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侍ジャパン

名門復活へ 前青学大監督・河原井氏が桐生高コーチに就任

 【伊藤幸男の一期一会】名門の灯は令和の球児が引き継ぐ。侍ジャパン・小久保裕紀前監督(48)、ロッテ・井口資仁監督(45)の恩師、河原井正雄氏(65)=前青学大監督=が母校・群馬県立桐生野球部のコーチに就任して5カ月。40年も甲子園から遠ざかる「きりたか」ナインは効率的な練習で強豪と戦える「体作り」に励んでいる。

名門復活へ、地道な一歩を踏み出した桐生高ナイン

 創立102年を迎えた文武両道の伝統校。冬場は「赤城おろし」が吹き下ろすJR桐生駅近郊のグラウンドで選手は守備別ノック、8カ所での打撃練習を精力的にこなしていた。9月1日付でコーチとなった河原井氏が基礎体力強化を掲げ練習をボトムアップ。打撃マシンは今夏まで未知の130キロに設定し、目慣らしをさせた。

 群馬県最多、春夏計26度甲子園出場の名門も最近は私学と少子化に押され常に苦戦を強いられた。現状では名将稲川東一郎氏(故人)、78年センバツ4強に導いた「木暮、阿久沢」も忘れられてしまう。同野球部OB会は大学日本一に4度導いた指導者に再建を要請。昨秋に青学大監督を退任した河原井氏も母校の苦境を理解し、週末だけならと引き受けた。

 最初はスマホを通じた事前知識だけで戦々恐々の部員も、レベルに合わせた指導法とコミュニケーションで次第と打ち解けていく。「以前は“きょうはどのメニューですか?”と聞いていたけど、自分らは何が足りないか考え自発的に練習するようになりました」。町田和哉主将(2年)がチームの声を代弁した。強豪校は走塁で混乱させ、大量点を奪う。「けん制で無駄な失点を防げる。だからけん制練習だけに時間を割く日もあります」。

 投手にも糸を引く直球ではなく、捕手が捕りづらいクセ球が有効と指摘。「打者が打ちづらいボールを投げるのが好投手」とエース候補の大島由太威(ゆうだい=2年)。意識改革を求めたバッテリーは今秋の練習試合で前橋商に完封勝利するなど実戦で成長しつつある。武士俣(ぶしまた)夢滋内野手(2年)も「自分を含め体格が違ってきた。ここで野球を続けて強くなりたい」と語気を強めた。

 女子マネジャーの小池璃子さん(2年)は成長を感じ取っていた。「確かに違ってきました。以前は“皆頑張っているよ”と言っていたけど、今は技術面で言い合える関係になってます」。“なあなあ”からの脱却だ。

 年末には全員ベンチプレスの最高値を測定。冬場だけで各自平均10キロアップしたが、3月までにプラス10キロを目指している。「球都(きゅうと)桐生」復活と軽々しくは言えない。伸び盛りの十代は「名伯楽」とともに無限の可能性を信じて突き進む。

 ◆河原井 正雄(かわらい・まさお)1954年(昭29)7月26日生まれ、群馬県桐生市出身の65歳。桐生高ではエースとして72年北関東大会準決勝進出も足利工に敗退。青学大進学後は1年春リーグ首位打者に。社会人・本田技研(現Honda)でプレー後、87年青学大監督に就任。2014年に退任し一度は復帰したが、18年10月に退任した。小久保、井口のほかDeNA坪井智哉コーチ(45)、ヤクルト石川雅規投手(39)、オリックス吉田正尚外野手(26)らを育て計4度の大学日本一に輝いた。