- 大学野球
2017.06.07 09:55
被災を乗り越えてつかんだ11年ぶりの切符。 敗戦も「踏ん張り」見せた東海大九州 【全日本大学野球選手権】
★ワンサイド一歩手前から1点差まで迫る
もう野球ができないかもしれない」という経験をしたことで「野球ができる喜び」を再確認した選手たち。まさに逆境を力に変えてたどり着いた舞台だった。
しかし、11年ぶり出場という事実は、選手たちに喜びとともに緊張も与えてしまった。
初回、先発の牛丸将希投手(4年・玉名)の制球が乱れ、3四死球で一死満塁のピンチを招く。
「ボール自体はよかったけど、11年ぶりの出場、やはり経験不足でした」(南部監督)
迎えた天理大の5番・山本柊作外野手(4年・天理)が振り抜いた打球はスタンドに達する。
満塁本塁打、いきなりの4点ビハインド。その裏、東海大九州は1点を返すが、牛丸は2回にも1点を失い、立ち直れないまま3回途中でマウンドを降りた。ワンサイドになりかねない展開。しかし、ここからが「踏ん張れるようになった」選手たちの本領発揮だった。
牛丸の後を継いだ右下手投げの国廣涼太投手(4年・北筑)、左腕・亀川裕生投手(4年・東福岡)、右腕・小川一平投手(2年・横須賀工)とタイプの違う投手たちが、必死に天理大の攻撃を食い止める。特に小川の140キロ台の力ある真っすぐは「こんないい投手がいたのか」と驚かせるピッチング。伴善弘捕手(3年・横浜隼人)は「ボールを受けていても投手陣全員が辛抱強くなったと感じます。リーグ戦でも逆転勝ちは何度もあったし、諦めるムードも全くなかった。リードも強気で行きました」と語った。
そして2対6で迎えた7回裏、東海大九州は1番・田浦靖之外野手(3年・島原農)の2点タイムリーなどで1点差まで迫る。「野球ができる喜びが強い。こんないい舞台に立てて……」と南部監督が試合後に語った気持ちを選手たちが爆発させたような反撃であった。
だが、チーム全体が強く伸びやかなスイングをする天理大打線も負けてはいない。直後の8回表、4番・田中秀政内野手(3年・明徳義塾)の二塁打などで2点を加え、8—5で東海大九州を振り切った。
試合後、東海大九州の選手たちは「悔しい」と口を揃えつつも、力を出し切ったことに満足する表情も垣間見えた。野球どころではなかった日々を考えれば、それもまた正直な気持ちなのだろう。
ただ、初戦敗退という事実は事実。全国の舞台で初めて見えた課題もあったはずだ。この負けを糧に、東海大九州がどのような野球を見せてくれるのか。逆境を力に変えた選手たちの「次」を楽しみに待ちたい。
★1回戦・天理大vs東海大九州
天理大 410010020=8
東海大九州 100001300=5
【天】○中川、桜木—石原
【東】●牛丸、国廣、亀川、小川—伴
本塁打:天理大・山本(1回満塁)
文=田澤健一郎
写真=伊藤華子