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プロ野球

阪神・秋山 苦難乗り越え強化された精神力 7年越しのキャリアハイへ

 7年前の自分と“決別”を告げる1勝だった。6日のオリックス戦に先発し8回2失点、120球の力投で勝利投手となった阪神の秋山。今年、積み重ねてきた白星は早くも5個目で、シーズン自己最多となった。

汗を飛ばして力投する阪神・秋山

 これまでの最高は、10年の4勝。高卒1年目で完封をマークするなど、華々しくプロの舞台に上がった1年は、これまで秋山の“象徴”となってきた。逆に言えば、1年目以降、伸び悩んだことで、7年前の輝きが、今でも、右腕のハイライトとして語られてきたのも、事実だった。

 「正直、今になって、1年目の時のことを聞かれたり、比べられたりするのは、嫌ですよ。今の自分は違う、という気持ちも、やっぱりあるので」

 プロ2年目から昨年までの6年間で手にできたのは、わずかに2勝。2軍ではタイトル争いの常連で、圧倒的に打者を抑え込んでも、1軍では勝負どころで痛打を浴び、別人のように精彩を欠いた。

 投球フォームも毎年のように変わり、ブルペンでは「やばい。ボールがどこ行くか分からん…」と首をかしげたこともあった。言葉では「試行錯誤」と簡単に片付けられるかもしれないが「昔の投げ方はもう忘れましたね…」と苦笑いで振り返るように、迷路にはまった時間は短くなかった。新人ではなくなり、年下の投手が自分を追い越して1軍昇格するようになり「もう、投げるところが無くなりますね」と危機感ばかりが募っていった。

 自分を変えるために、動いたのは14年オフ。人気漫画を題材にした「スラムダンク勝利学」の著者でスポーツドクターの辻秀一氏の指導で、メンタルトレーニングに着手した。

 定期的に登板試合の映像を見直して、1球ごとに、どういう精神状態でいたのかを振り返り、その都度、辻氏の助言を受ける。「マイナス思考になっている自分に気付くことだけでも変わってくると。周りは“考えすぎだ”と言うけど、考えることは、良いことだと」。ベストパフォーマンスを発揮するための心の整え方、自身を客観的に捉える視点が次第に身についた。

 右打者の内角を突くシュートの習得、体のひねりを生み出した投球フォームの体現と、技術的な進化も飛躍の要因であることは間違いないが、メンタルトレーニング、マウンドで味わった数々の苦難を経て、たくましくなった精神面も、秋山の投球を支えている。

 「(5勝しても)まだ低い数字なので。シーズン終わるまでローテーションを守ることを目標にしてるので。そこをしっかり達成できるようにしたい」

 勝負弱さを露呈し、1、2軍を往復した姿はもうない。7年越しの「キャリアハイ」へ、真価が問われるのは、ここからだ。(記者コラム・遠藤 礼)