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社会人野球

九州三菱自動車・谷川昌希、加藤伸一コーチ直伝の新球武器に13奪三振も惜敗【都市対抗野球】

社会人野球最高峰の戦いとなる第88回都市対抗野球大会が、7月14日に東京ドームで開幕。その幕開けとなる一戦は延長12回の激闘の末、前回王者・トヨタ自動車が九州三菱自動車に5対1で競り勝った。

延長12回に劇的なサヨナラ満塁本塁打で試合を決めたトヨタ自動車

 この激闘を生んだ立役者は九州三菱自動車の大卒3年目右腕・谷川昌希投手だ。過去2年は予選で敗れ西部ガスの補強選手として都市対抗に出場。今回初めて自チームのユニフォームで晴れ舞台を戦った。また、本拠地とする福岡県を豪雨災害が襲ったこともあり、特別な思いを持ってマウンドに上がったという。
 初回こそ制球のバラつきや味方の失策でピンチを迎えたが、相手4番・5番を連続三振でピンチを切り抜けると、以降は気迫のこもった素晴らしい投球を見せた。
 もともと得意としていたストレートやスライダーのキレに加え、今季から就任した加藤伸一コーチ(元ダイエーなど投手)からシュートを習得し、配球にバリエーションが増えた。これにより要所での空振り三振や相手の裏をかく見逃し三振を積み重ね、11回まで13奪三振。失点も5回に西潟栄樹外野手のソロ本塁打1本に抑えた。

140km/h台前半ながらキレの良いストレートと変化球でトヨタ自動車を翻弄させた谷川

 だが、前回王者のトヨタ自動車も食い下がり、延長10回からは前回大会の橋戸賞右腕・佐竹功年投手を投入し、勝ち越しを許さず。1死満塁のタイブレークから始まる12回表も佐竹が連続三振に斬って取った。
 するとその裏、カウント3ボール1ストライクと追い込まれた谷川はこの日の156球目に、最も自信のあるストレートを投げ込んだ。これをトヨタ自動車の藤岡裕大内野手がライトスタンドに運び、満塁本塁打で延長12回の激闘にケリを付けた。

 谷川は試合後「トヨタへの大歓声も自分への声援と奮い立たせ、ピンチでも冷静に投げられました。ただ、どうしても勝ちたかったです。実力不足でした」と悔しそうに振り返った。一方で加藤コーチは「彼のおかげでここまで来られた。横綱相手によく投げてくれました」と大黒柱を労った。
 この力投で得た収穫と課題を糧に、さらなる成長を求めて谷川と加藤コーチの共同作業は続いていく。

サヨナラ弾を浴び悔しそうな表情で整列に加わる谷川(写真左)

都市対抗野球1回戦
九州三菱自動車(福岡市) 010000000000=1
トヨタ自動車(豊田市) 000010000004x=5
【九】谷川—林
【ト】川尻、藤田、竹内、佐竹—細山田
本塁打:九州三菱自動車・八坂(2回ソロ)、トヨタ自動車・西潟(5回ソロ)、藤岡(12回満塁)

3回を無安打に抑える完璧なリリーフを見せた佐竹

文・高木遊
写真・山本晃子