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笑顔と粘りの健大高崎か公式戦無敗の中京大中京か【11/20第五十回記念明治神宮野球大会決勝戦の見どころ】

 第五十回記念明治神宮野球大会は11月20日に最終日を迎える。高校の部・決勝には高崎健康福祉大学高崎高校(以下、健大高崎)と中京大学附属中京高校(以下、中京大中京)が勝ち残った。

 健大高崎は接戦を勝ち上がってきた笑顔と粘りのチーム。中京大中京は2試合18得点と破壊力が強烈だ。また両校とも好投手を擁している。

★健大高崎の勝ち上がり
■1回戦vs倉敷商業(15日)…7-1(タイブレーク)
■2回戦vs明豊(17日)…5-4(タイブレーク)
■準決勝vs白樺学園(18日)…3-2

 健大高崎は秋の県大会準決勝で前橋育英に0-5と敗れ、群馬県3位で秋季関東地区大会に進んだ。しかし地元開催による「プラス1枠」で掴んだ関東大会を制し、神宮大会でも決勝に進出。下剋上の達成が目前に迫りつつある。

 チームが乗ったのは、関東大会の1回戦・常総学院戦だ。2点ビハインドで迎えた9回表に3点を挙げる逆転勝利だった。終盤の粘り強さはこの大会でも発揮されている。

 健大高崎と言えば「機動破壊」のフレーズで知られるように、積極的な走塁が持ち味。神宮大会でも3試合で8つの盗塁を決めている。今大会に限ると準決勝のホームスチール失敗など、チャレンジが裏目に出ている場面も多い。しかし足が相手へのプレッシャーとなっていることは間違いない。

 エースは182センチの左腕・下慎之介で、1回戦と準決勝の先発を任された。2回戦・明豊戦もタイブレークの10回に登板し、勝ち投手となった。夏の選手権は県大会1回戦で敗れたが、本人も認めるようにそれ以降の4ヶ月で体格、技量の伸びがめざましい。

 下は今大会の最速が130キロ後半と球威で勝負するタイプではない。だが速球が高めに浮かず、試合の終盤まで低めに伸びのあるボールを投げ続けられる。スライダーやスプリットのキレも抜群で、1回戦は11三振を奪うなど三振奪取力も高い。フィールディングの良さも含めて「勝てる投手」だ。

 2回戦・明豊戦で登板した橋本拳汰は190センチを超える大型右腕。2回戦では長谷川秀、朝井優太も悪くない投球を見せていた。準決勝から中1日で迎える決勝は総力戦となるだろう。

 戸丸秦吾はキャプテン、捕手として健大高崎の要を担う選手。この大会は打撃でなかなか貢献できていないが、強肩は高校球界でもトップレベルで、投手の良さを引き出すリード力も光る。2度のタイブレークなど粘りの戦いについて、戸丸主将はこう述べていた。

「野球を楽しめるチームだと思います。皆で掛け合う声の中にも『笑顔』というワードが絶対入る」

 戸丸は準決勝の7回では目の前のホームベースを踏まず、一塁に送球して同点のホームインを許すミスを犯した。しかし今の健大高崎には仲間のミスをフォローするチームワークがある。

「ベンチからも内野からも外野からも『気にしないで』と声が掛かった。引きずっているとまた次に点を取られてしまう。切り替え大事だなと思いました」(戸丸)

 健大高崎は苦しい展開でも笑顔でプレーを楽しみ、粘って結果を手に入れられるチームだ。

爽やかな笑顔が印象的な健大高崎

【爽やかな笑顔が印象的な健大高崎】

★中京大中京の勝ち上がり
■2回戦vs明徳義塾(17日)…8-0(7回コールド)
■準決勝vs天理(18日)…10-9

 中京大中京は愛知県大会、東海地区大会とここまで秋の公式戦は無敗。1回戦も明徳義塾をコールドで退ける快勝だった。しかし二番手の左腕・松島元希をマウンドに送った準決勝は、天理に先行を許す苦しい展開となる。

 高橋源一郎監督は展開をこう振り返る。

「松島も失点をしながらもビッグイニングを作られなかった。それで天理さんにミスが出て中盤2点差までいった。勝負になるぞというところで、流れを変えたかったので高橋を投入したんですけれど、見事にホームランを打たれた。『厳しいかな』と思ったんですけれど、子どもたちの目標が『神宮で勝ち切る』なので、最後は思いがつながったのかなと思います」

 2回戦の中京大中京は7回に1点、8回に4点を挙げて9-8と逆転に成功。河西陽路にこの日3本目の本塁打を浴びて試合は再び振り出しに戻ったが、その裏に2番・中嶌優のタイムリー安打でサヨナラ勝ちを果たした。二番手投手にしっかり経験を積ませつつ、近畿王者に勝ち切った。

 エースの高橋宏斗は最速150キロの本格派右腕。183センチと体格に恵まれ、中森俊介(明石商業)とともにこの世代でもナンバーワンを争う投手だ。

 高橋は東海大会の不調から立ち直り、今大会は10イニングで16奪三振。四死球は「2」と制球の不安もない。2回戦の明徳義塾戦では7回まで無失点、10奪三振の好投を見せた。準決勝は2本の本塁打を浴びたが、恐怖の7番打者・河西を褒めるべきだろう。

 4番・印出太一は183センチと大型で統率力にも優れた捕手。3番・中山礼都も180センチも評価の高いショートだ。いわゆるプロ注の大型選手が揃うという意味でも、中京大中京は楽しみなチームだ。

 今大会に限るとクリーンアップは2試合で合計3安打にとどまっているのだが、それでも2試合で18得点と打線は好調。選手層もこのチームの凄みだろう。

 健大高崎と中京大中京の決勝戦は20日10時から、明治神宮野球場で行われる。

サヨナラ勝ちで決勝進出を決めた中京大中京

【サヨナラ勝ちで決勝進出を決めた中京大中京】

文=大島和人
写真=馬場遼