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強心臓1年生・中川颯が好救援し立大4強「プレッシャーが背中を押してくれた」【全日本大学野球選手

★天理大との延長タイブレークを制す

「投手も打者も良いですし、足の速い選手も多くて。もう、どうしようかなと思いました」

立教大・溝口智成監督が天理大との激戦をそう振り返った。前日の富士大戦と同じく試合中盤までは主導権を奪われる苦しい展開だったが、終盤に追いつき、延長10回タイブレークで4対3と競り勝ち準決勝進出を決めた。

その立役者はアンダーハンド右腕の中川颯投手(1年・桐光学園)だ。先発の手塚周投手(2年・福島)が4回途中までに3失点を許す苦しい展開に、溝口監督は「中盤でしたがビシッと締めて欲しかった。“1点もやるな”と言って送り出しました」と、中川を投入。大きな期待をかけられた中川も「調子を落としていたので、だんだんと終盤に向けて上がっていけばと思っていました」と、平然と振り返るように、追加点を許さずに味方の反撃を待った。

すると立教大は8回、ここまで無失点に抑えられてきた左腕の中川一斗投手(4年・玉野光南)から山根佑太外野手(4年・浦和学院)がレフトスタンド中段に飛び込む本塁打で2点を返す。

さらに、1点を追う9回には、前日に16奪三振完投勝利を挙げた左腕の森浦大輔投手(1年・天理)から、寺山寛人外野手(3年・神戸国際大附)が内野安打で1死から出塁。すると、果敢にもノーサインで盗塁を敢行し間一髪セーフ。このチャンスに主将の熊谷敬宥内野手(4年・仙台育英)がセンター前にタイムリーを放ち、土壇場で立教大が追いついた。

同点タイムリーを放ち喜ぶ熊谷


そして、決着は1死満塁から始まる延長タイブレークに持ち込まれた。

10回表、天理大は中間守備を敷き、立教大の得点を併殺崩れのみの1点で防いだ。その裏の天理大は4番の田中秀政内野手(4年・明徳義塾)からの打順を選択。長打力のある打者を相手に「二塁走者が還ればサヨナラ負け」という苦しい状況ではあったが、ここで強心臓の中川が圧巻の投球を見せる。

4番の田中を高めの釣り球で空振り三振を取ると、最後は5番の山本柊作外野手(4年・天理)のインコースを突いて、セカンドフライに打ち取り、試合終了。この日の登板のなかったエースの田中誠也投手(2年・大阪桐蔭)を筆頭に飛び出したベンチの選手たちが、次々と田中のもとに駆け寄った。

試合後、中川は「プレッシャーに強いのが僕の持ち味。プレッシャーが背中を押してくれました」と1年生らしからぬ発言で笑顔を見せた。溝口監督も「タイブレークであんなに平然と投げられるのは中川しかいないでしょう」と称賛した。

準決勝以降の戦いについて溝口監督は「さらに厳しい戦いになるでしょう。目の前の1点をもぎ取り、1点を守るということを大切にしていきたいです」と気を引き締めた。

勝利が決まると、エースの田中が真っ先に中川を祝福に駆け寄った


★準々決勝・立教大vs天理大
立教大 0000000211=4
天理大 1002000000=3
【立】手塚、◯中川−藤野
【天】中川、●森浦−石原(貴)
本塁打:立教大・山根(8回2ラン)

◎天理大・藤原忠理監督

「選手はようやってくれました。4点目をなかなか奪えず、相手さんの試合運びが一枚も二枚も上手でした。全国制覇が悲願だったので悔しいです」

文・写真=高木遊