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大学野球

「無名校から憧れのマウンドへ」鈴木友也(立正大)

★同じ境遇の仲間と励まし合い成長

6月15日まで行われた東都大学野球1部2部入替戦で2010年春以来の1部復帰を決めた立正大。昨年までチームを支えていた黒木優太(オリックス)と堀誠(NTT東日本)の両右腕が卒業して抜けた穴を埋めたのが3年生右腕の鈴木友也(ゆうや)だ。

そんな鈴木だが、高校は進学校の越ヶ谷(埼玉)出身。野手として埼玉県選抜に選出された以外に実績はほとんどなく、エースとして臨んだ2年秋、3年春・夏と3季連続で県大会の初戦で姿を消した無名の存在だった。

立正大では野手として入部したものの「1カ月でクビになりました」と鈴木。「思い出用に」と入寮時に持ってきていた高校時代の投手用グラブをはめ直し、強豪校から集まった好投手たちの中で必死にもがいた。

だが、1年時は制球を気にするあまり、腕が振れなくなってしまい、精神的にも追い詰められた。そんな時鈴木に怖がらず腕を振り続けることを進言したのが、同じく公立の進学校から入部してきた捕手の木下朗(横浜市立戸塚高校出身)だった。

「野球にすべてをかけてきた選手たちとはまったく違う環境から来たので、覚悟を強く持ってやってきました」と言う木下と鈴木は互いに励まし合い、徐々に自信とチャンスを掴んでいった。

「昨年までストレートで勝負することにためらいがあった」という鈴木だが、今春は堂々としたマウンドさばきを見せた。


2年時の昨年から登板機会を増やしていった鈴木は、冬場にウェイトトレーニングを例年以上に力を入れて、ストレートの質を上げることに腐心した。そして、今春はストレートに緩急をつけることができるようになり、スプリット・フォーク・チェンジアップ・スライダーと多彩な変化球も効果的に決まるようになった。

こうして打たせて取るテンポの良い投球が完成していき、リーグ戦では6試合38回を投げ、四死球と失点ともにわずか5。安定した成績で4勝無敗の成績を残して最優秀投手賞を獲得した(また、木下も5番打者に定着し、リーグ戦で全体3位の打率.344をマークした)。

専修大との入替戦では、初めてとなる神宮球場のマウンドでも臆することなく、1回戦で先発し8回2安打無失点で勝利投手になると、中2日で先発した3回戦でも5回2失点と試合を作り、チームの1部復帰に大きく貢献した。

今秋はシーズンを通して学生野球の聖地・神宮球場で戦うが、そのマウンドは、幼い頃からヤクルトファンとして憧れていた舞台でもある。

「ずっと投げたかったマウンドでした。不安もありますが楽しみです。勝負はこれから。シーズン通して好投できるように取り組んでいきたいです」

高ぶる気持ちを力に変え、鈴木は幼い頃からの夢をさらに大きく膨らませていく。

鈴木友也(すずき・ゆうや)・・・1997年1月8日生まれ、埼玉県出身。杉戸中→越ヶ谷高→立正大3年。178cm75kg。右投右打。


文・写真=高木遊