジャベリックスロー(やり投げ)で全国2位に輝くなど高い身体能力を発揮していたが、いわきリトルシニアでは東北大会1回戦が最高成績。三振が多く、高校入学後も技術面が追いつかず、1年時はわずか2本塁打のみに終わっている。そこで1年冬から金沢監督と二人三脚でタイミングの取り方やボールの捕らえ方を掴めるよう取り組んできた。
 特に叩き込まれたのが「ボールの軌道にバットを入れ、軸を使って振り切る」こと。また、不器用なタイミングの取り方を修正するために、一本足打法ではなく、すり足打法にした。すると2年時から本塁打を量産。通算本塁打は茨城県の高校球児最多となる63本塁打にまで伸ばした。

 今夏の茨城大会では、エース兼中軸打者として活躍。準々決勝・準決勝では豪快な本塁打をかっ飛ばし、チームの準優勝に大きく貢献した。特に準決勝の霞ヶ浦戦での一発は、逆方向の右中間スタンド最深部に飛び込む推定140メートル弾で、この時視察していたDeNA・河原隆一スカウトは「スイングしただけでスタンドが沸いていた。右の高校生スラッガーでは今年ナンバーワン」と、当時からそのパワーを絶賛していた。

 また、その一途な思いも夢を叶える原動力となった。金沢監督は進路相談の際に見せた細川の強い意志を振り返る。
「今まで、僕が言ったことしかしなかった子が、進路相談の時に“大学に進学して力を付けた方がいいんじゃないか?”と言うと、なかなか返事をしないんです。“そんなにプロ行きたいのか?”と聞くと、“はい、何位でもいいので、絶対に行きたいです”と。あんなに不器用な選手がここまで来ることができたのは、強い気持ちがあったからなんでしょうね」
 また最後の夏が終わった後の練習は、よりいっそう激しさを増した。遊びの誘いも断り、トレーニングに没頭した。

 昨年末に取材した際にも「プロに入って恥をかかないように毎日練習をしてきました。金沢監督に教わったことをプロでも生かしていきたいです」と、強い眼差しで語っていた。
 金沢監督は「理解力が乏しいところがあるので心配はあります。でも、パワーはずば抜けていますし、やっぱりずっと練習していますから。その強みに、指導や環境の相性さえ合えば、案外早く上に行くかもしれませんね」と恩師ならではの不安と、それをやや上回る期待を語った。
 目標は「筒香さんのような頼れる打者。日本を代表する4番打者になること」。プロの世界でもその一途な思いと類稀なパワーを生かして、道を切り拓いていく覚悟だ。

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文・写真=高木遊

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