BASEBALL GATE

高校野球

【奪え!主役の座⑤センバツ2017】140km/h超え投手7人を誇る大阪桐蔭の3年生投手トリオ 徳山壮磨・香川麗爾・井上大輔

★3人それぞれの個性

“大阪桐蔭には140キロを超える投手が7人もいるらしい”。
 3月19日に開幕した第89回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)で、そんな評判の高さで注目を集めるのが大阪桐蔭の投手陣だ。中でも奮起が期待されるのは、エースの徳山壮磨をはじめとした3年生の投手トリオだ。
 昨春の府大会。エースの高山優希(現日本ハム)がケガのためベンチ入りできず、代わってマウンドに立ったのが当時2年生になったばかりの徳山壮磨だった。細身ながら柔らかさのあるフォームで回転数のある球にはキレがあり、最速145キロのストレートは最大の武器だ。昨春の経験も武器にして、昨秋はエースらしいマウンドさばきを見せたが、「西谷先生(監督)から球が弱いと言われた」という課題を胸に“投手陣の真ん中に立てるように”と冬場は土台作りに時間をかけ、体重が5キロアップ。球に力強さが増した。

徳山壮磨(とくやま・そうま)・・・兵庫夢前クラブ(ヤングリーグ/硬式)出身。183cm73kg。右投右打。

 背番号10の香川麗爾は近畿大会準決勝の神戸国際大付戦で6回からマウンドに登ったが、「8回あたりからアップアップになっていた」と体力のなさを実感。9回に2本のホームランを許して逆転負けした。冬場は体力強化に徹し、体重が4キロアップしたことで球威が上がった。最速は昨秋から2キロ増しの146キロ。アベレージも2キロ速くなった。何より「ゲームメイク能力が高い」と西谷浩一監督は厚い信頼を寄せる。

香川麗爾(かがわ・れいじ)・・・神戸中央リトルシニア(硬式)出身。175cm80kg。右投右打。

 2種類のスライダーとチェンジアップなどのコンビネーションで勝負する背番号16の井上大輔は「ひょうひょうとしていているけれど、マウンドさばきがいい」というのが西谷監督の評価。この冬は体幹を意識したトレーニングをこなし、体のバランスに変化が出てきた。

井上大介(いのうえ・だいすけ)・・・尾張ボーイズ(硬式)出身。175cm70kg。左投左打。

 3人が入学した当時、エース番号をつけていたのは田中誠也(現立教大)だった。田中は球威よりもカーブなど緩急をうまく使い、コントロールの良さでも勝負できる技巧派左腕。その年のセンバツはベスト4まで進出した。田中のピッチングは、新1年生だった3人に強い印象を与えた。
 香川はこんな話をしている。
「田中さんは130キロ台のボールでも空振りが取れるので、どうやったらあんなピッチングができるのかなと思っていました。でもブルペンで見るとコントロールとテンポがものすごく良かったんです。ボールは速さだけじゃないって教えられました」
 “勝てる投手”とはどんな投手なのか、身近な手本から力に頼らないピッチングの重要性を知った。特に徳山はキレを重視したピッチングにこだわりを持ち、140キロ半ばの速球を持とうが「スピードより球質」と話している。

★後輩からの学び

 力のある後輩たちの存在も大きな刺激になっている。今年の大阪桐蔭で話題にのぼるのは高校入学前からメディアに取り上げられ、中学時代から全国区だった147キロの速球を誇る根尾昂や巧打者・藤原恭大など新2年生が多い。自分たちよりも注目を浴びる後輩たちに対しどのように思っているのか尋ねると、3人とも特別な意識はないと口を揃える。
 反対に後輩に教えられることも多く、特に根尾は自分たちにはない知識を持ち、心を動かされることが多いという。

「“肩のストレッチはこういう時にするのがいいですよ”とか細かいことをよく知っているんです。だからこちらから質問することも多いですね。頭が良くて何でも知っています。サプリメントのことも結構詳しいんです」(徳山)

「負けたくはない気持ちはありますが、根尾は練習に対してストイックで、学ぶことが多いんです。自分の知らないことを教えてくれたりするし、根尾の存在は良い刺激になっています」(井上)

 部員全員で寝食を共にする寮生活の中で、選手間のコミュニケーションも欠かさない大阪桐蔭。食事や風呂など日常生活の合間にバッテリーでのミーティングを行ったり、投手陣だけのミーティングを率先して行うのもチームの伝統だ。その中で育まれる絆も固い。
「上級生の頑張っている姿が、下級生に生きてくる部分もある。そうやって伝統が引き継がれていってくれたら」という西谷監督の願いも込められ戦うセンバツで、大阪桐蔭の新3年生たちの“勇姿”にも注目したい。

文・写真=沢井史