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【激戦区展望】3季連続甲子園4強・秀岳館&ドラフト候補ら逸材多数の熊本大会

★逸材ひしめく激戦区・熊本
 他県で初めてお会いした某スカウトに筆者が熊本からやって来たことを伝えると「何でここにいるんですか。今年の熊本には(注目選手が)いっぱいいるじゃないですか」。
 侍ジャパンU-18代表の第1次候補選手に選出された川端健斗(秀岳館)、村上宗隆(九州学院)、さらには快速右腕として知られる山口翔(熊本工)…。全国を見渡しても地方でこれだけの逸材がひしめく地区は珍しい。

★秀岳館ブロック
 第1シード・秀岳館には川端健斗、田浦文丸という左腕二枚看板が待ち構える。もともと球のキレに定評のあった川端は常時の球速が格段にアップし、技巧派から本格派に変貌中。角度があり、打者の手元でググッと伸びる球筋には他校も厳重警戒だ。田浦は攻撃的な投球だけでなく、二刀流として打撃でも敵に脅威を与える。
 野手陣も甲子園で存在感を示した半情冬馬、木本凌雅、廣部就平、幸地竜弥らに加え、5月の招待試合では石井卓哉が本塁打をブッ飛ばし主砲の役割を果たすなど、選手層の厚さは全国屈指だ。

 ノーシードながら千原台の実力も侮れない。1年夏からマウンドに立つ住野賢枝は快速球と変化球のコンビネーションが持ち味で、夏に向けて順調に仕上げている。
 そして最注目が遊撃手の伊藤史瑛だ。天才的な守備ワークは熊本、いや、九州ナンバーワンだろう。しかも打撃に力強さが加わり、練習試合で対戦した県外の各強豪校も「誰だっ、あのショートは?」と口を揃えるまでに急成長した。さらに強肩捕手の紫垣太貴が主軸に座るなど、役者は揃っている。

 同ブロックには河野大朗、下田真己、永本湧一ら強力打線を形成する東海大熊本星翔、破壊力抜群のストレートを投げ込む熊本農の宮原孝明、140km/h超のスピードで敵を圧倒する熊本国府の高野颯ら注目選手がひしめいている。

ノーシードから頂点を目指す好遊撃手の伊藤史瑛(千原台高)

★熊本工ブロック
 第2シード・熊本工はスカウトから高い将来性を評価されている山口翔に注目が集まる。最近の練習試合では最速151km/hをマークするなど、大きな伸びしろに期待が高まっている。昨夏の準々決勝では秀岳館に延長サヨナラ負けを喫しただけに気合も十分だ。

 不気味な存在が、熊本学園大付。強力エンジンを搭載する高橋拓雅が6月に県内外の強豪校相手に17回を無失点。しかも体を追い込んだ状態で好投しているだけに照準を合わせた夏には140km/h台の剛速球でスタンドを沸かせることだろう。
 かつて西武で活躍した潮崎哲也を彷彿させる右サイドの川野海斗も面白い。持ち前の球威に加え、ここへきて変化球のキレが倍増し、奪三振率も急上昇。さらに184センチの長身から低めに球を集約できる藤坂悠真も健在だ。この右腕トリオがハマれば、ジャイアントキリングどころか、一気に駆け上がることもあり得る。

 NHK旗で準優勝した菊池はPL学園出身で三菱自動車水島の監督経験がある渡邉和雄氏が監督に就任し、メキメキと力をつけている。プロ注目の強肩捕手・正成智を中心にまとまりがある八代、1年夏から4番を張る甲斐雄也を擁する済々黌からも目が離せない。

春夏連続の甲子園出場を目指す山口翔(熊本工)

★文徳ブロック
 第3シードの文徳は招待試合で早稲田実業相手に5回1失点と好投した松岡聖基ら多彩な投手陣を誇る。野手陣も通算20本塁打超の中島祥吾や2年生スラッガー・萩尾匡也ら布陣が揃っているが、それ以上に“チーム力”が素晴らしい。昨年のベスト4以前は3年連続準優勝と例年、夏に仕上げてくる平井洋介監督の手腕に要注目だ。
 その他、長身右腕・牛島樹を擁する専大玉名、統廃合の関係で2、3年生のみで挑む多良木、布田剣真ら振れる選手を並べる鎮西も不気味な存在だ。

★九州学院ブロック
 NHK旗を制した第4シード・九州学院は、何といっても大型スラッガー・村上宗隆に注目が集まる。5月の熊本・沖縄交流戦では藤崎台球場の右翼場外へ42号、右翼席へ43号と2打席連続弾を放つなど、好調をキープ。大柄ゆえに目立たないが、守りでも体のキレが随分と出てきたようだ。
 強烈なスイングが際立つ田上将太、2年生の緒方敬亮、工藤康紀、さらに1年生ながらNHK旗で1番・遊撃手として出場した川野涼多という新星にも注目したい。

 その他、鹿児島実OBの横馬場徳貴監督が率いる球磨工、NHK杯で秀岳館を破った必由館、好左腕・乙益大晟を擁する水俣からも目が離せない。

ドラフト候補捕手の村上宗隆(九州学院)に高い注目が集まる

 今夏の熊本は例年以上に熱戦が予想される。それと同時にスカウトが熱視線を浴びせる注目の大会になりそうだ。

文・写真=アストロ