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高校野球

あの名将も絶賛。中京大中京・高橋宏斗が完封勝利で「世代ナンバーワン投手」に名乗り【11/17 第五十回記念明治神宮野球大会・高校の部2回戦 中京大中京vs明徳義塾】

 中京大中京(東海代表)が8対0の7回コールドで明徳義塾(四国代表)を下し、準決勝進出を決めた。先発の右腕・高橋宏斗は被安打4、四死球1、10奪三振と見事な内容で完封勝利。「世代ナンバーワン投手」に名乗りを挙げるピッチングを見せた。

 高橋を乗せたのは1回裏のピンチ脱出だ。明徳義塾は1番・奥野翔琉が初球にいきなり二塁打を放って出塁。2番打者がバントで送り、一死三塁のチャンスを作る。しかし高橋は3番・鈴木大照から148キロの速球で空振り三振を奪うと、続く4番打者も三塁ゴロに切って取った。

高橋はこう振り返る。
「(打線が)3点以上は取ってくれると信じていたので、1点はOKと思って思い切って投げられた。ツーベースを打たれて力が抜けて、自分の投球ができるようになった。2回からは自分のピッチングをできた」

 すると2回表に味方が高橋の期待に応えた。中京大中京は6番・南谷雅貴がレフトオーバーのタイムリー二塁打。9番・村上遼雅のスクイズも含めて2点を先制する。
さらに5回に1点、6回に2点、7回に3点と順調に加点。高橋は打でも7回表無死満塁からライトに犠牲フライを放ち、チームの8点目となる打点を上げている。
中京大中京は相手の守備の乱れから効率的に加点し、7回コールドの快勝を果たした。

完封勝利を挙げた高橋

 高橋はこの日の最高球速が148キロで、これは彼にとって過去最速タイ。球種は常時140キロ台の速球の他にカットボール、ツーシーム、チェンジアップ、スライダーを投げていた。
彼がこだわりを持つのは速球だ。高橋はこう強調する。
「自分の基準はストレート。ストレートが良くなれば変化球も曲がってくる。ストレートの調子が自分の中でもいいほうだったので、変化球でも空振りを取れた。相手が真っ直ぐを嫌がっていたり、振り遅れていたりしているのが自分の調子がいいとき。それを今日は感じられた」

 中京大中京は東海大会の準決勝、決勝を「打ち勝つ」展開でものにしている。それは高橋にとっては不本意な試合だった。
「自分のピッチングが全く出来ていなかった。東海大会はフォームのバランスがバラバラだったんですけど、1週間2週間かけてバランスを意識して、神宮に入ってきました。投げ終わりが1塁側に倒れるときはバランスが悪いとき。投げ終わったあともバッターに重心が向かっていっている、左足一本で立っている状態がいいとき。そこをスタンダードにするイメージでやっています」

 もう一つのフォーム修正点は顔の向きだった。
「三塁側を向くのを意識してやっています。前はずっとホームを向いてやっていたんですけれど、ホーム側に身体が倒れていっていた。三塁側を向くことで、右足一本でしっかり立ってから始動することを、秋の県大会から意識してやっています」

 自らの目標についてはこう述べる。
「マックス155が目安で、常時148〜50が自分の目標です。世代ナンバーワン投手を目標としてやっている。151キロを出した明石商業の中森(俊介)投手を意識しています」

 この日の投球を見れば分かるように、高橋にはその頂を目指す資格が十分にある。昨年の神宮大会で奥川恭伸(星稜高)が見せたインパクトに近い内容を、愛知の逸材も示していた。

■2回戦:中京大中京高vs明徳義塾高
中京大中京高 0200123=8
明徳義塾高  0000000=0
【中】◯高橋―印出
【明】●代木、畑中、新地―鈴木

◎中京大中京・高橋源一郎監督
「初回に1アウト3塁にされたとき、普段なら(守備位置を)下げるんですけれど“ここは前進だ”と。先に明徳さんに得点を与えたくなかった。高橋自身も一番打者に捉えられて、気持ちがこうなって(=落ちて)いたので、逆に1点もやるなというメッセージを彼に伝えたかった」

◎明徳義塾高・馬淵史郎監督
「ヒットの数よりエラーが多いのでは話にならない。ステップした足が人工芝で滑って投げられなかったとか、セカンドもボールがスライスしてきたとか、人工芝に慣れていないのはあるけれど、条件は同じ。ただ相手の打球も速いですよね。(高橋は)スピード以上に威力がありました。今大会ナンバーワンじゃないですかね。この1年間色んなピッチャーと試合をしましたけれど、夏を含めてナンバーワンです」

文=大島和人
写真=馬場遼